3章ー4 思惑
すごい・・
これが竜人の戦いか・・。
優一は目の前で繰り広げられている戦いに目を離せないでいた。
戦いが開始すると二人は相手へと一気に詰め寄った。
恐らく身体強化を使用しているのだろう。
しかし発動が全く分からなかった。
シュッ! エイラが剣を振り下ろすがダリアはそれを躱した。
しかしエイラは片手で腰にある短刀を抜くと左下に避けたダリアの顔を切りつける。
「ぐっ!!」
ダリアは寸での所で避けると後ろに跳び、一旦距離をとった。
ツゥゥ・・。ダリアの頬を血が伝う。
ワァァァァ!! 観客から歓声が上がった。
「凄い戦いだな・・。ジル、動きは見えたか?」
「はい、薄っすらとではありますが・・。恐らく魔力感知を使っていないと避けることも難しいでしょうね。」
ジルは驚きの表情で答える。
後ろにいるリーナ達の表情の同様だ。
「あのお二人は竜人の中でも別格ですからね・・。」
優一達の話を聞いていたウーデルトが口を開く。
「今はお二人とも探り合いでしょう。そろそろ本気で戦われるはずです。」
あれでまだ本気じゃないのか・・。
優一は闘技場へと目線を戻した。
エイラは両手に持つ剣を収める。
「ダリアよ、そろそろ本気でいかしてもらうぞ。」
エイラは右手を向けると、そこから電撃を放った。
「ッッ!!」
ダリアも両手を向け地面から土の壁を作り出し電撃を防ぐが、エイラの攻撃が強すぎるのか土の壁は電撃を防ぎきれず、崩れ去る。
「これほどとは・・。」
ダリアは電撃を避けながら呟いた。
「ダリアよ・・。降参するなら今の内だぞ?」
エイラは笑みを浮かべながら尋ねる。
「ご冗談を。まだまだこれからですよ!」
ダリアは笑いながら答えると全身に力を込める。
「うっ!ぐぁぁぁぁ!!」
魔力を高め一気に解放すると、ダリアの姿は巨大な赤い竜の姿へと変化した。
「もうそれを使うとはな。いいだろう!」
エイラも全身に力を込めると美しい白い竜の姿へと変化した。
「ウーデルトさん、こ、これは・・!!」
優一は驚きの声を上げる。
「あれは我々竜人の真の姿です。以前、竜人は竜の末裔だというお話は致しましたよね?」
「魔力を高め、解放すると我々はその姿に戻ることが出来るのです。並々ならぬ鍛錬が必要ですがね・・。」
なるほど、だから同じ竜種の翼竜とも心を通わすことが出来るのか。
「しかし、あの姿はかなりの魔力を消費します。あえてその姿で戦われるということは・・。」
「短期で決着をつけるつもりなのですね・・・。」
優一の言葉にウーデルトは無言で頷いた。
「ダリアよ。この姿になったとしてもお前に勝ち目はないぞ?」
「それはどうでしょうね。」
エイラの言葉にダリアは不敵な笑みを浮かべる。
ダリアのあの余裕はなんだ・・?
誰が見ても私との実力差は明白だ。
一体何を企んでいるんだ。
「・・・ッ!!」
エイラの身体がいきなり動かなくなる。
な、なんだ!!
体が全く動かせない!!
「ダリア!!! 貴様一体なにをした?!」
ハッハッハッ!! エイラの言葉にダリアは笑い声をあげる。
「さあ、なんのことでしょう? ではエイラ様、そろそろ攻撃をさせていただきます!」
ダリアは天高く飛びあがると、そこからエイラに向かい急降下を開始し、その体は瞬くうちに炎に包まれた。
「ぐあっ!!!」
炎の塊と化したダリアの攻撃を体の動かないエイラには防ぐ術がなく、ダリアの牙が首元に深く刺さる。
く、くそ・・、一体どうなっているんだ!
い、意識が薄れていく・・。
エイラは薄れゆく意識の中で何かの光が目に入った。
・・!! あれはなんだ??
あそこはたしかダリアが入場してきた入り口だ。
まさかあの光は・・!!
エイラは力を振り絞りダリアを突き飛ばすと変化を解き、膝を付いた。
ワァァァァ!! 観客の声が一層大きくなる。
「ダリア!! 貴様、いつからあの者達と通じていた?! 先ほど私が動けなくなったのも古の魔法を使ったからだな!!」
「流石はエイラ様。よくぞお気づきで・・。だからこそあなたには生きていてもらっては邪魔なのです」
ダリアも変化を解くとエイラに近づきながら答える。
くそ、こいつは最初から私を殺すつもりだったのか!
決闘は殺すことが目的ではないが、その過程で相手が死んだことがないわけではない。
こいつは決闘という形で私を消し、権力を手にするつもりか・・。
それなら誰もこいつを責めることはないからな・・。
「ぐふっ・・。」
エイラが咳をすると手には血の跡が付く。
牙には毒を仕込んでいたか・・。
用意周到な奴め。
ダリアはエイラの傍まで歩み寄ると、剣に手をかけた。
「ウーデルトさん! どうにかならないんですか!?」
このままにではエイラさんが死んでしまう!!
