第97話 新たな門出
場の空気が熱風を巻き起こす頃 大声に反応するボディーガード達が乱入してくる
春義の手の平が彼等に向けられれば 安斎達に危害は加えられなかった
「お前の言い分はよく分かる安斎…… うちの愚息が変なもんを拾って来たなぁ」
「っ…… 返答がまだだぞ春義ぃ!!!!」
「待てや安斎ちゃん!!」
前のめりになる安斎の身体を岳斗が背後から掴みかかる
「今日はもう撤退しようやぁ」
「何言ってんだ岳斗!! 俺は妻夫木や日野を助ける為に海外まで来たんだぞ?!」
「その二人が今いる場所は四ノ海やろ?! 二大財閥の上下関係はほぼ並行に等しい
ここで親父を怒らせてもぎょうさん敵作るだけやでぇ?!」
「チッ……!!」
岳斗の腕を振りほどき 頭を掻きながら安斎は建物の外へと出て行ってしまった
「ワシらも暫くこの国におる 行動も自由にさせて貰うでの親父」
「イカれた狂犬が狂犬の手綱を握るか…… 笑えるな」
「……ほんなら失礼」
岳斗の後ろを柴塚達も付いて行く
外に出れば既に西渕が車を停めて待機している
その流れで五人は近場のレストランに向かった
定食屋レベルの家庭料理が出されるイタリアンな飲食店だ
「何でバランタインまで来てイタリア料理やねん……」
「よくサイゼとか行ってますからね 何だか落ち着くんですよ ドリンクバーあります?」
「ファミレスちゃうねんから……!!」
「しかしメニュー表見るだけで気が滅入ってしまいますね 目に入る数字全部高い」
「ワシの奢りやから気にせんでいい んで安斎ちゃんはいつまでふて腐れとんねん」
「所長は一度機嫌が悪くなるとテコでも動きませんから放置が一番です
それよりフレバーさんには馴染みある料理でつまらなかったですかね?」
「そんなことは無ぇぜ? 日本にはかれこれ12年くらいいるからなぁ……
懐かしの味を噛み締めている あぁでもサイゼは行ってたからそんなエモくもねぇな」
頼んだのはディアボラ風ハンバーグにムール貝のガーリック焼き
ミネストローネにコーヒーゼリーとジェラートという
外国まで来て変わり映えしない夕飯メニューとなってしまった
「ん~~♪ やっぱり味は現地の味って感じですね~~♪」
「そらようござんした…… まったくワシのメンツも考えてくれやぁ
せっかく初日から豪勢に振る舞うプランを立てとんのに」
「……なぁ岳斗」
ここで少し機嫌が治りつつある安斎が話し掛けた
「お前の家はどうなってんだ?
俺達があの屋敷から入って一度もお前の姪の名前が出て来なかったぞ?」
「暗黙の了解やな~~ あそこで蕾ちゃんの名前が出て来んということはや
四ノ海の方に絶対おるっちゅうことで確定や
計画進行中ということもあって 無理に双方突っつき合いは無しっちゅう意向やろうな」
「人質説は確定となれば…… 明日から四ノ海の連中が滞在するエリアに行かねーとな」
「ここリトルジャポニスムの反対側【カイトヨスエリア】やな
せやけど今日明日の侵入は不可能やで? 警備は勿論やが厳重
そこで二人には拠点を建てて貰う」
「拠点だぁ?!」
「名付けて〝トアル探偵事務所バランタイン支店〟やぁ!!」
「事務所なんて構えてる暇なんてねぇだろぉ?
俺達の目的のほとんどは そのカイトヨスエリアにあるのは分かってんだ」
「やけん侵入は厳しい言うとろうがぁ……
財閥の警備は舐めたらアカンでぇ? 何が飛び出すか分かったもんやない
だから自分達から攻めるよりもおびき出すんや」
「おびき出す?」
「四ノ海泉太郎を覚えとやろ? 今この国に奴の様な継承権を持つ妾の子が十人
エリアの一箇所に留まらず方々に居住してる ……何してると思う?」
「…………」
「継承権は一つ つまり世継ぎは最終的に一人に絞らなアカン
なんで奴等がやってるのはストック同士の潰し合い
殺す者・脅す者・数減らしを第一と考え手を組む者・ひ弱故に隠れて過ごしてる者
簡単に言ってバトルロワイアルやな」
「……バランタインの人達もいい迷惑だな」
ビールを飲む安斎は周囲の客やスタッフを見るなり溜息を吐いていた
「財団側からすればこの国が混乱に陥るのは願ったり叶ったりなんやろうなぁ……
そこに乗じて超小規模国家を転覆させるかもしれんのぉ」
「お前の親父さんが言っていた爆弾抱えて突撃はあくまで予備の計画だろ?」
「何でやフレバー?」
「仕掛けた側を叩くのは世界共通だ 事を成し終えた後を考えればやはり殺しはマズい
非核三原則だの平和主義を掲げる日本は…… 日本の政府がゴーサイン出すとは思えん
世界情勢が揺らいでいる今だからこそ慎重にならざるを得ないのに お宅の国は馬鹿かってなるぞ?」
「……確かになぁ」
「そもそもの話に戻るんだが 四季園一派と四ノ海グループはアメリカに弱みでも握られてるのか?
いくらアメリカからの頼みだからって隣で戦争してる様な国に華麗なる一族が総出で入国って……
富裕層のイメージは偏ってるかもしれねぇがどうも腑に落ちねぇ……」
「ワシは親父ならやりかねんと思うとるがのぉ…… 戦中派の生き残りみたいな親父やし
積み上げた地位や財産にしがみつく様な男やないと断言出来る 相手側の四ノ海額蔵は知らんがな?」
「……俺の考えすぎか」
「まぁともかくや!! テナントやら何やらの下準備はこっちで用意しとる!!
明日から探偵として三人のご活躍を期待しまして…… 再び乾杯やでぇ!!!!」
「「「 三人?? 」」」




