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他人(ヒト)の身体で、勝手に結婚するってのはアリですか!? 【10】

 とりあえずは。

 セフィア姫になりきって、彼女じゃないと言われるのを避けることと、元に戻るための方法を誰にも気づかれずにさがすこと。

 この二つが、いちばん大事なこととなった(いちばんが二つあることはツッコまない)。

 バレたらマズい。9日後までに方法を見つける。

 でないと…。

 バレたら殺されるかもしれないし、帰り方を見つけないと、他人の身体で結婚、そして、あれだよ。夫婦の営みってやつ!? あれをしなくちゃいけなくなる。

 出来れば、この状態を理解して助けてくれる人物を見つけられたらいいんだけど。

 いるのかな。そういう頭のやわらか~い人。

 なんかね。姫さまのフリしながら見てると、そういう人、いなさそうなんだよね。

 世界観っていうのかさ。そういうのが『ベルばら』か、そのあたりのような空気のままで、アンタたち、SFを知らないでしょ!? って顔してるんだよね。あ、SFはロボットとかがドカンドカーンってやるやつじゃなくって、「少し(S)不思議(F)」ってやつね。藤子不二雄が言ってたやつ。タイムトラベルとか、瞬間移動とか、そういうのに対しても「!?」ってかんじで理解されなさそうだし。きっと、ドラえもんは青いタヌキ扱いだ。

 日々お世話してくれる侍女たちも、お世話係として姫の輿入れについてきたオバさん、アンナさん(侍女との会話から名前と立場を推察した)も、入れ替わりを理解しそうなほど、頭やわらかそうじゃないし。

 う~ん。

 どうしたものかな。

 私が、こんだけ悩んでいるのに、周囲は無情にも結婚式の準備を進めてく。

 今日なんて、式で着るドレスの最終チェックされたし。わざわざ着付けて、サイズとか狂いがないか確認するの。

 長い時間、生きたマネキンにされて、正直疲れた。

 針を持った人たちに囲まれて、バンザイしたり、下ろしたり。仮止めなのかプスプスとまち針を刺されると、刺さりそうで怖くてうかつに動けない。

 その上、そのドレスの確認は、一着ではすまない。

 結婚式のときのもの、謁見のときのもの、披露宴のときのもの。お色直し。翌朝の国王陛下への拝謁のときのもの、エトセトラ、エトセトラ…。

 私しゃ、リカちゃん人形かーいっ!! ってツッコミたくなるほど着替えさせられた。いや、リカちゃんでもここまで着替えはしない。ふつう、そこまでリカちゃんのドレス、持ってないもんね。

 そして、とどめに初夜用のネグリジェまで採寸された。

 うわー。初夜用だって。生々しい。

 極上の絹で出来た、白いネグリジェ。

 軽く前を紐で結い合わせただけのもので、紐さえほどけば、簡単にはだけてスルッと、サラッと脱げそう。

 上からを脱がすのが面倒なら、下からたくし上げて、そういうことも出来そうな、そういう構造。

 「ああ、およし下さいませ」「よいではないか、よいではないか♡」「あ~れ~」クルクルクル…。

 なんか、違うのが想像できた。王子は、スケベ悪代官か!?

 つまり、これは、王子とそういうことをするためのもんだもん。王子の脱がせやすいように、そういうことのやりやすいように出来てるのが当然だよね。

 …これを着るようになるまでに、なんとか元に戻りたい。

 いや、戻らねば。


 そう決意したのに、戻る方法なんて見つからず、時は無情に過ぎていく。

 

 そして。

 とうとう結婚式前日となってしまった。

 お風呂でさんざん身体を磨き上げられ、髪をくしけずられ、最後の独り寝の夜を迎えた。

 戻る方法はまだ見つからない。協力者もまだいない。

 どうしよう。

 ワンチャン、このまま寝たら、元に戻るかもしれないけど、それをするのはちょっとリスクが高い。

 もし、万が一戻れなかったら、即王子と結婚コースだよ。

 パパパパーン、パパパパーン。パパパパッ、パパパパッ、パパパパッ、パパパパッ、パーンパーパパラーラーラー、パーラーラララ…。

 結婚行進曲が高らかに鳴り響く。

 マズい、マズい。

 寝るにしても、戻る方法を試すにしても、ここでないどこかのほうがいい。

 って、どこよ。

 …逃げよう。

 とりあえず、ご城下、街にでも紛れ込もう。そこで寝てみる。それで、元に戻ればそれでよし、戻らなかったら…。そのままトンズラ。戻れる方法を探し当てるまで、国中を回ってみよう。誰か戻る方法を知っているかもしれないし。

