前へ目次 次へ 19/30 (三)-2 「あんた、今度こそ絶対に金賞取りなさいよ」 寝ぼけ声ではなかった。きっと僕に何か言いたいことがあり、ウトウトしつつも眠気を押さえてこの時を待っていたのだろう。 「あんたはピアニストにならなきゃいけないの」 何を勝手なことを。僕は生まれて一度もそんなこと望んだことないのに。 「あんたは私の希望なの。私はね、ピアニストになりたかったのよ」 これで何度目だろう。酔っているとよくそう言っていた。だったら何なのだ。 (続く)