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ミスタートイトロッコ  作者: 滝翔
チャプター5 仕合わせ
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第53話 順風満帆


6月11日 某病院


四階でエレベーターを降りれば とある一室から賑わいの声がする

共同の大部屋の角 テーブルの上には花束や果物などの見舞い品で溢れ返り

ベッドの上で点滴を受けて貰っている人物が主役のようだ


「良かったわねぇ清太 建築途中の足場から落下したって聞いた時はもう心配で……」


「あぁ……」


怪我の後遺症か 患者である清太は上手く話せなかった

初老の母親が隣で椅子に座り その周りを沢山の友人が囲んでいた


「清太ってば心配したわ…… 無事で本当に良かった……」


「ホントに良く生きてられたよなぁ…… 佐藤との結婚前に四階から落ちるとか不運な奴だぜぇ」



「あぁ…… ハハハ……」



恋人らしき佐藤が反対側より手を握ってくれている

挙式を控えていた清太にとって 友人一同が揃うのはフライングでもあった


「でもまぁこれ以上悪い事なんて起きないでしょうし…… 助かったのも含めて奇跡よねぇ

どうかこのまま式も終えて 新しい家庭を築けたら全部チャラよね!!」


「「「「「 アハハハ!!!! 」」」」」


母親の明るい話は病室の外まで響き渡る

周りに座る病人や担当の看護師も特に注意もせず

誰も傷付かない空気がその一室にはあった


「じゃぁ私は着替え持って来ただけだから帰るわね」


「俺達も帰るぜ 次集まるときは結婚式でだな!!」


ゾロゾロと列を作って病室を出て行く母親と友人達

残った恋人の佐藤は清太にタブレットを渡した


「院内の先生達や看護師さん達とのやり取りに使ってね!」


「あ…… あぁ……」


清太はさっそく文字を打ち込む


『ありがとう!! 結婚式までには間に合わせるから……』


「ゆっくり休んでね…… あまり先延ばしになると結婚式延期になるからね?」


「っ??」


「私妊婦さんよ? この歳だし何が起こるか分からないでしょ?

だから治りが遅すぎた場合 出産して子供がある程度育ってからじゃないと大変よ?」


『全力で治す!!』


「……うん じゃぁね!! 午後からまだ仕事があるから!!」


佐藤も出て行けば 静かな病室へと戻ってしまった


ーー何やってんだろうなぁ俺…… 運が悪いぜ……

でも…… 見舞いに来てくれる奴等がいるだけ幸せもんだ

僥倖僥倖…… 持つべき日常は俺に全て揃ってある


一方で反対側のベッドはカーテンが閉め切られていた

外を見ながらイヤフォンで音楽を聴いている中年


ーーやっといなくなったかぁ…… チッ……

あぁいうのが数週間続くと思ったらどうにかなりそうだぜぇ


「椛島さぁん!! 血圧図らせて貰いまぁす」


「中嶋ちゃぁ~~ん♪ 今日も別嬪さんだねぇ~~

中嶋ちゃん優しいし俺が退院したらデートしてくれねぇかなぁ~~?」


「そういうの困りますぅ…… ふざけてないで腕出して下さい」


若い看護師に言い寄る中年男性

清太はカーテンを閉めていた為か 素直な表情でほくそ笑んでいた

それはけして 今読んでいる漫画に反応している訳ではない


ーーあぁいう大人にはなりたくねぇなぁ まぁもうならねぇか ハハ……!!




深夜 どの病室も灯りが消える頃

ふと清太は息苦しさを覚えて目を覚ました


「んん…… んんん~~!!!!」


「こんばんわ…… 新垣清太さん……

俺は四ノ海泉太郎って名前のもんです」


「んん?!!!」


目が慣れれば 周囲には複数の男が

自分を見れば紐でギブスの無い手足を縛られ

口にはガムテープが密着している

前方に立つ建守が 一枚の紙を取り出して清太を紹介し始めた


「新垣清太 35歳 先日婚姻届を役所に提出して既婚者

現在建築会社に勤務 資格を揃えて重機にも乗れ 近々出世も控えているとか

身辺情報によれば 人柄も良く 子供が大好き 運動も出来て 勉強は人並み

絵に描いた好青年で未来は明るい…… だそうです」


「んんっ……」


「出身高校は下川中央高等学校 間違いないですね?」


「うっうっ!!」


首を縦に振る清太


「当時同級生だった椎野歌留多しいのかるたさんはご存知ですか?」


「うっ……? うぅ……」


清太は視線をズラした すると泉太郎は彼の髪の毛を引っ張り 無理矢理顔を上げさせる


「今日はサプライズでぇ~~す 貴方のご友人 椎野君が見舞いに来ましたぁ~~!!」


常に明るい廊下からのご登場 清太を睨みながら入室する椎野

それを見た清太は顔を真っ青にさせた


「顔色が優れねぇじゃねぇか清太さん 何か嫌な思い出でも?」


「うぅっ~~!!!! うぅ~~!!!!」


「じゃぁ清太さんの自己紹介の続きを 建守君お願いしまぁすっ!!」



「新垣清太は当時 友人にウケを狙う為

椎野さんのズボンを脱がし 彼の…… 言っていいんですね?

彼の尻の穴に箒の棒をぶっさしたそうですね?

激痛を訴えていた彼に 清太さんはこう言ったそうです

〝こいつマゾでホモだから痛がってるフリして本当は感じてんだよ〟と……

間違いないですね?」



清太は必死に何かを訴えていた

泉太郎はガムテープを取って上げる


「わるっ…… 悪かった椎野ぉ……!!」


声が出る度に喉が詰まる清太だったが

これから何をされるか分からない彼は一生懸命に声を発する


「……今更じゃねぇか新垣」


「おれっ…… 俺はお前も友人として今も大切に思っている……」


「ハッ…… の割には結婚式の招待状 送られて来て無いんだが?」


「っ……」



「……さぁ!! 久し振りの旧友同士 積もる思いを曝け出し合ったところで!!」



泉太郎は行動に移す

すると清太は周りの迷惑も考えない唸り声を出し始めた


「うぅぅぅぅぅ!!!! うぅぅぅぅぅ!!!! 誰かぁ……」


周りにも病人が三人もいる しかし誰一人起き上がる気配はなかった

続いて清太は顔を動かし 頭の脇に置いてあるナースコールに頭突きする

スイッチが入り 赤いランプが点灯して一安心



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