序章 異世界転生
大陸歴1203年、リーディア大陸南西ノルド平野において人種で構成される解放同盟に対し魔族が攻撃を開始した。
魔族軍司令部
「報告! 解放同盟軍左翼に対しカッツ将軍率いる第一軍が火弾で攻撃、その後の竜騎兵による突撃により敵軍を突き崩しつつあります!」
「報告! 敵中央本体が我が主力の猛攻により戦線が崩壊、敗走を始めました!」
魔王軍本陣には戦況報告を魔王にするため多くの兵士が出入りしている。
「魔王様、これでこの戦の勝敗は決まりました。これより追撃を開始致したいのですが許可をいただけますでしょうか?」
魔王軍副将であるジルは隣に座する魔王に意見を具申した。彼女は魔王の最古参の側近である夢魔である。
「馬鹿なことをいうなジル。俺たちはもう人種とはむやみに争わないと言っただろ!今回は戦は避けられなかったがそれを忘れるな。」
そう言われ魔王の逆鱗に触れたと感じたジルは慌てて前言を撤回する。
「申し訳ありません!魔王様の考えとは違う作戦を具申した罪、この身をもって償わせていただきます!」
ジルはそう言うと同時に腰にある剣を抜くと自らの首にそれを当てる。
「え、いや、わ、分かればいいんだ!うん、忘れてしまうことは誰にもあることだから今後は気を付けてくれ。」
「は!なんと慈悲深きお言葉!このジル生涯この身を魔王様に捧げさせて頂きます!」
ジルは剣を収めるとその整った顔を歪ませ涙を流しながら膝をつき目の前にいる魔王に頭を下げた。
「分かった。た、頼りにしている。」
(もうやだ、毎回なんなのこいつらの行動、しんどい、、、)
ジルに代表されるように魔族の魔王に対する忠誠心に高さは常軌を逸している。これは魔族にとっては魔力の強さこそが優劣を決める全てであり、魔力の弱いものは強いものに対し服従しなければならないという考えがあるからだ。俺が魔王になってからは考えを改めるように命じたがまだまだ根強く残っている。これも今後の課題だな。
「魔王様、どうかなさいましたか?」
声に気づき考え事をやめ顔を上げるとジルが心配そうにこちらを見つめている。ちくしょう。やっぱりこいつ顔は可愛いな!
「いや、何でもない。そろそろ行こうか。」
そう言って玉座から立ち外へ向かい歩みを始めるとジルは満面の笑みを浮かべ俺の後ろに回りついてくる。何この生き物可愛すぎる。
天幕から外に出るととそこには魔族軍の兵士たちがこちらに向かい喝采の声を上げていた。
『魔王様万歳!魔王ヴィンデル・ロ・ウード様万歳!魔族に栄光あれ!』
その声は俺の姿を見つけると一層大きくなった。そして、この多くの兵士の声を浴びているのがヴィンデル・ロ・ウードこと伊川優一、元日本人24歳、職業は―――魔王である。




