表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄は弟を追いかけた  作者: 流美
PR
9/9

今年の春

 初めて身を包むものに、弟は兄の前で、胸を張ってみた。兄は流すように拍手をし、似合ってる、と一言。

 ふと、開けていた窓から、室内に風が吹き込んだ。

 桃色の花弁もそれに乗り、隅っこに辿り着く。兄弟が、それに気付くことはない。


 そそくさと普段着に着替え始めた弟を目に、兄が不思議そうに問いかけた。弟は、その服を汚すことを恐れたらしかった。

 着替え終えると、兄の手を引いて歩き出した。慌ててリュックを掴んだ兄は、歩きながら背負う。


 兄弟の向かう先は、近くのデパートだった。

 都会よりは小さなところだが、兄弟は幼い頃からよく、ここを利用していた。

 色違いのリュックを背負い、歩く。弟の行き先に、従って着いて行く兄。足を運んだのは、ポップな雑貨屋だった。


 何を買うのかと、兄が尋ねた。ストラップだと、弟は答えた。店内を見回し、欲しいストラップを探している。


「兄ちゃん、見て! これ、可愛い!」


 弟が目を止めたのは、手足の動くクマの小さなぬいぐるみのストラップ。色々な色があり、表情も様々。ひとつひとつ手に取ると、ひとつひとつ兄に聞いた。


 これは? じゃあこれは? これとか好き?


 兄は全ての質問に対して肯定した。弟の楽しそうな表情を見るだけで、満足していたのだった。

 だが弟が途中で、頰を膨らませる。


「兄ちゃん、全部同じ答えー! 兄ちゃんが1番好きな子はどれー!?」


 これには兄も戸惑ったようだった。まさか怒られるとは、と目を丸くしている。

 急いで再び、全てのストラップを見直す。指をさしたのは、黄色のクマだった。他のどのクマよりも笑っている顔が、決め手のようだ。


 そのクマを取った弟は迷わずに隣の、眠っている水色のクマも手にした。

 レジに向かって、財布を取り出す。兄がそれを制止して代わりに財布を出そうとしたが、それを頑なに拒む。


 愛想良い店員さんにレジを済ませてもらうと、店を出た瞬間に弟は兄へと、黄色のクマを渡した。


「俺ね、結構不安なんだ。中学生になるの。だからさ、お守りとしてお揃いのが欲しかったんだ!」


 目を伏せて弱音を吐いたものの、すぐに明るい笑顔を見せた。兄は、ぐっと何かを堪え、そして同じように笑顔を見せた。


「俺が陽太を守るからな!」


 大袈裟というように、面白そうに弟が笑った。スッと瞬きをすると、信頼からくる笑みを浮かべる。


「でも、ありがとう。兄ちゃん」


 わしゃわしゃと、乱雑に頭を撫でる兄。やめてよー、と弟がまた、面白そうに笑う。








 それはとても、微笑ましいものだった。

こちらでオマケ(?)も最後となります。兄弟の生前の姿を見てもらいたく書いたお話です。

視点に悩み、曖昧になってしまった気もしますが、いかがでしょうか。全体的には、昔から考えてた話を書けたので満足しております。


「兄は弟を追いかけた」のあとがきにも書いたため、繰り返しとなりますが…。

ここまで読んで下さったこと、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

お時間がありましたら、レビューや感想、評価のほうをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