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1章ー1 転生

               

プシュー、ガタンゴトン───




 はー、今日も1日が始まった。毎日この時間の電車に乗り仕事をし早ければ20時、残業があれば0時を普通に回る。まあ、ごく一般的な社畜人生である。


 しかし! 今日は俺が好きなラノベの発売日!何としても早く仕事を切り上げ本屋に直行するのだ!




 「伊川くん、何電車でにやけているんですか?」




 笑顔で声をかけてきたのは我が部署のアイドル、山本彩やまもとあや先輩だ。くそ、今日も可愛い・・・




 「あ、山本先輩!おはようございます。いや、今日楽しみにしていたラノベの発売日なんですよ」




 「え、あれって今日だったの?忘れてた」




 はにかむ先輩。そう、俺と彩先輩はヲタク仲間なのである。




 「そうだと思って本屋に二冊確保しておいてもらえるように頼んでます!」




 「お、さすがは伊川君。優秀な後輩をもって私は鼻がたかいよ」




 はー、この時間がずっと続けばいいのに、、、そんな淡い妄想も会社の最寄り駅の駅名がアナウンスされたことで現実に戻された。




 「さあ、着いたよ。行きましょうか」




 慌てて彩先輩の後から電車を降り、会社までの道を彩先輩と歩いていると何人かの男どもが彩先輩に振り返る。ふっ、羨ましいだろう。この先輩は俺のものだ!と心の中だけで叫んだ。はあ、情けない、、




 「伊川君は、彼女とかいないの?」


 急な質問に声が上ずりそうになる。


 「え、い、いませんよ!絶賛募集中です!」




 「ふふふ、そうなんだ。なら私が立候補しちゃおうかな」




 笑いながら上目使いで彩先輩が言ってきた。あれ?もしかしてこれはいけるのだろうか、、


 ついに24年間守り続けた童貞を捨てる相手が出来るのか?答えに窮していたまさにその時、、




 『危ない!避けろ!!』




 悲鳴にも似た声の方向を見るとこちらに向かって大型トラックが走ってきているのが目に入る。




 「山本先輩!逃げましょう!!」


 しかし彩先輩を見るとその場に座り込み動かない。その眼には恐怖が見て取れた。やばい・・・




 「危ない!!!」




 とっさに彩先輩の腕を掴み、力の限り遠くへと突き飛ばす。


 よし。これで彩先輩は大丈夫、俺も避難を、、、


 バン!! 強い衝撃とともに体に猛烈な痛みが駆け巡る。そして薄れゆく意識。




 (はあ。俺の人生ここで終わるのか、、)


 (でも彩先輩は守れたからいいか。今日のラノベ見たかったなあ) 


 (次はトラックに轢かれても大丈夫な最強な体が欲しいな、ふっ中二病みたいだ、、な・・) 




 ここで俺の意識は途切れた。




 





 ここはどこだ・・・? 

 暗い・・。そうどこまでも暗く広い世界。

  

 はぁ・・。やっぱり俺は死んだのか。

 でも天国ってこんな味気ないところなのか??


 うっ!! なんか眩しいぞ・・。

 う、うわぁぁぁぁぁぁ・・・・・









 い、痛い。何か足にわずかな痛みを感じる。 


 そこで俺の意識は再び覚醒した。ここはどこだ。体を起き上げ辺りを見渡すと眼前に広がるのは都会の見慣れた人工物ではなく限りなく続く森林だった。


 ここはどこだ?彩先輩は無事だったんだろうか?




 「ヴヴヴヴヴ・・」




 なんだ、何か唸り声が聞こえる。声の方向を見るとそこには犬のような生き物がいる。こいつが足を噛んでいたのか。 




 「野良犬か、どうりで足が痛いと、、、」




 その生き物が近づくにつれ恐怖が体を支配する。


 で、でかい!!なんだ?俺の身長より全然大きいじゃないか!!!それによく見ると目が三つある!!




 「バウッ!!」




 そう叫ぶとその生き物は俺に飛びかかってきた。ヤバい・・・今度こそ死んだ。


 しかし、反射的に体を庇おうと前に出した手がそれの右頬にクリーンヒット!!




 「キャインッ」




 その生き物は大きく叫ぶと後ろの大木に吹っ飛んだ。なんだ?そんなに力が入っただろうか、、 


 いや、小学生の時からアニメばかり見てひきこっもていた俺では仮に全力で殴ったとしても俺の手が折れるだろう、、




 「ウ、ウウウ、、」




 くそ、まだ生きているのか!どうする?もう一度攻撃をしてみるか、、


 「く、これほどの力とは!ご無礼致しました。この非礼の詫びとしてあなた様の配下としていただきたい。」




 え、、喋れるの?もう意味分かんない、、。いやここは情報を得るチャンスだ!




 「いえ、こちらこそ申し訳ありません。お詫びと言うのであればここが一体どこなのか教えていただけないでしょうか?」


 これぞ事なかれ主義の真骨頂、へりくだり術。これで気を悪くする人はほとんどいないだろう。人ではないけど、、




 「なんと!私のような配下にもそのように対等の如く話していただけるとは!このワーグ、上位魔狼ハイウルフの神に誓いあなた様に忠誠を誓いましょう!」




 ええ、、なんだこれ。あーもういい、面倒くさいからこのままでいいや。




 「して、先ほどのご質問ですがあなた様はここ魔境にお住まいではないのですか?」


 魔境・・。やはりここは日本ではないのか。確かにこんな奇天烈な生き物はいないが、、、


 「ええ。日本の東京都に住んでいます。」


 ワーグは首を傾げる。


 「二ホン、、という国は聞いたことがありませんがここはリーディア大陸の西、魔族の住まう土地魔境と呼ばれるところでございます。」




 リーディア大陸。やはり日本ではなかったか。それどころかここは地球でもない。


 俺のオタク魂が告げている。そう、俺は異世界に───転生したのだ!





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