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プロローグ

 「今日は私が夕飯を作るのはどう?」


 少女は敵を捉えたまま、片手でマガジンを捨てる。

 新しい弾倉をグリップの底へと滑り込ませ、異型の姿をした存在の頭に向けて引き金を引いた。


 ―バンッ


 鈍い音はしない、紙でも撃ち抜いたような感覚だった。


 「伊織は料理するなよ、あんな酷い物は食べたくない。」


 料理とは呼べない見た目をした物を食べた時、生命の危機を感じていた。


 「律、あなた反抗期なの?」


 拳銃を羽織っているジャケットにしまい、伊織という少女は律という少年に言う。

 律は『反抗期』という言葉を聞いて、苛つくような仕草をした。


 「は?11歳が反抗期になる訳ないし。」


 拗ねている律の頭を伊織は軽く撫でた。


 「な、何すんだよ!?」


 突然のことに困惑した律が犬のように吠える。

 そんな律を見て伊織は面白そうに笑った。


 「律が好きそうな、ご褒美のナデナデだけど?」


 「そんなの好きじゃない!!」


 会話で2人が時間を潰していると、倒れていた異型の化け物が立ち上がり始めた。


 「あ、トドメをやり忘れてたみたい。」


 「夕飯の話なんていいから、しっかりしろよ!」


 「私はいつもしっかりしてまーす。」


 拳銃を取り出し、銃口を化け物に向けて発砲した。

 乾いた音が鳴り響く、化け物は2度と起き上がることはなかった。


 「律ちゃん、ご飯よ〜。」


 化け物を指差して嫌な笑みを浮かべながら伊織が言うと、律は明らかに不機嫌な表情をした。


 「その言い方やめろって言ってんじゃん!」


 グチグチ言いながら、化け物の方へと手を伸ばす。

 手が触れたと同時に化け物は律の手に吸い込まれていった。


 「調子とかは平気?」


 「普通。」


 化け物を取り込んだ自分の手を眺めながら、律は伊織に言った。


 「なぁ、伊織。」


 「ん、なぁに?」


 拳銃を指で回転させながら、ポケットにしまう。


 「もしも俺が…」


 「全部を取り込んだ時に人じゃなくなってたら。」


 「その時は伊織が俺を殺してほしい。」


 律の目には確固たる信念と恨みが垣間見えた。

 そんな律を見て、伊織は溜息を吐いて言う。 


 「はぁ、律…」


 「あなたの命を救ったのは、この私なんだよ?」


 「なのに、私にトドメを任せるなんて正気じゃないってば。」


 複雑な表情のまま言う伊織を見て、律は申し訳ない気持ちになっていた。

 それでも、律の意思は決して変わることはない。


 「でも伊織なら、きっとやってくれる。」


 「アハハ、律ってば本当にどうかしてるね。」


 少し俯いてから伊織は律の目を見て覚悟を決めた。


 「わかった、その時は姉として。」


 「いえ、時田伊織として…」


 「私が責任を持って、あなたを殺すから。」


 それを聞いた律は安心したような表情をして感謝を伝えた。


 「ありがとう、姉さん。」


 


 


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