決闘は相手を殺すことを目的にはしていないが、あのダリアという男はエイラさんを殺そうとしているように見える。
「・・・決闘は神聖なものです。私もエイラ様を助けたいがこればかりは・・。」
ウーデルトは拳を強く握る。
くそ!どうしようもないのか?
しかし先ほどの戦い、途中エイラさんの動きが明らかにおかしかった。
あのように無防備で攻撃を受けるなんて、やっぱりおかしい・・。
でもダリアという男が何かをしたという証拠もない。
どうする・・??
ワァァァァ! 観客の声が上がる。
な、なんだ?!
優一が目線を闘技場に戻すとエイラは地面に倒れていた。
とうとうやったぞ・・・。
前回の国家元首を決める戦いに敗れてからここまで10年という月日が流れた。
だが私はついに!!
ダリアは目の前に倒れるエイラを見下ろすと空高く腕を上げた。
ワァァァァ!!!! 観客からは割れんばかりの声が上がる。
『新しい元首さまの誕生だ!!』
『しかしエイラ様が敗れるなんて・・。』
『これから一体どうなるんだ?』
観客からは様々な声が上がっている。
「エイラ様!!」
エイラの元にウーデルトと優一達が駆け寄る。
「ウーデルト、ヴィンデル殿・・。申し訳ありません。」
エイラは力なく笑う。
これは・・。
エイラさんの傷口が青黒く変色している。
まさか!!
「ダリア様! あなた毒物を使用しましたね!! 決闘において毒物の使用は禁じられているはずです!!」
優一よりも早くウーデルトがダリアに詰め寄った。
「さて、一体何のことかな?」
ハッハッハッ! ダリアはウーデルトの腕を振り払うと大きく笑う。
こいつ・・。ここまでのクソ野郎は生まれてこの方初めてだ。
しかし、今は一刻も早くエイラさんを治療しないと・・。
「ウーデルトさん!まずはエイラさんにこれを!!」
腰のポーチから小瓶を取り出しウーデルトに渡す。
「これは上位回復薬! ありがとうございます!!」
ウーデルトは受け取るとエイラの口にそれを流し込んだ。
「うっ・・。こ、これは・・」
エイラの首元の噛み傷が消えていく。
よかった・・。
「身体が楽になっていく・・。ウーデルトこれは一体なんだ?」
「これは上位回復薬です。ヴィンデル殿がくださったのです。」
ウーデルトの目には涙が浮かんでいる。
「そうか。ヴィンデル殿、真にありがとうございます。」
エイラは頭を下げる。
「頭を上げてください。しかしこの決闘、毒物が使用されたとなると無効になるのでは・・?」
優一の言葉にエイラは少し考えた後、首を左右に振った。
「確かに私自身毒物が使用されたときと同じ症状を自覚しました。しかしヴィンデル殿が下さった上位回復薬によって証拠になる傷口も癒えてしまいました。ダリアがとぼければ追及は出来ないでしょう。」
し、しまった・・。
誰か証人になる人を連れてくるべきだったか?
でもエイラさんはかなり危ない状態だった。
時間を置けば間違いなく死んでいただろう。
「毒物の使用よりも私が気になるのは・・」
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
エイラが何かを話そうとしたとき後方にいたダリアが叫び声を上げた。
な、なんだ???
「もうお前には用済みだ・・」
突如目の前にマントを深く被った老人が姿を現した。
「き、さま!! 裏切った、な・・。」
「私は元々こうすることが目的だったのだ。お主にやったペンダントは何も心眼を欺くためだけではない。負の感情を取り込み、増幅させるものなのだ。」
「ダリア、その点お前ほど適任はおらんかった。感謝するよ。」
老人は小さく笑う。
「くそがぁぁぁぁ!」
ダリアは叫び声を上げると強い光に包まれ、再び竜へとその姿を変えた。
「成功だ!! さあこの国を焼き尽くすのだ!!」
シュッ!! 老人の首がエイラの剣によって地面に落ちる。
「はっはっは‥。今更遅い・・。貴様らは地獄に、落ち、る」
老人の首はそこまでで言うと話さなくなった。
「エイラさん、これは一体・・」
「こいつは500年前の戦いで魔王の側にいつも仕えていた者です。ヴィンデル殿、この者のフードをめくってみてください。」
優一がフードをめくると老人の頭は下半分しかなく、中は空洞だった。
「これは魔道人形です。本体は別の場所でこれを遠隔操作しているのでしょう。それよりも今はここから一刻も早く移動しましょう!」
エイラはダリアに目線を移す。
竜の姿になったダリアは見境なく炎を吐き、至る所を破壊し、闘技場にいた人達は逃げ惑っていた。
これは確かに移動した方がいいな・・。
「そうですね。皆も急いでこの場から離れるんだ!」
「はい!!」
「では皆さん、私の周りに集まってください!!」
その言葉で全員がエイラの元に集まると地面に魔法陣が浮かび上がった。
シュン!! 優一達はエイラの転移魔法によりその場から離れた。




