ジェルの手伝いをしよう
準備編はあと2~3回程度で。
そろそろ派手なアクション欲しいですな。
「そんなわけでだな、最後の一週間は森で鍛錬をしようと思う。」
数日経った朝食の席で、カイルがいきなりそんなことを言い出した。
「無論、テオ達だけで、リーナちゃんたちはそのままでいい。言い方はアレだが、『男』を鍛えてくる。黙って行かせてくれ。」
よく分からん。
「まぁ、体力をつけるのと、自信と言うか根性をつけるようなもんかな? ま、心配しないで欲しいな。」
ヒューイが食後のハーブティを飲みながら、爽やかな笑顔で言葉を続ける。
「領主様に許可はもらってるし、町からそんなに離れない。何かあったら通信入れるから問題は無いと思う。」
「ふぅん、分かりました。
気が向いたら適当に差し入れに行きましょう。こちらは装備を用意しておけばよろしいですか?」
「ああ、」
カイルがニヤリと男臭い笑みを浮かべる。
「素敵な一張羅を頼むぜ。」
そんなわけで、って何がそんなわけかは知らないが、ヒューイとカイルがテオ達の部隊を連れて、町の東側に広がる森へと入っていった。地元民に聞くと、それなりに野獣が狩れるそうで、町の肉の供給を担っているようだ。ただ、慣れた狩人でも奥には行かないらしい。野獣だけならいいが、時折魔獣も出てくるらしい。
魔獣と野獣の違いは何か。
大なり小なりの魔法――単純な肉体強化から、火や氷を放つものもいるらしい――を使うことだそうだ。そういう魔獣は体内に魔石と言う魔素の塊を溜め込むことがあるらしい。
ちなみにあたし達がこの町に来た当日に、カイルがワンパンで黙らせて首を捻り殺したロックバッファローは魔獣で、身体強化の魔法を使っているそうだ。
で、幸か不幸か、魔力を帯びている魔獣は魔素が全身を駆け巡って、肉が実に美味しくなるらしい。強ければ強いほど肉の味は良くなるそうで、危険も承知で冒険者が挑み続けているそうだ。
……まぁ、確かに美味しかった。
で、おそらくはその「奥」でしばらく山籠もり……じゃなくて森籠りをするのだろう。まぁ、ヒューイとカイルがいるなら魔獣が現れても相手だってできるだろうし、そもそもあの二人のサバイバルと護衛の能力は超一流だ。
更にジェルの便利道具もあるし、最悪の場合はワイルドパンサーだって投入できる。と、安全マージンはしっかりとっているが、一般人にはハードルが高かろう。戦う前に心が折れなければいいが。
「まぁ、その辺も意外と得意ですからね。」
とジェル。
まぁ、そう言うなら大丈夫なんだろう。
あたしがアイラから色々話を聞いてる間にジェルはカタカタと、まぁ音はしないがバーチャルキーボードを叩いて、それに合わせて汎用箱型作業機械があちこち動き回って色んな材料を店の中に積み上げている。
「ちゃんと食事の時は片付けてくださいね。」
「分かっております。」
振り向きもせず返事をするジェルに、アイラはやや呆れたような、それでいてどこか理解したような余裕のある表情を浮かべる。
……あ、何だろ。ちょっとモヤッとした。
きっとこれはアレなんだろうな。うん、それはそれでなんか悔しいぞ。
「面白い顔は良いので、ちょっと手を貸してください。
具体的には色塗りが終わった棒を、壁に順番に立てかけてください。キューブだと上背が無いので安定しないのですよ。」
「へいへーい。」
「へい、は一回!」
「んなわけあるか!」
あちこちに整列したキューブたちが木材から棒を削り出して、隣のキューブの列がその棒を黒く塗ってまた隣へ。次のキューブたちは色が塗られた棒を回転させながら乾燥させていく。
そして、乾燥させた棒があたしに向けられた。
おっと。
木の棒のはずだが、思った以上の重さがある。ジェル特製の樹脂を染み込ませた物だ。重さは鉄ほどではなく、強度は鉄以上ときている。今は王都に行ってる狐の獣人のカエデの乗ってる馬車にも使われている。
今回、テオ達が使う武器だ。刃引きした武器って規定があるので、最初から刃無くていいじゃん、って棒にしたわけだ。
元々武器の習熟度が低かったので、最初から棒術と杖術を中心に教えていったそうだ。まぁ、あたし達の世界だと同じ武器でも剣や槍はほとんど廃れてるので、逆に教えやすかったそうだ。銃がある以上、近接武器を使う機会なんてそんなにないんだろうけどね。
『とはいうけどな、棒は怖いぞ。』
というのがヒューイの弁だ。なんでも刃筋が無いってことは、どんな変化をしてくるか読めないってことらしい。
……まぁ、あたしは相手しないからいいけどさ。
キューブたちに手(?)渡されて次々に壁に立てかけていくが、妙なことに気づいた。何故か長さがバラバラだ。
「ああ、それは使う人に合わせて長さを調整しております。」
聞いてもないけどジェルが答えてくれた。
訓練中の動きを精査して、適切な長さや太さに設定しているそうだ。
へぇ、と思って、ふとジェルを振り返ると、なんかキューブが何体も集まって巨大な板を作っていた。
「……ドア?」
「違います、」
ドアにしては長方形じゃなく、下の辺が三角形になっていて、全体的には五角形になるかな? 大きさは二メートル近くある。縦横に何重にも板を貼り合わせてあり、さらにふちには金属を使って強度を増しているようである。あ~ いや待て、これは……
「盾?」
「その通りです。」
間違いなくあたしよりもデカい盾。どうやって、というか誰が使うんだ?
「秘密兵器、と言えば秘密兵器ですな。」
そう言うとジェルはニヤリと笑みを浮かべた。
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