5章ー1 人種の土地
最近は忙しく一話がやっとです。
申し訳ありません(;^ω^)
「わー! 流石ヴィンデル様です!!」
リーナが手を叩きながら声を上げている。
俺達が南洋国家連合を出発してから2週間が経過していた。
シャルティアさん達は外海に出ると役目を終え、既に国に戻っている。
もう少し人魚のシャルティアさんと話してみたかったな・・。
「ありがとうリーナ。でも、もう少し上手くできたかな・・。」
俺はこの船旅の時間を使って今までしていなかった尻尾を動かす練習していた。
うーん。この尻尾、かなり固くて鋭いから予想通り武器にもなるかもしれないな・・。
練習のかいもあって、今では一瞬で魚も捌けるようになったぞ!
「そんなことないですよ! ヴィンデル様がいれば料理がはかどりますね!!」
リーナは先ほど捌いた魚を見ながら笑顔で答える。
それは褒められているんだろうか・・・。
「ヴィンデル様、特訓は上手くいっていますか?」
こちらにジルとユーナがやってきた。
「ああ、かなり尻尾の扱いにも慣れてきたよ。これなら剣の代わりになるかな、俺剣術全くだめだし・・。」
「確かにヴィンデル様は剣術だけならリーナやユーナにも敵いませんからね。」
ジルは笑いながら答える。
「それよりも、今回の船旅では体調は大丈夫なんですね!」
フフフッ・・。それはだな、旅に出る前にマリサに酔い止めの薬を錬成してもらったのさ!
ダメ元で頼んでみたけど、あいつ本当に何でも出来るよな・・。
「それはマリサの薬が効いているからだよ。気分が悪くなってきたら飲むようにしてるからね。」
「それはこれからの船旅が楽になりますね! あ、それよりも先ほどルミリア様から魔通信で連絡がありまして、もうすぐ到着するそうですよ。ほら、かすかにですが陸地も見えて参りました!」
ジルはそう言うと、前方を指さした。
「・・・・あ、本当だ! 確かに陸地が見えるな。」
目を凝らすと陸地がぼんやりと見えてきた。
これからは妖精族の国とはいえ人種が住んでいる土地だ。
アスティロン帝国にも俺の存在を知られるリスクも高くなってくるだろう。気を引き締めないとだな・・。
「よし、皆に準備をするように伝えてくれ。」
優一はジルに伝えると、近づいてくる陸地に様々思いをはせていた。
ガシャンッ!! 船が港に到着し、錨を海中に落とす。
「ここが妖精族の国か・・。」
優一が港に降り立つと眼前には多くの妖精族が行きかう港町があった。
「ヴィンデル様! こちらです!!」
ルミリアが配下の者を連れ、こちらに近づいてくる。
「ルミリアさん。ここはすごい賑わいですね!」
「そうですね。この港町 イリノスは国でも一番の貿易都市ですから。人口だけで言えば、王都を凌ぐかも知れません。」
そうなのか・・。しかし行きかっている人を見ると、褐色の肌の人が多いな・・。
「そうなんですね。それよりもミリアさん。この国には妖精族以外に他の種族も住んでいるんですか?」
ルミリアは街に視線を戻すと優一の質問を理解したのか、笑いながら答える。
「いえ、確かに他の種族も少しはいますが殆どが妖精族ですよ! 街にいる彼らは闇妖精族ですね。」
おぉー! 闇妖精族!!
確かにルミリアさん達よりもグラマラスな女性が多いな!!
あれ、ということは・・。
「ではもしかして上位妖精族もいたりしますか?」
「勿論ですよ! 上位妖精族は数も少ないですが、王族は殆どが上位妖精族です。かく言う私もそうですよ!」
ルミリアは誇らしげな顔で答えた。
え、ルミリアさんって王族だったのか??
どうしよう俺変な事とか言ってないよね???
俺の表情で何を考えているのか分かったのか、ルミリアさんは話を続けた。
「そういえばきちんと自己紹介してませんでしたね! 私はこのミドルアノーグ王国の第一王女 ルミリア・ミドルアノーグと申します。」
お、王女様・・。まじですか!!!
いや、それくらいの人じゃないと魔族と同盟なんて提案出来ないか・・。
普通に考えれば分かるだろ、俺はバカなのか??
「そ、そうだったんですね・・。知らなかったとはいえ、すみませんでした・・・。」
優一が頭を下げると、ルミリアは慌てたように自分も頭を下げた。
「頭を上げてください! こちらこそ早く言わずにすみませんでした!!」
「いえいえ、こちらこそ・・」
「いや、私の方こそ・・」
優一とルミリアの謝罪合戦はジル達が止めるまでしばらくの間続いた。
「では王都まではこの馬車でお送りいたします。」
兵士に案内され、優一達は二台の馬車に分かれて乗り込んでいく。
「よろしくお願いします。」
優一はルミリアとジル、それに闇妖精族の兵士1人と同じ馬車に乗り込んだ。
ゴトンッ! 全員が乗り終えると、馬車はゆっくりと動き出す。
「王都までは我々が護衛いたします。私はイリノス守備隊隊長のハウスと申します。ご用があればなんでもお申し付けください!」
ハウスは右手を左胸に当てると、優一に頭を軽く下げた。
このハウスという闇妖精族、人間で言うと4~50代くらいか・・?
