町に戻ろう
あけましておめでとうございます。
特にこれと言って正月らしい話ではありませんが、今年もよろしくお願いいたします。
「さて、いくつ文句言おうかな。」
「ええ? 俺か?!」
お前以外に誰がいる。
ルーフを開けて、運転席に立って銃弾一発でロックバッファローの頭を吹っ飛ばしてドヤ顔のカイルだが、ジェルに冷静にツッコまれてしおしおとなる。
「まずいきなり銃を撃つな。リリーさんがいることをに気をつけろ。そもそもなんで牛を撃つ。あと運転席に立つな。」
「結果オーライだろ?」
なんだろ、この話の噛み合ってなさ。ジェルも疲れた様にため息をつく。
その間にも、ジェルが元首を刎ねて、カイルとリリーで傾けた荷台にロックバッファローを置いて、血抜きをしている。
ここで必要最低限の処理をして、後は冒険者ギルドに持ち込んで解体を頼めばいいか。ってとこだろう。
パンサーはせっかく新車で来たのに、血で汚れることをひっそり心配しているようだ。
「大体血は抜けたか。」
ジェルが切断面にフィルムのような物を貼ると、カイルがロックバッファローを荷台に引き上げる。
「クレーンをつけるか……」
〈ああ、あるといいですね。〉
フック付きワイヤーとかすでにつけてそうだけど、クレーンがついていた方が色んな作業に活用できそうだ。
すでに方針が決まったのか、さっさとパンサーに戻ったジェルが(おそらく)シルバーグリフォンに通信をしているようだ。変に置いていかれても困るので、ジェルの隣に座る。
そしてカイルとリリーが荷台にロープでロックバッファローを固定すると、パンサーに乗り込む。またリリーが運転席に乗り込んだので、猫の子のように襟首を掴んで助手席に戻す。というか、もしかしたら運転してみたいのだろうか?
さすがに荷物を載せたまま運転テストをする気が無いのか、それとも早く肉を処理したいのか知らないが、車をハンブロンの町に…… って、どっちだっけ?
「町はどっちだ?」
カイルもかい。まぁ、あちこちグルグル回ったので、分かりづらいよね。
〈四時の方向です。随時ナビいたしますので参考にしてください。〉
「おう、任せたぜ。」
カイルがアクセルを踏むと、肉を積んだワイルドパンサーはゆっくり走り出した。
ほどなく、というか十分程度でハンブロンの町が見えてきた。遠目にも衛兵の人数が普段よりも多く見えるし、アイパッチのおっさんの姿も見えたような気がする。
……また誰か何かしでかしたか?
あたし達ではないと信じたい。
「おーい、止まれー」
ダメだったか。
バモンさんに呼び止められて、パンサーを門の前に止める。
「お、ちょうどいいところに。」
そしてカイルは相変わらず呑気なもんだ。お出迎えご苦労、くらいにしか思ってないんだろうか?
「……え~と、これはなんだ?」
やっぱりいたガイザックさんがパンサーの中を覗き込んで、あたし達の姿を確認する。
「乗り物……なのか。」
「おう、そうだ。ロックバッファロー仕留めたんだが、また解体してくれ。」
空気読まないカイルが爆弾発言をする。
「んぁ?」
地声がデカいので、ガイザックさんだけでなく、バモンさんや他の人たちにも聞こえて、パンサーの後ろに何人かが回り込む。
「こりゃまたデカいな。」
「前ほどじゃねぇが結構あるな。」
「首はねぇがどうやって倒したんだ?」
「これがロックバッファロー……」
見慣れた(って程ではないが)おっさんズはともかく、他の衛兵たちは巨大牛の姿に興味深々だ。
「首を刎ねたのはジェラードだろうな。前見たのと同じだ。で、頭が無いところを見ると…… 嬢ちゃん達じゃなく、また英雄殿が何かしたってとこか?」
相変わらずガイザックさんは鋭い。まぁ、確かにあたしやリリーがどうこうしたとは思わないだろうし。
「おそらく遭遇戦ってとこか。となると、英雄殿が先走ったんだろうな。」
ガハハ、とガイザックさんが豪快に笑う。
ホント見てきたんかい。
「かぁ~ なんか聞きたいことや言いたいことがあったが、何かみんな吹っ飛んだな。よしバモン。時間外だが、後でじっくり事情聴取だな。」
「ええ、仕方ないですね。いやはや忙しいですなぁ。」
わざとらしく難しい顔で言い合うおっさんズだが、
「隊長だけズルいですよ!」
「そろそろ連れてってくださいよ。」
と、衛兵たちから不満の声が上がる。ただその顔は茶化すような笑顔なので、バモンさんが慕われているのが見て取れる。
「ともかく、ロックバッファローはギルドまで持ってきてくれ。解体と買い取りの件は後で相談しよう。」
「あれ? そういやぁ、後の二人は?」
町を出た時は六人だったのに、減ってることに気づいたバモンさん。そういやぁ、どこまで行ったんだ? あのカップルは。
そんな風に思っていると、ホバーバイクに乗ったイチャイチャ組がやってくるのが見えた。もしかしたらパンサーあたりの通信が入ったのかもしれない。
……あ。
そりゃ、美少女を後ろに乗せて戻ってきたヒューイに嫉妬と羨望の視線が向くが、それ以前ホバーバイクなんて異世界に概念自体ない乗り物がどう見られるのか。行きは荷台に載せていたからなぁ。
皆が揃いも揃ってポカンとした表情を浮かべる。
「なぁ、」
ガイザックさんが真面目な顔でジェルの肩をポンと叩く。
「良いから今すぐ話を聞かせろよ。な?」
なんかこう、ままならないなぁ。
お読みいただきありがとうございます。




