悪い薬を使ってみよう
某所の覆面作家企画を書こうと思うので、もしかしたら更新が飛ぶかもしれません。
今週くらいでどうにか書き上げたいなー
「おい、ジェラード。お前の怪しい薬使えばどこまで鍛えられるんだ?」
「人聞きの悪い。」
きわめて正当な評価だと思うが。
「……実験台にしますよ。」
何の?!
「それは後の楽しみにして、」
「なぁ、お前さん方はいつもそんな物騒な会話してるのか?」
ハンスさんがジェルの言葉を途中で遮る。
「時と場合によりけりですが。」
今がその時かい。
「とりあえず、私に対する悪評をどうにか解消しましょう。
適切な栄養を取り、適切な運動をすれば、その効果を数倍に高める薬があります。調整は必要ですがね。」
あ~ 聞いたことがある。通常の数倍のカロリーと睡眠を必要とするが、いわゆる超回復を促進させる薬品だ。
「ほぉ?」
ハンスさんが興味深げな声を出す。ソフィアさんも顔をこっちに向けた。
「食休みの前に水分をとるように、って各人に渡した飲み物の中にすでに仕込んであります。強制的に半時間ほど熟睡しますが、目が覚めれば少しは効果があることでしょう。」
「となると、午後からは俺か?」
「そうですな。」
ヒューイが言うと、ジェルが簡潔に答える。
「午後からはストレッチを中心に、筋肉にあまり負荷を与えないトレーニングですね。
カイルは様子を見ててください。」
「おうよ。」
「あと解決すべきは……」
ジェルがどこか切なそうな表情を浮かべる。
「なんか食べる物、ある?」
配膳していたリーナちゃんとあたし、それに昼食の手配をしていたジェルはすっかり食べ損ねてしまった。最初の予想では残っているはずだったのだが、どこぞの騎士二人にとどめを刺されてしまったのだ。
「すみません……」
心底申し訳なさそうなリーナちゃんに、ジェルは小さくため息をついた。
あの後「雄牛の角亭」に通信を入れて、アイラに頼んで、ミスキスに冒険者ギルドまで出前に来てもらった。
「お待たせ……」
いつ来たか分からないが、声がしたなと思ったら、バスケットを残して姿を消していた。……微妙に心臓に悪い。
ミスキスが置いていったのはサンドイッチだった。もしかしたら彼女たちの昼食を取ってしまった形になったのかもしれない。
「お、パン旨そうだな。」
まだ喰うんか。
恐るべき食欲魔人がそんなことを言ってくるのは想定済みだったのか、三人では食べきれ無いほどの量が入っていた。
あたし達は遅い昼食を、カイルは昼食後の軽い食事を済ませた後に簡単に打ち合わせた後、全員でゾロゾロと修練場に向かった。
修練場に入ったところで、妙に皆がざわめいている。何か…… あったな。
「どうしたお前ら。」
「整列!」
「「「はっ!」」」
カイルが入ってきたところで、テオの号令が飛び、少しギクシャクしながらも四十人が五×八で並ぶ。
「テオ以下四十名、整列しました!」
「…………」
だからこっちを無駄に振り向くな。威厳がなくなるだろ。まぁ、ただ「誰が教えたんだ」っていう思念は理解できた。
そういやぁ、さっき飲み物を配りに行ったときに色々見せてたっけ、ジェルが。
「……あ~ とりあえず何があった。」
「サー、お恥ずかしながら先ほど皆で寝てしまったのですが、目が覚めたら何故か身体が軽くなっておりましたです、サー!」
え? と珍しくジェルが驚いたような顔をするが、すぐにいつもの微表情に戻る。
「そうか…… とりあえずこれからは身体をゆっくり動かすトレーニングだ。担当はこのヒューイだが、俺もちゃんと見てるので、気を抜くなよ。」
「「「サー、イエッサー!」」」
カイルが下がって、ヒューイが前に出てきて、全員をゆっくり見渡す。
「俺はヒューイだ。体力というよりは、技術の方を中心に教える。
我慢しなくていいから、今身体が痛いものは言えよ。」
「「「サー、ノーサー!」」」
だから、ヒューイまでこっちを不安そうに振り返るな。威厳ってもんがあるでしょ。ヒューイが目配せをすると、ジェルが小さく頷く。
「あ~ 予定変更だ。全員一度休憩して、整列したときの右側から一人ずつ出てきてくれ。」
「「「サー、イエッサー!」」」
「…………」
ジェルがテオ達を問診しながら全身を謎の装置で確認している。
「特に下半身で痛かったり熱を持ったところはありますか?」
「サー、ノーサー!」
「ふ~む。ちなみに、だ。君たちは魔法とか使えるのかね?」
「サー、質問に答えるであります、サー!
自分たちは多かれ少なかれ魔法を使うことができます。ただほとんどは内系の肉体強化や感覚強化で、治療と攻撃の魔法を使える者が二名ずつおりますです、サー!」
「……魔素に魔力か。」
一通り全員を診終わると、頭の後ろで手を組んで、座っていた椅子に体重をかけるように仰け反りながら唸る。
修練場ではまたマラソンが行われている。心なしか午前中より速く、長時間走れるようになっている気がする。
カイルは相変わらず後ろから追いかけて、ダウン寸前の人を休ませようとしているが、なかなか出てこない。そのため、暇を持て余したヒューイが一緒に走り始めた。
「俺の走り方を真似してみろ。今よりは効率的に走れるぞ。」
「「「サー、イエッサー!」」」
頑張ってるなー。
「うん、やっぱりおかしい。」
「何が?」
独り言のように呟いたジェルに合いの手を入れておく。
「薬の効能がおかしい。あんなに効果が出るはずがない。
しかし『そんなはずがない』では理論は止まるだけです。とりあえず今起きた結果を受け入れるしかないのですが……」
う~む、と頭をフル回転させているような顔をする。
「もしも私の想定通りならば、」
ニヤリとジェルが悪い顔をする。
「勝機が一気に増えましたな。勝ちに行きましょう。それもワンサイドゲームで。」
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