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掘ってます!  作者: 黒猫執事
堀師という名のサブ職業
12/21

excavater 12

「キョーコは午後7時で上がったよ。明日は遅番だから午後1時出勤」

 カフェには夕方話をしたメイドさんがいなかったので、他のメイドNPCに話しかけてみた。

「わたしは情報とか無理、通常業務用NPCだし」

 やたらとリアルな話し方をするNPCに再び驚く。一般的なMMOならばテンプレ通りの説明しかしないものなのに、この世界はかなり違う。まるで普通の人間みたい。 

 ゲーム内時間は午後9時。渚はギルドの用事で出かけていた。

 一人で掘りに行こうと思ったけど、この世界の夜はリアルすぎてちょっと怖い。オカルト系苦手なオレ。カフェの前でどうしようかと考え込む。

「あら、こんな夜中にあなた何してるの?」

 聞き覚えのある声、顔を上げると目の前に堀師専門用品店の店員さんがいた。

 モスグリーンのTシャツに迷彩ズボン、抱えていた茶色の紙袋からフランスパンがにょっきり。

 全く違う身なりは別人のよう。

 疑問に思っていた事を話してみると、店に来るように言われたのでついていく事にした。


「最近ハーブティーに凝ってるの。お味はどうかしら?」

 カウンターの上で膝をついたオレに、苺ショートケーキとハーブティーを差し出した。

「わたしね、明日はハロワに行こうと思ってるの」

 いきなり世間話を切り出された。

「ゲームがオープンした頃は忙しかったわ。わたし堀師の試験官をしていたのよ」

 店員は遠い目をしながら話を続けた。

「あまりにも志願者が多いものだから、習得クエストの難度を上げることになっちゃってね、一次試験と二次試験に分けて選抜することになったの」

 職のバランス調整という意図はわかる。

 ちなみにセクシャルジョブはLV10から15のうちでなければ習得クエストが受けられないとのこと。

「一次試験は堀師に必要な体力を審査するために、ワールドマラソンをしたの」

 ワールドマラソン?

「首都を出発点にしてこの世界を一巡りするだけの簡単な試験よ、一次試験の名前は『昇天編』。わたしが先導役ね」

 ちょっと待て、LV10がいきなり世界を走るって無理だろ!

「その頃カンストはLV50だったからそんなに難しくないと思ってたのに、プレイヤー達が次々昇天しちゃうものだからちょっとがっかりだったわ」

 巡回MOBに絡まれたら無理だって!一撃でアウトだし!

「一次試験を通過したのは8人だったかしら」

 いたのかよ!どんな廃人だよ!それより何処走ったんだ!?

「二次試験はスーパー銭湯の四階で精神力を審査する『陵辱編』。世界の軍隊とかでよくある拷問訓練みたいなものよ」

 住めねーよ!元そんな場所!

「本物の拷問だと危ないから、鞭とロウソク系から始めて…」

 カミングアウトの原因発見。

「志願者は半年で激減、結局合格者はゼロ。噂も広まっちゃったしね~」

 そりゃ誰もやらねーよ!

「さびしいわ……。でもちょっとやりすぎだったかしら、てへ♪」

 笑ってんじゃねー!

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