05
差し出された手を取れ、と目の前に突き付けられて、戸惑った視線をフィーズに向けた。
「何を言って…」
「そのままだろうが。何を迷ってるんだ、てめぇは」
いいから取れ、ともう一度、フィーズは言い放つ。
「なによ、それ」
声が震える。
だって、意味が分からない。
否、分かりたくない。
だって、だって。
「アナタ、おかしいんじゃない」
それとも、おかしいのはわたしの方?
だって分からない。
自分がどうしたいのか、どうすればいいのか。
この気持ちは…。
「考えるな。」
静かなフィーズの声がアルサの思考を遮断する。
「お前は何も考えなくていい。だた、黙ってこの手を取れ」
フィーズの顔と差し出された手を交互に見やる。
「何も、考えなくて、いいの…?」
「ああ」
「わたしが、この手を取る、だけで…?」
「ああ」
本当にそれでいいのだろうか。
だって、わたし、は…。
「無理、よ。わたしは…、わたしはそっちに行けない」
だって、歩みたくてもわたしはフィーズと一緒には歩んで行けない。
伸ばしかけた手を下ろして、体の横できつく握り締める。
「…わーったよ」
フィーズの差し出されていた手が下がる。
そう、それでいい。
わたしはこの手を取っちゃいけない。
彼ももこの手を求めちゃいけない。
「お前が来ないのなら、俺が行ってやるさ」
「フィ…」
「バーカ。てめぇは黙って俺の腕の中ンにいればいーんだよ」
優しい温もりに抱きしめられる。
その暖かさに涙が後から後から溢れて止まらなかった。
END