まぁ、闇妖精族なら見た目じゃ年齢は分からないんだけどな。
ルミリアさんでさえ見た目は20歳くらいなのに、実際は1000歳超えてるわけだし・・。
「ありがとうございます。それでここから王都まではどれくらいかかるんですか?」
「そうですね。馬車であれば3~4日といったところでしょうか。途中いくつかの街を通りますので野宿するということはないのでご安心ください。」
ハウスは笑顔で答える。
いや単純に気になっただけで、別にそういう心配をしてる訳ではないんだけどな・・。
「そ、それは安心しました! あはははは!」
「それよりもルミリア様、私も一つ質問してもよろしいでしょうか? 今回のことはアスティロン帝国に気づかれる危険はありませんか? 妖精族がアスティロン帝国と決別するのは決定事項としても、まだ表明をしていないですし魔族が国内にいれば流石に警戒されると思うのですが・・。」
ジルの質問にルミリアは少し考えた後、笑顔で答える。
「確かにその危険がないとは言えません。しかし既に国内に駐留していたアスティロン軍は退去させていますし、この馬車は王族専用の物なので流石のアスティロン帝国でもむやみに手を出すことはないでしょう。」
「それに、アスティロン帝国は既にこちらが敵対しようとしていることは気づいているはずです。国境付近を召喚獣が見張っているのが確認されていますので。」
優一は2人の話を聞き、考え込む。
それって結構まずいんじゃないか?
もし俺達がいることがバレれば、侵攻の口実を与えることになるんじゃ・・・。
ガタンッ! 突然馬車が止まり、大きな揺れが起こった。
「どうした!?」
ハウスは馬車の扉を開き、馬を操っている御者の兵士に尋ねる。
「申し訳ありません! しかし道が岩で塞がれておりまして・・。」
ガサガサッ!! 突然周囲の森の木々が揺れると、フードを被った者達が現れた。
「その中には魔族がいるという知らせが入っている。中を改めさせてもらおうか!!」
フードを被った者の中から一人が馬車の前まで出てくると、ハウスの制止を無視し馬車へと近づいて来る。
声を聴く限り恐らく男性だろう。
優一は窓を覆ている布の隙間から外の様子を眺めていた。
「貴様ら! この馬車は王族専用のものと知ってのことか! このような事、許されると思うなよ。」
ハウスが剣を抜くと、後ろの馬車からも数人の闇妖精族の兵士が現れ、優一達の馬車を守るように周囲に広がった。
「そのような事関係ない。魔族と通じているのなら例え妖精族といえど許されることではない!」
男が右手を上げると周りのフードを被った者達が弓矢を構えた。
くそ、相手は十数人はいるな・・。
これではハウスさん達だけじゃ守り切れない!
「これは完全な規約違反だぞ! 他国の王族に弓を向けるなど・・」
「はははっ! そんなもの目撃者がいなければ問題ない。やれ!!」
シュッ!! 一斉に周りから馬車に向かって矢が放たれる。
「ハウスさん! そこから動かないで下さい!!」
バンッ! マントのフードで顔を隠した優一は勢いよく馬車の扉を開けると、二台の馬車とその周りを水壁で囲い込んだ。
「何だと!!」
敵の放った矢は全て水壁に阻まれ、一つとして優一達に届かない。
ヒュゥゥゥゥ・・・。水壁の効果が切れると、今度は優一の指先から放たれた火の弾丸が正確に敵を一人ずつ倒していった。
「クソ! 全員撤退だ!!」
ドンッ! 指揮を出している男の背後にはいつの間にかハウスが回り込んでおり、首元に一撃を加えると男は意識を失い倒れこんだ。
「隊長がやられた!!」
残っていた敵はちりじりになり森の中へ逃げ込んでいく。
「お前達! 一人も逃がすな!!」
ハウスの命令で闇妖精族の兵士達が敵を追い、森へと入っていった。
「ヴィンデル殿、お見事でした! おかげで命拾い致しました!!」
優一がハウスの元まで行くと、ハウスは笑いながら頭を下げた。
「無事でよかったです。それよりも・・」
「敵の正体ならハウスが捕えているその者のマントを脱がせれば分かるでしょう。」
優一の言葉が終わる前にルミリアがハウスにマントを取るように命じた。
ルミリアさんも同じ考えだったか。
でもこいつらの口ぶりからして・・・。
「これは・・!!」
ハウスが捕えている者のマントを取るとそこには人間がおり、アスティロン帝国の紋章が入った服を着ている兵士の姿があった。




