説明の続きを聞こう
また説明回となります。
やや遅れましたが、どうにか土曜日で更新できました
「魔法というのは魔素を魔力に変換して、自分の望む現象に変えることだと思われます。」
(…………)
頭の中のルビィは何か思うことがあるのか黙って聞いている。
「その魔力がどういうものかはまだ分かりませんが、火の玉を生み出し、守りの壁を作り、傷を治し、違う場所への門を構築するのでしょう。」
我々の知っている技術では半分も再現できませんな、と面白そうにジェルが語る。
そこで問題になるのは、魔力を魔法に変える方法、というわけだ。
「魔力に意思はあるか、という謎はありますが、それはさておき、魔法を使うには何らかの方法で自分の意思を魔力に伝えなければなりません。……どうしましょうか?」
知るかよ。
「おそらく呪文や魔法陣、呪符などを用いて魔法を行使するのでしょう。つまり、言葉や文字が魔法の発動方法の一つと考えられます。で、たまたま我々には便利な魔法がかかっておりました。」
あ、翻訳魔法か!
文字を読むことはできないが、話し言葉なら理解できるし、自分の話す言葉も翻訳されて相手に伝わる。
その「相手」が誰か不明だが、それで無理やり「魔法」を使ったのだろう。
(……り、理論上は可能なの。)
「ただ、おそらくはもっと魔法の中身を構築した方が良かったのでしょうねぇ。ちょっと体に無理をしてしまいました。」
やれやれ、と首を振る。
ちょっと待って。
少し気になって、右目だけでジェルを見てみた。
ルビィがあたしに入ったことにより、赤く染まった右目だが、何故か変なモヤモヤが見えるようになっていた。もしかしてもしかすると魔力って奴が見えているのかも知れない。
何度か試してみたところ、人によって身体を覆うモヤモヤの色が何となく違う。ヒューイは緑、カイルが黄色、リーナちゃんが青かな? 色は凄い薄いんだけど。
そういえば、ジェルを見るのは初めてだったな、と右目に集中する。
……うげ。
ジェルの身体を覆うモヤモヤは白と黒が混じっていた。結構色が濃く見える。つまりは人より魔力が強いのかな?
普通の人はモヤモヤが全身に均等にまとわりついているが、今のジェルはモヤモヤがあちこち破れてどう見ても通常じゃない感じだ。特に手足と、胸のあたりのモヤモヤの乱れが酷い。
「…………」
視線を上げてジェルの顔を見る。
ねぇルビィ、アレって……
(うん、ひどいの。魔力が身体を傷つけてるの。時間が経てば収まると思うけど……)
それって辛い?
(うん…… あんな風に平然としてられないはずなの……)
「ジェル……」
真正面に座りなおして、自分の今はコンタクトレンズで色を隠している右目を指さす。
「この目ね、魔力が見えるらしいの。」
そう言うと、ジェルが一瞬がピクッと反応した。
「他の人も見たから分かるけど、ジェルの身体の魔力はボロボロになってて、本当は安静にしてなきゃダメじゃないの?。」
「一応これでも医者なので、自分の身体のことは分かってるつもりです。」
「どう分かってるの?」
最近手ごわいですな、とジェルが苦笑を浮かべる。
「大変具合が良くありません。ただ、熱があるとかではないので、黙って座っていようかな、と思っています。」
「そういうことであったか。」
ふわっ、と黒竜のサクさんがあたし達に近づいてきた。ジェルも少し驚いていた顔しているので気配を感じられなかったらしい。
「ジェラード殿の魔力の巡りの乱れは気づいておったが、そのような事情があったのだな。
拙者で良ければ少しいじらせてもらって良いかな?」
「うん、お願い。」
その口調にどこか楽し気な響きが聞こえたのか、ジェルが断りそうな顔をしていたので、先んじて許可を出す。
「うむ。心してお願いされよう。
安心せよ。我ら竜族の身体は魔力でできているようなものだから扱いには慣れておる。」
そう言いながら、ジェルに右手を伸ばすと、サクさんの手が光に……いや、これは魔力の光か。あたしの右目だけに見える。
その光に包まれた手でジェルの身体……というか、表面の乱れた魔力に触れると、ふにょんと魔力が形を変える。
「お……」
直接身体に触れられてないのに、何かを感じるのか、ジェルがうめき声を上げる。
「なんかこう…… カサカサしてるな。ジェラード殿、少し魔力を増やせないか?」
「増やす…… どうやってですかね?」
「……そうか。ジェラード殿たちは魔法を使わぬ世界の住人であったな。」
ふむ、どうしたものか…… と腕を組んであごに手をかけたサクさんだが、しかたあるまい、とやや不吉な一言を呟く。
「恩人に対して乱暴とは思うが、許せ。」
本気で不吉なことを言ったサクさんの右手の光が強くなる。
「はっ!」
逃げ出しそうになったジェルだが、よほど身体のダメージが大きかったらしく、その動きは遅い。そこに常人を超えた速度でサクさんが拳を固めて、無造作にも見える感じでジェルの腹めがけて突き出す。って、ええ?!
「……っ!」
無言の悲鳴を上げてその場に崩れ落ちるジェル。その拳で押し出されたかのように、ジェルの身体から魔力が噴き出す。
「ふむ、これくらいあれば良かろう。」
他人事のように呟くと、出てきた魔力をパン生地のようにこねくり回し、ギュウギュウと無理やり押し込んでいく。
そのたびにビクビクとジェルが床でデンジャラスな痙攣をするので、不安この上ないが、まぁ大丈夫……だといいなぁ。
「よし、こんなものだろう。」
一仕事終えたサクさんが満足げに頷くと、いつもの窓際の席に移動して、風景の一部に戻る。
「生きてる?」
倒れたままのジェルの頭の近くにしゃがみ込むと、安否確認をする。微妙に虚ろな目をしてたジェルだが、一瞬驚いた顔をした後、ゴロリとこちらに背中を向ける。
「……ラシェルさんのスカートの中身が見えるくらいには。」
慌てて立ち上がると、効かないのは知っているが、とりあえずジェルの背中を蹴飛ばした。
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