中座しよう
え~と、微妙に変則的なタイミングですが、更新しました。
次は18日0時の予定
一応、覆面作家企画8(https://hkmn8.tumblr.com/)の原稿が上がって投稿が終わりました。
そろそろ他の物にも手を付けられるくらいなってないかなぁ、自分
「お前たち調子良さそうだから、もっとハードに行くぞ。どうだ嬉しいか!」
「「「サー、イエッサー!」」」
相変わらず士気が高い。逆に不安になるところだ。何となく「洗脳」とか「宗教」って物騒な単語が脳裏をよぎる。
「…………」
思わず隣のジェルの顔をちらりと見上げる。
「また妄想の中で私をディスっているような顔をしていますな。」
失礼な、と嘆息された。
「ちなみに何やってるの?」
色んなディスプレイを空中に開きながら、キーボードをカタカタ叩いている。
「色々、ですな。することはたくさんあります。双方の戦力分析に効率的なフォーメーション。魔法に関する調査。あとは……」
同時に色んな事を考えてる顔をしたジェルが、ふと我に返ったかのように目を瞬かせる。
「今更ですが、こんな外でなくてもデータ解析は出来ましたな。」
広げていたディスプレイを手で払うように消して、キーボードを折りたたむと白衣のポケットに突っ込む。
確かに冒険者ギルドの修練場の見学席で暑苦しい男たちの汗を見ている必要もないような気がしてきた。
「リーナも一度戻りますよ。夕飯のことも考えた方がよさそうですし。テオさんもちょっとお話がありますので。」
「あ、はい。」
チラリと訓練中の人たち――おそらくヒューイの方かも?――にチラリと目を向けてから、手早く荷物をまとめると、リーナちゃんがこちらにやってくる。その後を、まるでボディガードのように一歩下がってついてくる。
「じゃあ、行きますか。」
こちらを確認せずにスタスタと修練場を出ていくジェル。
いつものことだから、って分かってるんだけど、こーゆー時に一声あった方が女の子の好感度は良くなる……って、それこそジェルには関係ないか。
「雄牛の角亭」への帰路。
ジェルが先頭を歩き、あたしとリーナちゃんがその後ろ、最後尾をテオが務める。
いつものようにジェルは白衣のポケットに手を突っ込んで、どこかひょうひょうと歩いている。これでも何か事が起きれば、消えるような動きを見せるわけだが、そんなことは年に一回あれば多い方だと思う。
そんなことより、冒険者ギルドから「雄牛の角亭」はそれなりに距離があるが、散歩と思えばそんなに悪くもない。特にジェルは運動をロクにしないので、少しでも歩かせた方がいい。
「ん?」
ジェルが小さく呟くのが聞こえた。何かあった時の声だ。リーナちゃんが身構える。あたしも周囲に目を飛ばして――ってことをせんでも、ジェルの視線の先を追うと、そこには小さな人だかりができていた。
「おいこら、服に泥がついただろ、どうしてくれるんだよ!」
「そっちがよそ見してたんでしょ! そんな昼間から酔っぱらってフラフラしてたら危ないでしょ!」
二人の男と見覚えのある女の子――リリーが睨み合っている。彼女の後ろには一人の少年が尻もちをついている。
聞こえてきた会話から察すると、って程でもないが、日の高いうちから酔っぱらってたバカが、子供を蹴飛ばしたくせに酔っぱらった勢いでイチャモンつけてた、ってとこだろ。そこにリリーが割り込んで入ったようだが、女子供と侮られている、ってとこか。
ここはジェルの出番ですかね? 先生、お願いいたします!
「何をされてるんですか!」
テオが真っ先に駆けて騒ぎの中に割り込んでいく。
「騎士たるもの、子どもに乱暴するとは何たる了見ですか!」
「うるせぇなぁ。平民は黙ってろ、ってんだ。」
……あ? なんだこいつ。
「お前が何言ったところで、お前は騎士じゃないし、俺たちが騎士だ。それがすべてだ。いいんだぜ、今勝負したってよ。」
ガハハ、と酔っぱらいのおっさんみたいな声で笑った男は、確かに言われてみれば鎧姿ではないが上品な服を着ている。うん、似合ってるかどうか抜きにして。ついでに腰には剣を下げている。どこぞの王子が持っていたのよりは簡素だったけど、それなりに装飾がついている。
「いえ、それは……」
今まさに剣を手をかけている騎士らしい二人に対し、やや青ざめた顔で首を振るテオ。……おいおい、マジで抜く気か?
テオがどうこう、の前にこのままいけば、本気でジェルにどうにかしてもらうしかない。
ただ、この流れでジェルが介入するのちょっとこの流れだとマズいような気がする。多分こいつらが噂の第三騎士団なのだろう。単なるならず者ならジェルがてきとーに蹴散らして、ガイザックさんにでも差し出せば済みそうだが、相手は残念なことに「騎士」である。貴族ほどではないが、面倒この上ない。ジェルもそのことが分かっているのか、少し構えを緩めている。ただ相手が剣を抜いたら動くしかないわけだが……
「何をしている!」
凛とした力強い声が響いた。
長身で金属鎧を身にまとった女性――ソフィアさんが怒りのオーラをたたえながら立っていた。これでどうにかなりそうだ。
ソフィアさんの姿を見た第三騎士団の二人は、あからさまな舌打ちをして、ブツブツ言いながら立ち去って行った。
「助かりました。将来的なことを考えると、一番マシな解決法でした。」
「そうか、それなら良かった。」
軽く会釈すると、こちらに背中を向けて去っていきそうだったので、思わず呼び止める。
「私に何か?」
どこか冷たい感じで振り返るソフィアさん。
え~と……
「ハンスさんにもお話を聞きたいので、使って申し訳ございませんが、一緒に来ていただけないかと。」
迷っている内にジェルが助け舟を出してくれた。
「分かった。呼んでくる。」
背中を向けて再び歩き出すが、その背中にジェルが声をかける。
「時間が時間なので、お茶と美味しいお菓子を用意しておきます。」
ピクッ。
「期待しておく。」
一瞬足が止まって、帰ってきた声がちょっと高くなってる気がする。
「おやまぁ、期待されてますな。リーナ、責任重大ですよ。」
「は、はい!」
頭の中でメニューを検索していたリーナちゃんが決意に拳を握りしめる。
ところで、ご飯食べている時から気になっていたんだけど、ソフィアさんて背が高くてクールで真面目そうなイメージなんだけど、中身は意外と可愛いかも?
リーナちゃんのお菓子が、彼女から笑顔を引き出してくれることを期待しよう。
お読みいただきありがとうございます。




