模擬戦を観戦しよう(1)
……ん~ 色々書きこみたいこともあるが、サラッと流した方が良いのかも知れないが、むせる(なぜに)
後で聞いた話も混じっているので、なんでそんなに分かるのよ、ってツッコミは無しの方向で。
テオ達の部隊は大きく分けて五つ。
大楯のバズとリーダーのテオがいる主力小隊。後ろに控えるモス達魔法使いとその護衛小隊。
そしてリーナちゃんとその護衛の通称「姫様小隊」に、リリーとその護衛の通称「お嬢小隊」。そしてミスキスとその護衛の通称「姐さん小隊」だ。
名称自体はともかく、ネーミングセンスは悪くないような気がする。
「お嬢小隊」は獣人や脚力強化の魔法が使える、速度重視の小隊だ。隊でも中堅どころが最年少のリリーをお嬢と呼んで慕っている。
「姐さん小隊」は感知や妨害、隠身に長けた若手の連中が集まっている。見たことは無いんだけど、トリッキーな戦い方をするミスキスをサポートだそうだ。
最後に「姫様小隊」はリーナちゃんが戦闘に集中できるようにする露払いだ。どっちかというと年長のベテラン勢が揃っている。
さて、号令がかかって、双方が動き出す。
前に出ているのが主力小隊と「姫様小隊」だ。第三騎士団はそれなりに隊列を組んでいるようにも見えるが、なんかバラバラに動いているように見える。
まぁ、見事に術中にハマったというか、リーナちゃんの方に敵の動きが誘導される。舐めてかかってるのか、どさくさ紛れに邪なことを考えているのか。
そして、やる気にもムラがあるのか、進行速度もバラバラだ。
「参ります!」
早速リーナちゃんが動き出した。前に飛び出した一人に肉薄すると、相手が剣を振り上げる前にその鎧に手を触れる。
「申し訳ありません!」
どういう原理か、鎧を着ている人間がふわりと浮いて背中から地面に叩きつけられる。
「姫様小隊」の半分が倒れた敵を棒で叩きのめして、残り半分がまた走り出したリーナちゃんの後を追い、足が止まったリーナちゃんを狙う奴らを近づけさせないように棒を振るい…… そのまま吹き飛ばす。
「あれ?」
見学席で腕を組みつつも串焼きは持ったままのカイルが気の抜けた声を出した。
「とりゃーっ!!」
進行速度の違いをついて、空いた隙間にリリーのホバーボードが駆け抜ける。当たれば幸いとばかりに長い棒を振り回すと、面白いように鎧姿の敵が吹っ飛んでいく。
あれ? とリリーが首を傾げながらも、敵の部隊を分断するように飛び回る。追いかけようとする者もいるが、速度が違いすぎる。場外に出てしまわないように抑えているとはいえ、人の足で、ましてや金属鎧をつけていては敵わない。
更に、
「お嬢を守れ!」
「「「イエッサー!」」」
いわゆる「お嬢小隊」が彼女に気を取られた敵を叩きのめしていく。
あ、なんか向こうの奥の方で偉そうな人が魔法使いっぽい人に何か揉めているように見える。魔法使いっぽい人が慌てて首を振ってるようだが。
「ホバーボードが魔法の品かどうか疑っているようですな。」
まぁ、科学の力で浮いているので、分かるはずも無いだろうけど。
「ま、魔法部隊!」
向こうの偉そうなのが慌てて号令を出した。
その偉そうなのと一緒に、一番奥にいた金属鎧じゃなくて革鎧を着た六人が短い棒――杖か?――を構えてブツブツ何か唱え始める。
「散開! 魔法に注意!」
テオの号令で一気に広がって、的にならないように動き回る。
「バズ、行くぞ!」
「おおっ!」
それまでほとんど動いてなかったバズがその大楯を自分の正面に構える。
「おおぉぉぉぉぉっ!!」
急に戦場に沸き上がった雄たけびに第三騎士団の視線が集中する。
その目に映るのは、後ろの人間が見えないほどの巨大な盾が爆走してくる姿だ。
「おおぉぉぉぉぉっ!!」
「あいつを止めろぉ!」
相手のトップみたいなのが悲鳴じみた指示を叫ぶと、だいぶ数を減らした中からバズの大楯に向かう幾名かが。
正面から突っ込んだのは、そのまま大楯に弾き飛ばされた。盾を迂回して回り込もうとしたのは、後ろを一緒に走っていたテオ達の棒の餌食になった。
「と、止めろぉ!」
魔法使いたちの手から様々な魔法が放たれる。火の玉に光る矢、氷の塊に石つぶてがバズに襲い掛かる。
「うらぁっ!!」
更に吼えたバズが大楯を地面に突き刺すと、その姿が魔法の爆煙で見えなくなる。次の瞬間、大楯の裏側に隠れていたテオ達が飛び出して一気に間合いを詰めて、第三騎士団の魔法使いたちを場外へと吹っ飛ばした。
煙が収まると、そこには傷を負った様子もないバズが大楯をゆっくり地面から引っこ抜いているところだった。
いつの間にかに第三騎士団の人数は半分くらいになっていた。更に魔法使い達がいなくなって、戦力も士気も相当低下しただろう。
というか、最初の想定では一対一では勝てないだろうと思っていたのだが、ちっともそんなことが無かった。この時点でこちら側の損害はほとんどない。美少女でうまいこと相手を分散し、二対一以上で戦うようにしていたことで、一方的な展開になっていた。
撃墜数自体は少なかったが、高速機動するリリーを捉えられる者はなく、気配どころか姿すら消したミスキスから逃れられる者もいなかった。ついでに鼻の下を伸ばしてリーナちゃんに近づいて、触れられた者もいなかった。
「そろそろ動きますかね。」
さすがに向こうだって危機感を抱いて、一度集結して隊列を組みなおしている。更にずっと後ろで見ていた助っ人と思われる、冒険者風の男たちも動き出した。
「が、実に残念だ。」
ジェルが芝居がかった感じで首を振る。
「もう手遅れですよ。」
お読みいただきありがとうございます。




