ジャイアントワームを退治しよう
注意:虫やグロっぽい表現があるかもしれません
そろそろこの章も終わりそうです。
次に行く前に少し閑話を挟もうか……?
「肉体労働は私の仕事じゃないのですがね。」
ぶつくさ言いながらジェルが駆けだす。
作戦は実にシンプルだ。
地下のジャイアントワームがあたしかジェルを狙っているらしい。となれば、囮に釣られて出てきたところで、重火力で粉砕、だ。
いくつかか問題、というか懸念事項があって、一つはジャイアントワームが釣られるかどうか、ということ。もう一つは……
《ジャイアントワームが軌道を修正しました! お二人を追いかけてきます!》
ワイルドパンサーの声にジェルが足を止める。
やっぱりか。
問題点の一つに「あたし達が無事に逃げられるかどうか」があった。相手は直径三メートルもある生きたシールドマシンだ。
時折ジェルは凄い動きを見せるが、アレは色んなトリックを駆使しているだけであって、実際の体力はそんなに高くない。色々裏技とかもあるが、結構命がけのもあるので、今は使えない。
というわけで、勝利条件は地上に現れるジャイアントワームの攻撃を避けること。最初の攻撃は地面にマーカーが出てきて、指定時間内にその範囲から逃げればよかったが、今回はこちらを追尾してくる。ギリギリまで引き付けるか、常時動いて相手よりも先に行くか。
足を止めた、ということはジェルが前者を選択したということだ。つま先でタン、タン、とリズムを刻みながら、パンサーのカウントを聞く。
今この真下で、巨大なモンスターが大口開けて迫ってくると思うと、心臓に悪い。とはいえ、ジェルに抱えられていると気のせいかそこまで恐怖を感じていない。
「腕疲れてきましたな。」
「もうちょっと頑張ってよ!」
「ああ、『あたしは軽いわよ!』的なアレで返してくるかと思いましたが。」
「前にそれ言ったら『軽めに見積もって三十キロとしても重いじゃないですか』って言ったわよね。」
「……確かに。」
さすがにあたしも三十キロってことは無いので、そう考えるとあのセリフは無理がある。誰が考えたのか知らないが、無茶ぶりもいいところだ。
……そりゃ、ヒューイくらい鍛えてたら、女の子一人抱えてアクションは出来るし、カイルくらいまで鍛えると、二人小脇に抱えて長距離走ができたりする。筋肉って凄い。
「……ちょっとズルをします。」
今更、と言いたいが、ジェルの口調がいつもとちょっと違う。
《もう直下です!》
パンサーの焦ったような声が聞こえる。
と、ジェルの身体から湯気のような感じの光が溢れる。あれ? なんか見え方が変だ。もしかして……?
「しっかり掴まって。ヤツが出てきたらボタンです。」
疑問を解決するのは後にして、直感でボタンを握りつぶさないようにして両手でジェルにしがみつく。
いつもとは違う速度で景色が流れていく。空中で半回転して、後ろ向きに着地をするが、勢いが殺せなかったのか、足でブレーキをかけてどうにかこうにか止まる。
次の瞬間、さっきまでいた地面がまた爆発して、その中から石や土を飛ばしながら、白い柱――ジャイアントワームが、
「ラシェル!」
ジェルの声に反射的にボタンを握る。
さっきまで立っていた位置に置いてあった音波衝撃弾が炸裂した。
大きさがあるからそこまで気絶するには至らないと思うが、それでも聴覚に多くを頼っているらしいジャイアントワームには低周波のシャワーは効くだろう。
甲高い声を上げてバッタンバッタンのたうち回って、地面に自分の身体を叩きつけるジャイアントワーム。長さが十メートルくらいあるので、はた迷惑この上ない。
「カイル! 腹を狙え!」
『よく分からんけど、分かったぜ!』
微妙に謎な発言をすると、パンサーが暴れるジャイアントワームの横(?)に回り込み、荷台のカイルが三脚から外した重機関銃を小脇に抱えると、引き金を絞った。
……先に言っておく。あの重機関銃はジェルが小型化をして手で持って射撃することもできるように設計はされてある。ただ、パワードスーツとかそういうのを想定していただけであって、生身の人間が一人で使うなんて考えてもいなかった、そうだ。
そして現在、ミスター想定外ことカイルが暴れる銃口を力とテクニックでねじ伏せて、地面に近い部分に着弾させる。地上に出てる部分がいくら激しく動いていても、根本部分はほとんど動いていないので狙い放題だ。
流れ弾に掠っただけでヤバいので、ジェルがジャイアントワームを視界に入れながら後ろ向きに逃げる。……あたしは抱えられたままね。
前回の射撃で空いた穴は痕にだけなっていて、もう塞がっているようだったが、今回はそれ以上の破壊力の銃弾が集中して叩き込まれた。
そりゃ象でも一発で粉砕できそうな銃弾をアレだけ受けても倒れないのは異世界のデタラメさを改めて思い知らされたが、さすがのジャイアントワームもくたっと力が抜けたように倒れる。それでもビクビク動いているのでまだ力尽きてないらしい。
『ヒューイ! トドメは任せたぜ!』
『おうよ。』
どこにいたかは不明だが、ヒューイがジャイアントワームの口の前に現れると、レーザーライフルを構える。
音と銃撃のダメージでジタバタしているジャイアントワームだが、おそらくはヒューイを認めて身体を伸ばそうとする。おそらく捕食して少しでも傷ついた身体の滋養にしようと思ったのかも知れない。
身体を細くして思ったよりも長く伸びたジャイアントワームがヒューイに届こうとした寸前、空気や他の物が焦げるような臭いがした。ジャイアントワームが動きが止まり、一瞬内部から膨らみながら光って、そしてもう自分の身体を支えることも出来なくなったのか、口の部分から大量に緑色の液を吐きながら自重で潰れてしまった。
それでも油断なく自分の武器を構えて次に備える。
十分後。
《対象から生体反応、完全に消失しました。》
パンサーが戦いの終了を告げた。
お読みいただきありがとうございます。




