3章ー3 決闘
「エイラさん!!」
優一は勢いよく扉を開けるとエイラの元に駆け寄っていく。
「ヴィンデル殿?! 一体どうされたのですか??」
息を切らしながら部屋に飛び込んできた優一にエイラは椅子から立ち上がり驚く。
「ハァハァ・・。いや、エイラさんが決闘するとお聞きしまして・・。」
そうなったのなら俺の責任だ・・。
「そのことですか!! ウーデルトから聞いたのでしょうがご心配には及びませんよ。私こう見えてもかなり強いので!」
エイラは笑いながら答える。
やっぱり本当だったのか。
「一体何故このようなことに??」
優一の問いにエイラは椅子に腰かけると何があったのかを話し始めた。
数時間前。
元老院内のある一室に閣僚たちが集まっていた。
「それでは閣僚会議を開始する。」
会議が始まると、エイラは手元にある書類に目を通し始める。
「まず最初は私からお話ししたいことがあります。」
内務を預かるカインが声を上げる。
「現在、将軍の提案によって前回決定した翼竜の繁殖、増産を進めておりますが、そのことが国庫を圧迫しつつあります。すぐに問題になることはありませんがいずれ大きな問題になることは明確です。そこでこの計画の停止を提案したい!」
カインの提案に将軍ダリアが笑い声をあげる。
「ならん!! アムリアの脅威が迫っている今、軍の要でもある翼竜の増産は最重要だ。国内のことしか見ておらん貴様には分からぬことではあると思うが・・。」
くっくっくっ・・。ダリアが笑いながら答える。
「何だと!! 国の防衛なら現状の翼竜の数でも十分に事足りるだろう!翼竜はただでさえ繁殖が難しいのだ。あなたはこの国を軍事国家にでもなさりたいのか!!」
バンッ!! ダリアは机を大きく叩くとカインを睨みつけた。
「ッッ!!」
ダリアは誰もが認める軍人だ。体格、風格どれをとっても他を圧倒するものを持っている。
以前の国家元首を決める時には最後までエイラと競い合っていたことから、実質№2の実力を持っているといってもいい。
カインはその威圧に言葉が出てこなかった。
「二人とも、そこまでにせよ。」
エイラの言葉に二人は舌戦をやめる。
「双方の言い分はそれぞれ分かった。そこで今回の最重要事案として私からも提案がある。ウーデルト、皆に説明せよ。」
「はい。」
エイラの言葉にウーデルトが立ち上がると、優一達同盟への加盟のことを話し始めた。
「・・・ということです。エイラ様はヴィンデル・ロ・ウード殿の考えに共感を持ち、この同盟への参加を考えておられます。」
ウーデルトは説明を終えると椅子に座りなおした。
「そういう訳だ。そこで皆の同意を貰いたいのだ。」
「ヴィンデル殿と言えば確か銀の髪をお持ちなほどの魔力の持ち主だとか・・。500年前の戦いのような轍を踏むようなことにはなりませんか? 我らはそうならぬ為にも外界との接触を長く断ってきたのです。」
エイラの提案に魔道具製造担当のサイレーンが口を開いた。
彼もまた500年前の戦いに参加した竜人の一人である。
「サイレーンか。お前の懸念も最もだが私は直にヴィンデル殿とお会いして信用できる相手と判断した。それに私は、我らもそろそろ外界に門戸を開くべきだと思っている。お前も私の特殊能力は知っているだろう?」
エイラは心眼という特殊能力を持っている。
心眼は相手の言葉の真意を見抜く。
500年前にこの特殊能力があればと何度も思ったものだ・・。
ヴィンデル殿の言葉には裏がなかった。本当に世界平和などという絵空事を作ろうとしているのだ。
サイレーンはしばらく考えた後、口を開いた。
「・・・なるほど。確かにエイラ様の目なら確かでしょうね。分かりました、そういうことであれば私に異論はございません。」
「私にもございません。」
「私にも。」
エイラの言葉を聞きダリア以外の閣僚が声をあげる。
「皆、感謝する。ダリア、お前はどう思うか?」
「・・・。私は反対させて頂く!!」
ダリアの言葉に会議室内が騒めく。
「そのヴィンデル・ロ・ウードという魔物、それだけの魔力を持っているのならあなたの心眼を欺く魔法を持っているとも言えません。それに私が得た情報だと先日ロム王国で起きたアムリアの戦いでは一撃で千ものアムリア兵を消し去ったというではありませんか!」
会議室に再度騒めきが起きる。
「その力が我が国にも向かないとは限らない。負けるとは申しませんがかなりの被害が出るのは明白。あなたはこの国を滅ぼされるおつもりか!!」
ダリアは勢いよく立ち上がるとエイラを指さし叫ぶ。
「ダリア様! 流石にそれは言い過ぎです!それに閣僚の半数以上が賛成しているのです。あなた一人が反対されようとも決定は覆りません。」
ウーデルトが声を上げる。
ダリア様の言っていることは極論すぎる・・。
その可能性もあるだろうがヴィンデル殿と直に会えばそのような方ではないと分かる。
「いや、国家元首であれば決定を覆すこともできる!!」
「確かに法律上であればそうでしょうが、そのようなもの、我が国が建国以来一度も行使されておらず形骸化されている! それに今回の提案はエイラ様自らが・・」
ま、まさか!!
