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異世界行ってもチーム・グリフォン!  作者: 財油 雷矢
MISSION:騎士団を鍛えよう

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走らせてみよう

4月です。嘘をつかなければなりません。


……え~と、私は自称16歳可憐な女子高生☆です(真顔)

 翌朝。


「俺はお前たちに何一つ期待していない。デカかろうがチビだろうが、人間だろうがそうじゃなかろうが、同じ程度に価値がない!」


 シーン。


 冒険者ギルドの修練場を借りて、四十人くらいを前にカイルが声を張り上げるが、全く反応が無い。敵意も感じられないし、動揺も感じられない。ただどこかキラキラと輝く目でカイルの一挙一動を追っている。

 あれ? と言いたげな顔をしながらも、カイルが言葉を続ける。


「俺が許可するまでお前たちが言っていいのはイエスかノーだけだ。そして口からクソをたれる前と後に必ず『サー』をつけろ。いいな!」

「「「サー、イエッサー!!」」」


 何十人の声が一斉に響いて、地面が揺れたような気がする。

 いやだから「あれ?」って顔でこっち向くな。教官だろ?


 何をしてるかと言えば、テオ率いる新鋭騎士団の訓練である。新鋭とはいうが、色んな所から募集された若者を暫定的とはいえ騎士職につけ、遊撃的に身軽に動ける騎士団を作りたいというテストケースだ。

 色々あって、貴族のボンボンどもが隔離された第三騎士団(無論役立たず)に喧嘩けんかを売られて、しばらくは大人の態度で対応していたが、その罵詈雑言ばりぞうごんに耐え切れなく、買う羽目になってしまった、と。

 で、問題なのはその第三騎士団が、少なくとも実力も何もなく偉ぶっているわけじゃないということだ。

 残念ながらテオ達の部隊は基礎訓練を受けているとはいえ、そこまで練度が高いわけじゃない。そこを見越して喧嘩を売られたんだろうけど、それならば、と巡り巡ってあたし達に降りかかってきたわけだ。


「え~と…… ちょっと質問いいか?」

「サー! イエッサー!」


 手近にいた、というか、顔を知っていたテオに顔を向ける。


「なんかこう、俺の想定と違うんだが。ほら、なんかその、なくね?」

「サー! 皆様のことは色々聞き及んでおります。特にカイル殿の勇名は英雄に相応しいものと聞いておりますですサー!」

「色々……」


 何かしたっけな? と言わんばかりの顔でまたこちらをカイルが振り返る。そんなにキョロキョロすると威厳無くなるぞ。


「まぁ、なんだ。俺はちょっとばかり憧れていた『役』があったんだが、上手い事行かなかったんで、余裕があるときに付き合ってくれ。が、」


 どこか凄みの笑みを浮かべる。


「余裕持つ暇なんかねぇけどな。」



「走れ走れ~!」

「にっげろ~!」


 冒険者ギルドの修練場で果てないマラソンが行われていた。修練所は柵で囲まれていて、大きな楕円形をしている。その柵に沿って延々と走っている。

 先頭はリリーで最後尾はカイルだ。その間にはたくさんの騎士見習いたちが死にそうな顔をしながら必死に足を動かしている。

 全員がそれなりに武装している。さすがに正規の騎士のような金属鎧は予算の関係で身に着けていないので、代わりに重さが同じになるくらいに石を袋に入れて腰に下げている。

 疲れてきているのか、石袋が大きく揺れて、それが身体を揺らし、さらに疲労を蓄積させるようだ。


「いいとこ見てますな。」


 カメラ付きドローンを何体も飛ばし、身体能力を計測しているジェルが、あたしの呟きを聞きつけて、こちらを振り返る。


「そこまで見てるなら、カイルとリリーさんも見てみましょう。」


 どれ……? ああ、なるほど。


 走り方は全く違うが、リリーもカイルも腰に下げてる石袋が全然揺れていない。あれが疲れずに走り続けられるコツか?

 それにしてもリリーはピョンピョン飛び跳ねて走っているように見えるが、よくよく見てると、身体の軸が全然ブレていないように思える。


「おいおい、足が止まってるぞぉ!」


 カイルに追いつかれると、手に持った太い棒で背中をつつかれる。そうすると、多少は速度が上がるが、すぐにゆっくりになりフラフラと倒れそうになる。


「よっし、休憩!」


 そうなるとカイルがその人の襟首を掴み、修練場の中央へと投げ飛ばす。真ん中付近には超低反発性のマットが敷いてあり、弾みもせずに着地する。


「リーナちゃん、いつもの。」

「はい。」


 中央にはヒューイとリーナちゃんが待機していて、ジェルが調合したスポーツドリンクを飲ませて体力を回復させるスペースとなっている。カイルも体調を見ながらこの休憩スペースに放り込んでいるので、ドリンクを与えられて五分も休めばまたマラソンの再開だ。


 ……なんか変な物が入っているんじゃないだろうか。


「失礼な。常習性があったり副作用があるものは入ってませんよ。」


 少しはズルしましたがね、と不安になることを言うジェル。まぁただ本気での「ズル」はせんだろう。そもそもそういうのは嫌いなはずだし。



「よぉし、ここまで!」


 太陽が真上にのぼり、昼となるとカイルの号令がかかりマラソンが終わった。次の瞬間、バタバタと倒れて死屍累々(ししるいるい)が大地を覆いつくす。


「なんでぇ、だらしねぇなぁ。」

「だらしないぞー。」


 カイルはともかく、リリーも一度も休まずに走ってたが、まだまだ行けそうな雰囲気だ。騎士見習いたちの中では団長のテオと、他数名がどうにか走り続けられていたようだ。


「だがまぁ、ガッツは良かったぜ。」


 少なくともサボろうとしていた人はなく、全員が体力の限界になるまで走り続けていた。カイルの判断が適切だったのか、医者でもあるジェルの出番も無くて済んだ。

 カイルの言葉に、くたくたで動けなかったはず団員たちが立ち上がり、素早く整列してカイルに敬礼する。


「「「光栄です、サー!」」」


 その光景にちょっと感心したような顔をするが、すぐにキリリと表情を引き締める。


「よぉし、昼になったからメシだ!

 良く鍛え、良く喰って、良く休むことが強くなるコツだ。しかもリーナちゃんのメシは格別だ。皆嬉しいだろ?」

「「「サー、イエッサー!」」」


 どこにそんな元気が残っていたかと思うくらいの声が響き、空気が震える。


「良い返事だ。昼メシに向かって突撃だ!」

「とつげきだー!」

「「「サー! イエッサー!」」」


 さっきまでのグロッキーはどこへ行ったのやら。足取りも軽く、カイルを先頭にした集団が、冒険者ギルドの建物へと駆けていった。

 なんかこう、凄いけど、何が凄いのやらよく分からん。


 ただまぁ、アレだけ頑張れるなら、ボンボンたちに勝てるんじゃないか、と希望なのか予感なのか。とりあえず何かを感じていた。

お読みいただきありがとうございます。

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