第111話 起死回生
フレバーと泉太郎の口論を余所に芽神は 一冊の記事を安斎に見せた
「『悲劇!! ガップリン大火災の謎』?」
「前に言ったよね? 私がバランタイン公国の研究所に行ったって話」
「あぁ俺達が小五の時だったよな? ……まさかこの近くにあるのか?」
「……ちょっと待って」
芽神が恐る恐る玄関に近付くと 何故か再び閉め切られているドアに違和感を感じた
「私達が来た時は開いてたのに……」
彼女は窓の外を見ると なんと玄関の外にはリュディガーがいた
「何してるのアイツ?」
ふとフレバーは周囲を見渡す 台所の窓 渡り廊下の窓
家の至る窓が板で張り巡らされて釘を打たれていた
「ママンもパパンもカスパル兄さんも死んでしまう……
お前ら東洋人は本当に災いを呼ぶ悪魔だったんだな……」
「ちょっと何する気?!」
「……こうするんだよ?」
周囲から油の臭いが リュディガーがマッチで点火すれば
炎が家の周りを駆け巡り あっという間に退路が断たれた
「マジで着火させやがったあの野郎…… どうする安斎?」
「取り敢えず二階へ行こう」
階段を登ろうとする安斎 しかし最後の段差を駆け上がった瞬間
その身体を吹き飛ばす勢いの爆風が発生した 台所のテーブルを壊す様に落下する安斎
駆け付けた芽神は心配して彼の身体を起き上がらせる
「賢也君!!」
周囲は煙に包まれようとしていた
「おい泉太郎って言ったな? 一緒に壁をぶち破るぞ?」
「一か八か? 顰蹙は治らねぇがやってやるよ!!」
タイミングを合わせて渡り廊下の壁に突進する二人
さすがに偉丈夫だけあって外への道はこじ開けられた
しかし火の壁は勢いを増し 尚且つリュディガーはあろうことか
砕けた壁の周りに灯油をバラ撒いているではないか
「あのガキ……」
「ゲホゲッホォ……!! どうするフレバー?」
「っ……」
台所に戻るフレバー 芽神に抱き寄せられている安斎の全身は黒焦げ状態だった
そこへ泉太郎が提案を持ち掛ける
「地下室はどうだ? アンタらはそこから脱出して来たんだろ?」
「考えたが塞がれているだろうな 判断を誤ればこの階は煙と炎で覆われ
俺達は地下でただ死を待つのみになってしまう」
「じゃぁどうする?」
「……二手に分れて脱出できる壁をぶち壊そう」
そうしようと行動に移すがふと外では奇声が聞こえた
リュディガーが狂喜を振り撒きながら 至るところに灯油をぶっ掛けて走ってるではないか
そして悪夢は終わらない
泉太郎の背後より大きく開けられた口は一瞬にしてその肉を食い千切る
「うぁぁぁ!!!!」
肩の少しばかりを持って行かれた泉太郎はその場に倒れ込んだ
現れたのは父親のブルーノ 何と彼はまだ生きていた
「全てを奪う…… 愚か者共よ…… その血肉…… 神に返上しろ……」
「テメェ生きてやがったか……」
包丁を取り出すもはや怪人 芽神は安斎を引き摺って距離を取る
「傷は浅い…… 止血してろ泉太郎」
「あ?!」
フレバーとブルーノが対立する
「お前達の肉という肉を全て…… 俺の口の中に放り込んでやる……」
「時間がねぇんだそれに…… よくも俺の安斎をあんな目に遭わせたな……
食人だけじゃ飽き足らず 平気で人を傷付けるとか正気じゃねぇ」
「正気じゃねぇのは日本人だ 俺達からどれだけの物を奪ったんだぁ?」
振り回すブルーノに椅子を盾にして迎え撃つフレバー
ナイフを椅子に当てるが敵もまた豪腕 刺されば抜けないわけでもなく
しかし壁を作れば相手の攻撃パターンも制限され 隙を見てナイフを蹴り飛ばした
「うらぁぁぁぁ!!!!」
「おぉぉぉぉぉ!!!!」
殴る蹴る まさに双方重量級
煙で視界が満足いかない状況下
互いの攻撃を受け止める事のみに徹し
それは相手の立ち位置を常に把握する為に他ならない
遠くで芽神と泉太郎は布を押さえて脱出方法を模索していた
「並大抵じゃねぇなぁやっぱ継承戦はよぉ……
イレギュラーがイレギュラーを呼ぶ事態だぜ」
「継承戦のルールに死亡確認があるのが厄介よね
でなきゃ態々狂ってる森に出向く理由も無かったわ」
「ハァハァ…… おいお前ら……」
黒ずんだ口元から声が発された
「賢也君…… 良かった……」
「ゲホッ! ゲホッ! ……一つだけ策がある」
「えっ……?」
フレバーとブルーノが闘う中
何とか起き上がる安斎は近くに転がっていたショットガンの弾数を確認する
加えて死んでいるカスパルの胸元も調べ 今ある弾数が20発弱だと分かった
「どうするつもりだ安斎?」
「ハァハァ…… 説明してる暇は無い…… 準備しとけ泉太郎」
「はぁ??」
すると装填確認した安斎は壁目掛けて発砲を始めた 家の壁は年季と延焼により脆くなっており
散弾する弾だけなら容易に貫通する しかしショットガンの反動は安斎の身体に負担を掛けた
「くっ……」
「何をしようとしているの賢也君?」
「……大丈夫だ」
次々と引き金を引き 装填しては繰り返す
そのうち泉太郎にも理解が及び 軽くストレッチしていた
「成程な」
間隔を開けて縦に二本の線を作るように打ち込まれた銃弾
グラグラと音がする周りの壁から 逸脱した一枚の壁目掛けて泉太郎はタックルする
そのまま前に押し倒される壁は火の上に出来た通路となった
「今だ……」
芽神は安斎を引き摺って家の外へ
泉太郎はフレバーの方を見やるが視界は傾く
フレバーはブルーノに勝利し そのまま泉太郎を担いで家の外へと飛び出した
「ハァハァ…… マジか…… 生きてる」
脱出に成功した四人はその場に寝転がる
泉太郎だけは周囲の注意を怠らない リュディガーがまだそこら辺に潜んでいるかもしれないからだ




