検分しよう
101話目らしいので、キャラ紹介を除くと99話目。
となると、次が100話目ですが、特に何も考えてないです
と、気づくとブックマークが15件! 増えてます! ありがとうございます!
「まずは検分せんとな。」
酒飲みの言い訳が聞こえたような気がした。
「やはり町の安全に気を配らんとな。」
危険物かい。
「これは人間の酒か?」
あ、意外な人が喰いついてきた。そういやぁ古今東西、ドラゴンは酒好きって話が多いよね。サクさんがまたズイッと前に出てくる。
「飲み方はいろいろあるが、ここは単純にストレート、ロック、水割りだな。」
「ほぉほぉ、一つずつ試してみようか。」
舌なめずりをしそうな顔のガイザックさんを筆頭に悪い大人たちが目を輝かせる。
アイラが小さくため息をつきながらも適当なおつまみを用意して、酔っぱらい予備軍に差し入れる。
「とりあえずリーナ、飲み干される前に少し確保しておけ。」
「はい。」
ジェルに言われて、すっ、と酒飲みたちの群れにリーナちゃんが入っていく。少し間が空くと、ペットボトル二本程度の「お酒」を持って帰ってきた。
……あれ? 今どうやって持ってきたの? 見た感じ、飲兵衛達の態度に特に変化なかったと思うけど。
ま、いいや。
「ベースはワインのようですから、ブランデーになるかと思われます。」
「料理にも使えそうか。」
「えっと…… はい。」
少し恥ずかしげにリーナちゃんが答える。どうやらリーナちゃんも料理用のお酒として欲しかったようだ。
まぁ確かに料理にも、それこそお菓子にも使えるからね。料理のレパートリーが増えると嬉しいな。
「しかし魔法って凄いですなぁ。」
「そうねぇ。あたし達だってそんなに見たことないけど、見るとビックリするわね。」
ジェルのボヤきにアイラが乗っかる。
飲まない(飲めないとは言わない)あたし達三人と、アイラにリリーでテーブルを囲む。
テーブルに上にはリーナちゃんが用意してくれた軽食とハーブティが並んでいる。
「我々の持つ『科学』ではできないことばかりですよ。」
「……そうなの、ハカセ?」
壁に積んである汎用箱型作業機械や店の中をに視線を向けてからジェルに聞くリリー。確かにジェルなら何でもできそうな気がする。
でもそうじゃないこともあたしは知っている。そりゃ、元の世界じゃいくつも事件を解決している。事件は解決したが、悲劇をすべて防げたわけじゃない。時間を、空間を超えたいと何度思ったことか。目の前で消える命を何度見送ったことか。
「そんなもんですよ。とりあえず……」
ジェルが横を向く。
「あの酔っぱらいを平穏に止める方法は知りませんな。」
「あー あれは無理だねー」
ケラケラとリリーが笑う。
ガイザックさんとバモンさんがヨハンさんの左右から肩を抱いて、調子っぱずれに歌っている。挟まれてるヨハンさんは苦笑いしながらも、自分が生み出した新しいお酒をちびりちびりと飲んでいる。カイルはいつも通り飲んで食ってと忙しく、ヒューイはこちらにたまに目を向けて、静かに飲んでいる。
サクさんは…… あ、いた。なんか窓際で空に浮かぶ月を眺めながらカップを傾けている。なんか絵になるが、こういうのってブランデーじゃなくて、もうちょっと似合いそうな酒がありそうだが。そういやぁ、向かいで一緒に飲んでる女性は誰? まぁ、誰も何も言わないから危険は無いのだろう。
と、にこやかに談笑しているわけだが、さっきからリーナちゃんがなんかソワソワしている。何か言いたげなのだが、言い出せない感じだ。
ちょいちょいと他から見えないように肘でジェルをつつく。分かりづらいが、一瞬こちらを見たので、顔をわずかに動かしてリーナちゃんを指し示す。ジェルの顔に、これまた分かりづらいが理解の色が広がる。
「調味料か?」
「はひ?」
急に聞かれて、リーナちゃんが上ずった声で喉に詰まらせたように言葉を返す。
「確かにあの魔法があれば、発酵調味料とか作れるわな。」
「あの、いえ、その……」
「香辛料がまだロクに手に入らない以上、味を増やすにはそれしかないか。」
「…………」
恥ずかしそうにうつむくリーナちゃん。だがこの会話にアイラが喰いついてきた。
「新しい調味料?」
「そうですね。こちらの世界にも似たような物があるのかどうか分からないので、作ってしまった方が早いのかと。」
「作れるの?」
聞かれたジェルがリーナちゃんを見たので、あたしたち全員の視線がリーナちゃんに集まる。みんなに見られてアワアワしてたリーナちゃんだが、すぐに落ち着いて指折り何かを数える。
「え~と、おそらく麹を除けば一通り入手可能です。麹菌はグリフォンにストックがありますのでそれで。」
「それは楽しみですな。」
「おーい、ジェラード!」
あ、アイパッチの酔っぱらいが呼んでる。
「なんですかね?」
ベロベロになってないんで、仕方なく酒飲みのテーブルに向かうジェル。
「ヨハンとは話をつけた。明日にでも醸造所に紹介してくる。」
「へぇ。」
「ありがたいことなんだが、こりゃまた大きな話になるんでな。また領主さまに説明しなきゃならん。」
「でしょうな。」
ひょいと肩を竦める。おそらくある程度未来が予想できたんだろう。そういやぁ気付くとバモンさんがいなくなっている。と、
「今度は何かね。温厚な私にも我慢の限界があるとは思わないのかな?」
噂まではしてないが、ジェルが逃げ出す前に領主のジェニーさんが「雄牛の角亭」のドアを開ける。
「キューブを増やしてくれないか。二体じゃ足りなくなってきている。
それとリーナ嬢の旨い料理と冷えたワインだ。それがなきゃ私は倒れてしまう。」
「いや、それがですね。この人間ビックリ箱が新しい酒を教えてくれましてな。」
「ほぉ。」
感心したように唸るジェニーさんに人間ビックリ箱ことジェルが、蒸留酒とヨハンさんの魔法の件を説明する。
「まぁ、私も専門家じゃないので、まだまだ研究の余地はありますがね。」
「全く、君にはいつも驚かされるな。
まぁいい、細かいことは後だ。まずはその新しい酒を検分しないとな。」
酔っぱらいの言い訳は世界共通なんだろうか。更におつまみが追加されて、試飲会という名の飲み会が始まった。
もう好きにやってちょうだい、全く。
お読みいただきありがとうございます。




