市場の値動きを知ろう
すみません。
今日は遠い旅の空の下のため、やや短いです(←理由になってない)
「なるほどなるほど。砂糖の受け入れは順調か。グラディン老、相場の変動はどうなっているか分かるか?」
「ピチピチの娘になったのに『老』かい。
まぁよいわ。のぉ、ぬしは確か王都に『目』を飛ばしておるだろ? 商会のワシの部屋を見られるか?」
グラディンさんが確信を持ってジェルに視線を向ける。
「なんの……」
「誤魔化さんでもよい。ぬしのような者が置き土産を残さないはずが無かろうて。」
そりゃそうだ。ジェルだしね。
「面白くありませんなぁ。」
ボヤきながらもバーチャルのキーボードとディスプレイを呼び出すと、ポチポチと操作する。
近い物を見ていたカエデとグラディンさんはそんなに驚いてなかったが、おそらく初めて見るジェニーさんが驚きで固まっていた。
「…………」
ジェルがチラリとグラディンさん達を見て、何か考えたらしいが、面倒くさくなったのか(あたしから見て)普通に操作する。
ディスプレイの中に(おそらく)王都の光景が映る。コンラッドの町と比べ、建物が密集している。二階建て以上の建物も多い。道路も広く石畳で整備されている。なるほど都会だ。
建物よりも高いところをドローンの視点で移動する。見慣れない角度からの光景に、皆が身を乗り出さんばかりにディスプレイを覗き込む。
黙々とキーボードを叩いて操作すると、周囲と比べても大きく立派な建物が見えてきた。
「立派ですなぁ。さぞかしお金がかかってるんでしょうな。」
「まっとうに稼いでおるわい。」
「その辺の議論はいずれということで。やはり最上階ですか?」
「……むぅ、そうじゃ。」
グラディンさんも言い返したいことがありそうだが、事実だから認めざるを得ないようだ。
視点がゆっくりと下がって、建物の一番上の階をゆっくりと旋回する。一つに窓に光が見えた。
「ワシの想定じゃと、猫程度かもしくはそれよりも小さい、というところじゃろ?」
「今開いている窓からは侵入可能、とは答えておきますよ。」
「十分じゃ。」
光が漏れている窓から「視点」が入っていく。光源があるとはいえ、夜の室内ではあるが結構明るい。
「レディの部屋だから変な事は考えるんじゃないぞ。」
「さほど興味はありませんな。」
「男色か…… ままならぬのぉ。」
ニヤニヤ笑いをするグラディンさんに、ジェルが目を細める。
「なるほど。……燃やしますか。」
「ストーップ!」
とりあえず止める。
こいつ、本気で最後のエンターキー押すとこだった。
あたしの真剣な声に、グラディンさんが顔を引きつらせる。
「マジ、じゃったのか……?」
「……ジェルをからかう時は何かを犠牲にする覚悟を持った方がいい。」
「難儀じゃな。」
「で、この机の上の書類ですかな?」
グラディンさんの嘆息にジェルが口を挟む。
「おう、そうじゃそうじゃ。」
なんて書いておる? と聞かれて、ジェルが机の上の羊皮紙の部分をマーキングする。
斜めに映っているのを画像補正して、表面に書いてある文字を翻訳しようとして、
「暗号ですか。」
「商人に必要なのは用心深さよ。
……なるほど、砂糖は早速値崩れしておるな。ただ、妙な値動きだから、損切りと一か八かのぶつかり合いか。」
面白いのぉ、とグラディンさんが悪い笑みを浮かべた。
「どういうことだい?」
「この町の新しい砂糖は相場に大きな衝撃を与えたようじゃな。しばらくは乱高下するが、所詮は砂糖、いずれ適正額になるわい。」
「なるほど、新しい産業が潰される心配はない、ということか。」
「そうじゃな。」
ジェニーさんとグラディンさんの間になんか高度そうな会話の応酬が。
おそらくは、町主導で行われるサトウダイコンの大規模栽培はうまいこと行くだろう、って事らしい。
「それと…… これはなんじゃ?」
あ、なんかグラディンさんの声のトーンが変わった。そして子供でも分かる嫌な予感。
「糸に布関連が高騰じゃと! 狐娘に言われたんで、急いで押さえたから一気に売り抜けたからいい儲けになったが……」
ギロリとカエデを睨む。
「のぉ、狐娘よ。何を知っておる?」
……あれ? もしかしてー
って、カエデ! こっち見るな!
「ほほぉ、どうやらぬしが何か知っておるようじゃな……」
グラディンさんが恐ろしい笑顔でにじり寄ってくる。ジェニーさんはどこか興味深げに、ジェルはどこか楽しげに。
そしてカエデが怖い顔のグラディンさんの向こうで、両手を合わせてペコペコ頭を下げていた。
……そんな動きだけでも一部が揺れまくりなので、びみょーにイラッとくる。
誤魔化されては……くれないだろうなぁ。
お読みいただきありがとうございます。