「私はエイラ様に国家元首の座をかけて決闘を申し込む!!」
ダリアはエイラの元まで歩みよると剣を抜き、決闘を申しこんだ。
「・・・ということなのです。」
エイラは優一達に話し終えると立ち上がり、窓から外を眺める。
そんなことが・・。
しかし決闘とはどういったものなんだ。
それにダリアという男、なんで俺のロム王国での戦いのことを知っているんだ?
この国は外界との接触をほとんど避けているならこんなにも早く知りえるものなんだろうか・・。
「話は分かりました。しかしその決闘、断ることは出来ないのですか?」
優一の言葉にエイラは振り返ると答えた。
「それは出来ません。竜人の間では決闘とは古くから神聖なもの。またこの国の国家元首は最も強いからこそ国民の尊敬を集められる存在なのです。」
「それゆえにその座をかけて申し込まれれば、それを断ることは出来ない。国民の信頼を失いますからね。」
なるほど・・。
だがこれは俺のせいといっても過言ではないよな。
何か出来ることはないんだろうか・・。
「心配には及びません! 何も殺し合うわけではなく相手が動けなくなるか、降参をすればそこで終わりです。それに決闘によって国家元首が変わった歴史はほとんどありません。それほどに実力差が存在するものなのですよ!」
エイラは落ち込んでいる優一を元気付けるため、笑いながら話した。
殺し合うわけではないのか、よかった!
でもエイラさんが傷つく可能性があるころには変わりない。
それでも俺には何も・・。
「エイラさん! どうか無事にここに戻ってきてください!俺も精一杯応援しますから!!」
「ヴィンデル殿のお応援があれば百人、いえ千人力ですね!心配なさらないで下さい、必ず勝ってみせますから。」
優一とエイラは言葉を交わすと笑いあった。
─ダリア邸─
「計画通り事が進みそうですな・・。」
ダリアの元にマントで顔を隠した老人が歩み寄る。
「ああ、その通りだ。これもすべて貴様のおかげだ。」
ダリアが笑いながら答える。
「そこであなた様が国家元首の座につかれた暁には・・。」
「分かっている。ヴィンデル・ロ・ウードとの同盟の話は白紙に戻し、貴国へ軍事支援をすると約束しよう。貴様に貰ったこのペンダントのおかげでエイラの心眼も私の計画を見抜けなかったからな・・。その礼だ。」
ダリアは首に付けているペンダントを触りながら答えた。
「それは古い魔法の術式を組み込んだペンダントです。あのような͡小娘如きに見破れるものではございません。」
老人も笑いながら答える。
「ハッハッハッ! そうかそうか!!それと他の貴国からの贈り物も十分満足のいくものであったと貴様の主人にも伝えてくれ。」
ダリアは部屋の一角に山積みにされている金品に目をやる。
「勿論でございます・・。」
「決闘の件もぜひお任せください・・。」
ダリアは老人の言葉に一層大きな笑い声を上げると手に持つ酒を一気に飲み干した。
2週間後。
国中の竜人が闘技場に集まっていた。
「凄い人の数だな・・。」
優一達はウーデルトと共に闘技場の最上部から闘技場を眺めていた。
「国家元首の座をかける決闘ですからね。それにエイラ様は歴代の国家元首の中でも1,2を争う実力者なので国民からも絶大の支持がありますから。」
そうだったのか。
それにこの閉鎖された国においては決闘は一番の娯楽でもあるんだろうな・・。
ワァァァァァ!! 観客の声が大きく上がり二人が闘技場へと入ってきた。
「ダリア。お前が負けようとも私を恨むなよ?」
「エイラ様こそ・・。」
二人は少し笑うと自らの剣を抜き、構える。
観客たちは声を上げるのをやめ、辺りを静寂が包み込んだ。
カンッ!!! 大きな鐘の音と共に二人は同時に相手へと攻撃を開始した。・




