ツイてない男の話
視点:雇われた男
ちょっと短いかもです
俺はしがない冒険者。中堅どころではあるが、どうもツイてないせいか、ロクな仕事に当たらずにロクに結果も残せない。
そうなるとどんどん仕事を選べなくなり、一度そうなると、後は転げ落ちるだけだ。引退するにしてもそこまで溜め込んでいないし、気楽な老後を送るためには、老け込んでもいられない。
そんな中、今回はまぁいい仕事だと思ったが、そう思ったのは王都を出るまでだった。騎士団のサポートなんて美味しい仕事と思ったが、あの悪名高き第三騎士団と知ってりゃあ受けなかったさ。……いや、無理か。
この仕事が無ければ借金でどうにかなってたっけな。確かに前金からなかなか美味しかったからな。
曰く付きの第三騎士団のボンボンたちが、よりにもよって正式な任務を受けた第八騎士団と騎士見習いどもに横やりを入れてきたのは全くの計算外だった。程々無能なんだからおとなしくしてろよ。元々はそいつらだけの調査任務なのだが、自分たちの方ができるアピールなのかは不明だがな。で、俺を含めた冒険者三名が第三騎士団の補助として雇われたわけだが、こいつら最初から第八騎士団に喧嘩を売るつもりで、俺たちもその片棒を担がされたわけだ。やっぱり訳ありの報酬だったか。
なんだかんだで一緒に同行していた騎士見習いどもに喧嘩を押し売りして、現在に至る、というわけだ。
テオとか言ったっけな、向こうのリーダーは。腕もいいし、真面目だ。しかもカリスマ性もある。足りないのは経験、ってとこか。でも模擬戦の準備のための十日間くらいで、何をどうしてきたかサッパリだが、ビックリするほど強くなって戻ってきた。
舐めてかかってたボンボンどもは酒が入っても勝てると思ってたらしいが、最初のアレですっかり萎縮しちまってる。それでもまだ腐っても騎士なのかね。戦おうと思えるのと、まだ勝てると思えるのはまぁ、すげぇよ。
一応、自分たちだけで勝負を決めたかったらしいので、俺たちは最初は手を出さない予定だったが…… こりゃさすがに出ないとダメか。半分くらいがすでに倒されて場外に出されている。魔法使いの奴らも、あの大楯持ちに完全に防がれてぶっ飛ばされた。
空飛ぶ板に乗った娘が戦場を高速で飛び回り、元々統率の取れてない奴らを分断し、浮いた一人を数人で囲む、と理にかなった戦い方をしている。ただそれは、個人の能力に差があるときだが、おそらく実力はほぼ伯仲。それこそリーダーのテオを含めた何人かはすでにボンボンたちよりも上だ。あの女の子三人はおそらくそれよりも更に上、ってところだ。
俺の経験上、中途半端に肩書がある奴らは何だかんだで払い渋る。第三騎士団もその典型だ。俺の懐の為にもひと働きして恩を売っておいた方がいいか。
「行くか。」
一緒に連れてきた奴らは、まぁ知った仲だ。腕もそんなに悪くない。少なくともボンボンどもよりは戦える。
戦場を見た感じ、助っ人の女の子三人が士気の源のようだ。二人が乗ってる空飛ぶ板の性能もあるし、腕自体もなかなかのものだ。
ちょっと心苦しい――まぁ、いたとしたら自分の娘くらいの年齢だしな――が、ちょっと退場してもらうか。
剣を抜いて駆けだそうとしたところで、初めて違和感に気づく。
……なんだ? 妙に身体が重いし、関節が軋むような気がする。手に力が入らないし、息が上がる。視界もなんか怪しい。
熱病にかかるとこんな感じだが、ここ十日ほど町にいたし、そんなものに引っかかるようなことはしていない。毒とかそういう感じでもないが、そもそも毒の使用は禁止だし、第三騎士団とは違って向こうが使うとは考えられない。
何か変なことが起きたら魔法を疑うのだが、向こうの魔法使いに何かされた記憶は…… いや待て、本当にそうか? 俺は何もされてないのか? じゃあ、この身体のダルさは……?
少しボーっとしていたらしい。確かに熱があるのかもしれないな。だから余計な隙ができてしまう。
「ミスネー!」
あの浮遊するボードに乗った少女が大上段に構えた棒を思い切り振り下ろすのが見えた。速度と高さから繰り出される棒は鋭い。
考え事の代償は大きく、避けるにはもう遅いが、素直な軌道なのでまだ十分受け止められる。
「がっ!」
棒を受け止めた剣に思った以上の衝撃に膝が崩れそうになるが、まだ振り払える。謎の体調不良があってもそこまでは何とかできるはず。
ただ長年の勘が更なる危険を感じていた。
目の前の少女のさっきの掛け声は何だ? ……誰かを呼んだのか?
「そう、」
背後から聞こえた声に自分の負けを悟った。気配を消して近づいた者が声を出す理由、そんなもん一つしかない。
「妹の期待に応える、」
勝ちが決まってるからだろうが。
「それが姉の使命。」
淡々とした声が聞こえて、兜をつけていない後頭部にコツンと何かが当たった。大した衝撃ではない、と思ったが、直後に全身に感じたことない衝撃が走ると、手足から力が抜けて、そのまま俺は意識を手放してしまった。
気を失う直前に、背後に立っていた褐色の肌の少女が無表情ながら誇らしげな顔をしていたのに気づいた。
ちくしょう、良い表情しやがって。
……ああ、ツイてねぇ。
お読みいただきありがとうございました