 そうしよう。

 このままじゃ、本当にマズいから。

 幸い、というのか、今夜は明日の結婚式の準備で、みんな忙しい。

 寝室におさまった私のことなんて関心は薄いはずだ。

 明日、アンナさんが起こしに来るまでが、最後の一人の時間だし。

 そうとなれば…。

 さっそく、寝室に面したバルコニーにそっと出てみる。

 ここは2階。

 すこーし地面が遠いけど、なんとかならない高さじゃない。外に広がるのは、この間散策した庭園。取り囲むように建てられた王宮に比べて少し暗くて、人はいなさそう。

 うん、いない。

 よし。

 部屋に戻って、なにかロープ代わりになりそうなものを探す。

 目についたのは、デカいベッドにかけられたシーツ。

 こういうのって、よく脱出モノで使われるような~なんて思いながら、私もテッパン展開に従う。

 実際シーツは、私の身体を支えられそうなほど、頑丈なロープ代わりのアイテムになりそうだった。

 それを、バルコニーの柱にくくりつけて、下に垂らす。

 地面には少し足りなかったけど、あのぐらいなら、私の運動神経ならなんとかなる。

 裸足になって、脱いだ靴は腰に紐でくくっておく。降りるときは邪魔な靴だけど、後で必要になるもんね。

 「元に戻ったら帰ってきます」なんてメモでも残そうかなって考えたけど、こっちの世界の文字を知らないし、混乱させるだけなので止めておいた。残されたシーツを見れば、なんとなく姫さまがどうしたかってのは伝わるだろうし。

 ゴメンナサイ。

 心のなかでそう呟いて、シーツに手をかける。

 手には、部屋で見つけたハンカチ。ロープとかで垂直降下するとき、素手でやると摩擦で手のひらの皮がズルむけちゃうのよね。以前TVでそんなことやってたのを思い出す。

 このキレイなお手々がそんなことになっちゃダメでしょ。痛いし。

 シーツの即席ロープは、ちょっと苦労したものの、私の身体を地面に運んでくれた。

 最後は軽く飛んで、着地成功。

 よしよし。

 辺りに人の気配がないことを、もう一度確認してから動き出す。

 バラの茂みに身体を隠しながら、少しづつ移動していく。 

 幸い、というのか、月は雲に隠れている。

 時は我に味方した!!

 なんてカッコウをつけながら。

 そーっと。そーっと。

 庭園を抜け、次の出口、逃げ道を探す。どこか、人の少なそうな、それでもって、逃げ出しやすそうなところってどこだろう…。

 

 「おや…!?」


 不意に背後から声をかけられた。

 心臓が、肋骨を突き破りそうなほど跳ね上がる。背筋に電気が走る。

 「こんな夜更けに…、セフィア姫!?」

 ギギギギギッと音がしそうなほどぎこちなく、首を振り向かせる。

 そこにいたのは。

 聞き違いでなければ、見間違いでなければ。

 雲間から月が顔を出し、薄明かりに照らされたバラを背景に、あの王子が立っていた。

 「アナタも、眠れないのですか!?」

 爽やかに、極上の笑顔をむけられる。

 …万事急須、じゃない、休す。

 絶体絶命、大ピンチ。

 ブクマをつけてくださった方、閲覧してくださった方。

 本当にありがとうございます。

 皆さまのおかげで、10話!!までやってくることができました。

 ようやく、主人公格の四人が出そろいましたが…。この先、どんな展開を見せていくのか、実はあんまり考えていません。(←おい)

 もし、「こんなラストになればいいんじゃね!?」的なことがございましたら、是非、ご一報くださいませ。お待ちしてます。オモシロエンディング、バッドエンディングも是非!! (里奈✕セフィアの百合展開とか、セフィア✕夏樹の実は姫はショタだったとか、やっぱり王子はBLエンドとか…)

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