説明を聞こう
説明回です。
長ったらしいので、読むときはご注意を。
「退屈なので昨夜の話の続きをしますか。」
そう切り出したジェル。
ジャイアントワーム騒ぎが収まったとはいえ、もしかしたら第二第三のが出てきたら、ということを考えると、数日から一週間くらいは警戒を解けないらしい。それと並行して、亡くなった人の弔いに巨大ムカデとジャイアントワームの片付け、破壊された町の修復、鉱山の破損状況の確認、とすることは多い。
ヒューイがトドメを刺したジャイアントワームだが、地面に出てこようとしたところを仕留めたわけなので、胴体の残りを引きずり出さないといけないそうだ。人海戦術で頑張るって話だったが、冒険者ギルドの副マスターのガイザックさんが、ワイルドパンサーを貸してくれ、と言い出した。
領主のジェニーさんも一度は見に行かねばならないし、ガイザックさんも人の手配や作業状況の確認などに何度も向こうに行かなきゃならないらしい。
歩けば半日程度で行けるらしいが、何度も何度も往復するのは面倒極まりない。更に資材を運んだり、魔物の素材を運んだりと輸送力も人手もいくらでも欲しいところだそうだ。
更に討伐の主要人物であるヒューイとカイルにも現場検証的なことを頼みたいらしく、それならまとめて来て欲しいそうだ。
ちなみに仕事が早いというかなんというか、パンサーは昨夜の内に一度母艦であるシルバーグリフォン号に戻って、クレーンをつけて帰ってきた。見てないけど、色々機材や資材を運んできたようで、汎用箱型作業機械も少し増えたような気がする。
それで色々話し合った結果、ヒューイ・カイル・リーナちゃんがパンサーに乗って鉱山に向かうことになった。無論ジェニーさんとガイザックさんも一緒だ。
朝食を済ませたらお弁当を持って出ていったので、おそらく戻りは夕方になるだろう。もしかしたらパンサーは細々と荷物運びで戻ってくるかもしれないけど。
リリーは一人で畑仕事に。一人とはいえ、手伝い用と護衛用のキューブが数体ついていってるので、それなりに賑やからしい。
アイラは少し凝った料理を作りたいと厨房に籠っている。
店内にはブラックドラゴンのサクさん(人型)がいるが、いつものように風景と同化している。時間間隔が人とは違うそうなので、退屈ではないそうだ。
そして冒頭に戻る。
まぁ、聞かれても困るような話ではないだろう。ジェルもその辺は考えてるだろうし。
「とりあえず、こちらに来てから調べてたことを説明しましょう。」
まぁ推測交じりではありますが、とジェルが前置きをして話し始めた。
この世界のいたるところに魔素が存在している。魔素はあらゆる物質、それこそ空気にまで含まれているようだ。
残念ながらまだ魔素を観測することはできないので、断言はできないが、ほぼ間違いないそうだ。
で、魔物を倒したら魔石というものが出てくるが、これは魔素が体内で結石したものではないか、という。そう考えると、魔素は血液に乗って全身を巡っているのではないか、とのことだ。
(あ、あってるの……)
驚いた声を出しながらも、ルビィが補足してくれた。
ジェルの予想通り、生物に関しては血液、もしくは体液に魔素が多く含まれており、心臓やそれにあたる部分に魔素が溜まると魔石となるのだ。力の強い魔物ほど大きかったり、純度の高い魔石になるのはそのせいだという。
「では話を続けましょう。
魔素が生物と非生物に及ぼす効果です。」
生物が体内に魔素を巡らせると、成長と共に筋肉や内臓、骨格に影響を及ぼす。簡単に言えば、メッチャ強くなるってわけだ。手近な例ではロックバッファローがアレだけデカくパワフルになったのも魔素の影響だそうだ。ジャイアントワームも、アレだけの巨体を維持できるのも、魔素によるものが大きいらしい。必要に応じて肉体強化の魔力を使っているじゃないか、と。
(空を飛ぶ魔物なんて魔力を使わないと飛べるはずがない、って言われてるの。)
そうねぇ。まだ空飛ぶ魔物とか見たことないけど、ドラゴンとかが空力で空を飛んでいるとはとても思えないし、ゲームのモンスターとか考えると、フワフワ浮くのだって珍しくない。そういう意味では重力に逆らっている、ってことだよね。
「で、色々聞いてみると、この世界にはミスリルがあるそうです。ご存じで?」
ああ、それこそゲーム知識だけど聞いたことがある。魔法銀とかいって、なんかすごい金属なはずだ。
……あれ? そう考えると、ミスリルって元素はないし、合金なんだろうか?
「良いところに気づきましたね。
この世界の金属を少し調べましたが、原子構造は我々の知っている物と同じでした。」
じゃあ、何が違うか。となると魔素なのだろう、と。実物をまだ見てないので、合金にしろ単一元素だとしても、魔素が金属原子内に入り込むことによって金属としての性質が変わるのかも知れない、ということだ。
その推測が正しいとするならば、魔素は電子と同じか、それよりも小さい粒である可能性がある、と。……そろそろ分からなくなってきたぞ。
あたしの頭の中でも疑問符が浮かんでいるような気がする。
「これはまだ仮定の段階なのですっ飛ばしましょう。
最後は魔法についてですな。」
魔法は単純に魔素を魔力に変えて、様々な超常現象を起こすものだ。直接見たのは転移魔法と、今あたし達にかかっている翻訳魔法だ。
ここまで聞いて「魔素」「魔力」「魔法」って何ぞや? と思ったので、聞いてみた。
ジェルはん~と唸った後、良い例えかどうか不明ですが、としてから説明を続ける。
魔素はエネルギーの素。魔力は魔素から取り出したエネルギーで、そのまま使うと原始的ではあるが、超常的な効果を生み出す。そしてそれに効率的な「形」を与えると魔法になる、そうだ。うん、分かりづらい。
で、例えるなら、電池単体では明るくならない。電気を取り出して放電すれば、スパークで明るくすることもできるが、電球を使えば効率的に明りを得ることができる、ということだ。
何となくイメージはつかめただろうか。
「で、実際に魔法を使う話ですが……」
暇だからいいが、ジェルの話はまだまだ続きそうである。
説明がフワフワしているのはまだ推論交じりだからです。
まぁ、過去をさかのぼれば中世の錬金術師は「燃素」なるものを想定して、燃焼現象を説明していました。
なかなか近いところまで来ていたのですが、色々矛盾が生じて、やっと酸素の存在にたどり着いて理論が確立したそうです。魔法の存在はこの異世界にとっての根源に関わる問題なので、それこそ知識を追い求める者の究極の目的ではあります。
次回もやや説明回予定となりますが、それが済めばこの章が終わる予定です。
お読みいただきありがとうございます。




