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(二)-8
そもそも僕はなんでピアノを続けてきたのだろうか。最初は弾くのが楽しかった。そして友達がいるのが楽しかった。しかしそれもママに練習を強制させられてだんだん辛くなってきた。衛護も綾音も詩織もコンクールで受賞するたびに少しずつ遠くへ行ってしまい、僕は取り残されてしまう気がした。それはまるで、ピアノとピアノの世界が僕にこっちの世界には来るなと拒絶しているような気がした。
彼らも当初は僕のことを励ましてくれた。「今回は惜しかったな」「練習続けていれば、入賞できるようになるよ」「ヒロ君だっていい線いってたと思うよ」と言ってくれていた。
(続く)