後始末を任せよう
水曜日は更新できませんでしたが、色々忙しくあんまり進みませんでした。
ぬぅ、我に時間若しくは引きこもっても大丈夫なくらいの金を!(←即物的な)
ジャイアントワームの後処理はドワーフさん達に任せて、あたし達は「雄牛の角亭」に戻ることにした。
倒した証拠にするのと、美味しいらしいので、ジェルがバリアブレードで輪切りにして直径三メートル、厚さ二十センチほどを片付けたワイルドパンサーの荷台に積んだ。体液は腐食性らしく、車体はともかく、積んでる荷物の一部が溶けかけたので、仕方なく車内に移す。
〈ちゃんと後で洗車してくださいね……〉
うん、憶えていたら。
荷物を入れて車内は狭くなったので、あたしとジェルがホバーバイクで。残り二人とガイザックさんがパンサーで戻ることに。
どこぞのおっさんが男同士のタンデムを嫌がったため、こういう配置になった。
まぁ、サポート機能をオンにすれば、簡単運転なのでジェルでも問題はない。あたしが運転してもいいが、ジェルが後ろというのは何かと不安がある。
「ことあるごとに私をディスるのはいかがなものかと思いますが。
ご存知とは思いますが、私はラシェル以外にセクハラまがいのことはしてませんよ。」
事実じゃないか、コイツ……
まぁ、せいぜいやってもハグ程度だし、本気で嫌がることはしないから、いんだけどー ってあたしも結構妥協してるなぁ。そういう態度がコイツを増長せているのかも知れない。
……と、グダグダ言ってても時間だけが過ぎる。そろそろいい時間なので、帰って夕飯にしたいところだ。大したことはしていないが、緊張の連続だったし、それなりにピンチだったのもあって、結構疲れている。変な汗もかいたので、シャワーを浴びてスッキリしたい。
「細かいことは偉い人が考えればいいので、我々はとっとと戻って、甘美なる休息の時間に身を浸したいものです。」
表現に違和感はあるが、おおむねあたしも同意見だ。よくよく考えたら、誰かに頼まれたわけじゃないんだ。細かいことまでやる義理もない。というかあったとしてもジェルに押し付ける。
よし、方針は決まった。
そんなわけで、ホバーバイクのジェルの後ろに横座り――スカートだからね――して、腰にしがみつく。まぁ、密着するたびにイベントを起こしているわけでもないので、のんびりと戻ることにした。まぁ、三十分もかかってないけどね。
先行していたヒューイたちが領主のジェニーさんの所に寄ったところ、置いていったリーナちゃんが着せ替え人形にされていたらしい。ジェニーさんが小さいころ着ていたらしい、お嬢様的なドレス姿で登場したときは、さすがにみんな驚いたそうだ。
でもまあ、今リーナちゃんが気まずそうに皆と目を合わせてくれないのだろうから、さぞかし褒められたことだろう。
ヒューイはサラリとそれでいてハート直撃な、カイルは直球どストレート。ガイザックさんは…… おっさん全開ながらちゃんと空気読む感じだろうか?
見れなかったのが残念だが、パンサーが記録してるだろうから後で見せてもらおう。
普通なら「雄牛の角亭」に戻ったらリーナちゃんは食事の支度で忙しいのだが、チーム・グリフォンのお仕事で大変だったろうから、と久しぶりに一人で厨房を切り盛りしている。
「お待たせいたしました!」
「おう、そろそろアテが欲しかったんだ。」
アイラがワゴンを押してくると、ビールもどきからハイボールに切り替えて、すっかり出来上がったガイザックさんが喜びの声を上げる。
「いつ戻られるか分からなかったので、すぐに熱々を出せるように揚げ物のメニューにしました。野菜の素揚げにミックスフライ。それとおつまみに鳥皮と軟骨の揚げ物です。」
手伝いたがっているリーナちゃんを微笑み一つで制して、テキパキと配膳をしていく。
「リリー、手伝って。」
「はいはーい。」
二人がかり、というか、リリーがご飯ブーストで倍くらいのスピードで動き回って、全部のテーブルに準備が終わった。
『いただきます。』
やってる人が徐々に増えてきた食事前の挨拶をすると、賑やかに夕食が始まった。
「くはー! うめぇ!
楽しい仕事をした後のメシは最高だ!」
モンスター退治を「楽しい」なんて言うなよ。そっちは好き放題撃ってればよかったのに、こっちは直接じゃないけど逃げ回っていたのに。
「ねぇカイルカイルー 何やってきたの?」
「おう、ちょっと人助けな。」
「おぉさすがカイルだ!」
このリリーとの会話を聞くと、その人助けが老人の荷物を持ってあげたレベルに聞こえるが…… カイルにとっては同じくらいなんだろうか?
「さてジェラード君。」
賑やかな夕飯も終わり、お酒や食後のお茶に移行しつつあると、領主のジェニーさんがどこか楽しげにジェルを呼ぶ。
「君のことだから、今回のジャイアントワーム退治の映像はあるのだろ? せっかくだから皆にも見てもらったらどうだい?」
「ジャイアント……」
「……ワーム!」
アイラとリリーがジェニーさんの言葉に反応する。見たことあるかどうかはともかく、存在は広く知られているらしい。
「そうだな、俺もあんまり見られなかったから、ちょいと最初から見せてくれや。」
ガイザックさんも乗ってきた。話を聞いていると、前半は町の避難や説明に走り回っていたそうだし。前哨戦の巨大ムカデ戦はあんまり見れなかったのだろう。
「…………」
微表情のジェルがモヤモヤとした複雑な色を見せる。
ジェルのことだから記録がないってことは無いだろう。ただ見せるかどうか、というと何か理由があって悩みどころらしい。チラリとジェニーさんの方に視線を向けて、小さくため息をつく。彼女はウキウキしているようにも見えるが、目があんまり笑っていない。
なるほど、領主としての仕事も絡んでいる、という訳か。
……あたしたちの戦力を確認したいんだろうな。「何か」あった時の脅威になるかどうか。それでも今回の戦闘はせいぜい五段階で二くらいだと思うのだが。切り札も隠し玉も出していないし。ジェルに至っては七くらいは平気で出してくるし。
「食べ終わってない人は早く済ませてください。食事しながら見るには好ましくない映像なので。」
確かに色んな物が噴き出す映像は、ねぇ…… 多少は補正かけているだろうけど。
ジェルが腕のコンピュータをポチポチ操作すると、店内が暗くなり、箱型汎用作業機械で構成された壁が白く変わり、出てきた一体のキューブが映し始めた。
蛇足ですが、ジェラードがバリアブレードでスパンと斬ればよかったんじゃね? と思う方もいるかと思われますが、バリアブレードは刃が薄すぎて、こういう相手だと傷口がすぐくっついてしまう可能性があり、意外と効果が薄くなります。
……まぁ、解決策もあるのですが、ジェルの腕だとそれは難しかったりします。
お読みいただきありがとうございます。




