excavater 12
「キョーコは午後7時で上がったよ。明日は遅番だから午後1時出勤」
カフェには夕方話をしたメイドさんがいなかったので、他のメイドNPCに話しかけてみた。
「わたしは情報とか無理、通常業務用NPCだし」
やたらとリアルな話し方をするNPCに再び驚く。一般的なMMOならばテンプレ通りの説明しかしないものなのに、この世界はかなり違う。まるで普通の人間みたい。
ゲーム内時間は午後9時。渚はギルドの用事で出かけていた。
一人で掘りに行こうと思ったけど、この世界の夜はリアルすぎてちょっと怖い。オカルト系苦手なオレ。カフェの前でどうしようかと考え込む。
「あら、こんな夜中にあなた何してるの?」
聞き覚えのある声、顔を上げると目の前に堀師専門用品店の店員さんがいた。
モスグリーンのTシャツに迷彩ズボン、抱えていた茶色の紙袋からフランスパンがにょっきり。
全く違う身なりは別人のよう。
疑問に思っていた事を話してみると、店に来るように言われたのでついていく事にした。
「最近ハーブティーに凝ってるの。お味はどうかしら?」
カウンターの上で膝をついたオレに、苺ショートケーキとハーブティーを差し出した。
「わたしね、明日はハロワに行こうと思ってるの」
いきなり世間話を切り出された。
「ゲームがオープンした頃は忙しかったわ。わたし堀師の試験官をしていたのよ」
店員は遠い目をしながら話を続けた。
「あまりにも志願者が多いものだから、習得クエストの難度を上げることになっちゃってね、一次試験と二次試験に分けて選抜することになったの」
職のバランス調整という意図はわかる。
ちなみにセクシャルジョブはLV10から15のうちでなければ習得クエストが受けられないとのこと。
「一次試験は堀師に必要な体力を審査するために、ワールドマラソンをしたの」
ワールドマラソン?
「首都を出発点にしてこの世界を一巡りするだけの簡単な試験よ、一次試験の名前は『昇天編』。わたしが先導役ね」
ちょっと待て、LV10がいきなり世界を走るって無理だろ!
「その頃カンストはLV50だったからそんなに難しくないと思ってたのに、プレイヤー達が次々昇天しちゃうものだからちょっとがっかりだったわ」
巡回MOBに絡まれたら無理だって!一撃でアウトだし!
「一次試験を通過したのは8人だったかしら」
いたのかよ!どんな廃人だよ!それより何処走ったんだ!?
「二次試験はスーパー銭湯の四階で精神力を審査する『陵辱編』。世界の軍隊とかでよくある拷問訓練みたいなものよ」
住めねーよ!元そんな場所!
「本物の拷問だと危ないから、鞭とロウソク系から始めて…」
カミングアウトの原因発見。
「志願者は半年で激減、結局合格者はゼロ。噂も広まっちゃったしね~」
そりゃ誰もやらねーよ!
「さびしいわ……。でもちょっとやりすぎだったかしら、てへ♪」
笑ってんじゃねー!




