悲しき涙を見よう
タイトル詐欺ですw
じゃなくて。
先週一週間は風邪なのやら喉を傷めたのやら、なんか熱出て半分以上寝てました。
皆さん、体調管理には気をつけましょう。
と、ちょうどタイミングよく?新しい章の開始ですが、最初はしばらく別の話題で進む予定です。
そろそろ少し伏線とかそーゆー感じのをどうにかしたいです、はい。
〈しくしくしく……〉
それは鋼の身体を持ち、心を持たぬはずだった。しかしそれは確かに流れないはずの涙を流していた。
ハッキリ言っちゃいけないんだろうけど……
ああ、鬱陶しい。
事の始まり、というと、
「失礼いたします!」
朝食を終えて、皆がそそくさと動き出したころ、ノックの音とともに「雄牛の角亭」に一人の若者が入ってきた。
手に身長を超えるくらいの槍を持って、どこかで見たような皮鎧を着ている。なんかこう、兵士っぽい。というか、街の警備の人か。
「あ、いらっしゃいませ。お水をどうぞ。」
さっと現れたリーナちゃんが、テーブルに誘導して、水の入ったカップを置く。
「あ、じ、自分は仕事中ですので……」
……ああ、そういえばこの町に来て、普通の男の人って初めてかも。ここでいう「普通」というのはリーナちゃんみたいな超絶美少女に微笑まれると赤くなるという、一般的な反応を見せることだ。
「あ、そうだったんですね。いつもお疲れ様です。」
「い、いえ! じ、自分は自分の職務を全うしているだけでして……」
ちょっと謙虚に言って自分を良く見せようという下心が見え隠れするが、仕方があるまい。
「そういえば、先日は隊長が美味しい肉料理を振舞ってくれました。こちらの料理だそうで。大変美味しくございました!」
コチコチの若い兵士は、それでも身に沁みついた敬礼のポーズで感謝の意を表す。
「まぁ、喜んでいただけたのなら、とても幸いです。……あ、少しお待ちください。」
柔らかい笑顔を浮かべたリーナちゃんが厨房に向かうと、その背中が見えなくなるまでずっと目で追ってる。
「……で、結局何の用?」
自分が美少女、って言うほど自惚れてはないけど、全くスルーされたのはなんか切ない。近くの怪しい白衣男の方に視点が集中して、あたしの存在自体が死角になるのかもしれないが。
「あ、申し訳ございません。」
さっきまでコチコチだったのが、普通の対応になったのがこれまた切ない。
「町の入り口に意味不明な物が来ましたので、隊長がジェラード殿かラシェル殿に来ていただきたいと。」
ジェルはともかく、なんであたし?
「なんか来てましたっけね。……と、あ。」
おいこら、今の「あ」は何だ?
「……行きましょう。面白い物が見られるかも知れませんので。」
リーナちゃんにお土産を持たされた若い兵士によって、あたし達は南町の門へと連れていかれた。
そんなわけで冒頭に戻って、ハンブロンの町の門の外にそれはいた。兵士たちに槍を向けられ、遠巻きにされている。
〈しくしくしくしく……〉
あたし達の世界の言葉で言うと、黄色のピックアップトラックだった。異世界では表現する言葉が見つからない。馬無しの馬車、では無理があるしなぁ。
ちなみに泣いている声は、元々は高速ホイールカーのダッシュパンサーの搭載人工知能だ。前に見た時はスポーツカーだったような気がしたが…… 進化したのか、はたまた退化したのか。
〈こんな車体になったの屈辱なのに、来るって日に誰も迎えに来なくて、門の兵士には警戒されて変な目で見られるし……〉
あ、やっと何かセリフ喋った。
ちなみに、パンサーの言葉は銀河共通語そのままらしく、あたし達には理解できるが、あたし達に同行した若い兵士には分からないようだ。
「おお、来たか。多分あんたらの関係だと思うんだが、そうだよな?」
首をコキコキさせながらバモンさんが現れる。若い兵士の持った包みに気づいて、目を輝かせる。
「お、嬢ちゃんになんかもらったか! みんなに分けてやるとして…… 大役を担ったお前には優先的にやらんとな。」
「はっ! 恐縮であります!」
店にいる時は単なる酔っぱらいのおっさんだが、こうなると、ちゃんと偉い人をやっているように見える。
「それは良いとして、これはなんだ?
なんか言葉を喋るみたいだが。」
「パンサー、挨拶だ。」
〈*********、******。〉
と、パンサーはあたしの分からない言葉でしゃべり始めた。
……はい?
《はい。私はチーム・グリフォン所属、高速移動車両の…… ワイルドパンサーです。パンサーと呼んでいただければ結構です。》
それと同時に耳に着けている通信機から、通訳のようにパンサーの声が聞こえてきた。というか、名前変わったんだ。
《申し訳ございません。他の方にも聞かせる時には、こちらでお話ししますので。》
ちなみに今はトラックの方からは声が聞こえない。
通信機を耳に着けているのはあたしたちだけだからしょうがないのだろうが、慣れないと不便そうだ。
「……ふ~ん。これはアレか。あの店にあるキューブって奴のすげぇの、ってことでいいのかね?」
「あながち間違いでもないですな。
外見は固そうですが、中は意外と繊細なので、あんまり揶揄わないでいただけると助かります。」
見かけにはよらんなぁ、とバモンさん無造作にパンサーに近づくと、そのボディをコンコンと叩く。更に車内をガラス越しに覗き込んで、うむむと唸る。
「金属だ、というのは分かるが、この透明な板状の物が分からんな。中もなんかゴチャゴチャしてるし。」
ぐるりと後ろの方に回り込む。荷台にはまた何に使うか分からない部品やコンテナが整然と積んである。
「まぁ、荷物が訳わからんのは今に始まったことじゃないか。
……暴れないんだろ?」
〈そのつもりではあります。〉
毎度毎度二重に聞こえるけど、今度は省略するので。
パンサーの理性的にも聞こえる声に、バモンさんはパンサーに近づくと、あたし達には聞こえないくらいの声で二言三言呟く。
〈は、はぁ……〉
「ん~ またこれ、アレだろ? こいつが本気で暴れたら、俺たちじゃあ止めれないんだろ?
「たぶんね。」
この車体での活躍はまだ見てないが、スポーツカーの時でも、正面からロックバッファローとぶつかっても勝てるはず。ジェルのことだ、見かけだけ変えて満足するはずがない。スピードは落ちてると思うが、パワーは段違いになってるんだろう。
「言葉通じるみたいだし、まぁ問題は起こさないでくれ、とだけ言っておくか。」
バモンさんが手を振って合図をすると、パンサーを遠巻きにしていた兵士たちが、一斉に撤収する。
パンサーが通れるように門の前を空けると、さっと敬礼をする。
「ようこそ、ハンブロンの町へ!」
お読みいただきありがとうございます。
ついにシルバーグリフォンの艦載機の登場です。
高速ホイールカーダッシュパンサー。とはいえ、道路状況が悪いこの世界では動きづらいので、ピックアップトラックに改造されちゃいました。特技はハッキングに情報処理、という異世界では全然役に立たない奴ナンバー1となります。
一番小さいので、どうにかこうにか外に出ることができるようになりました。




