短剣の売上改善を図ります
次の朝、またほとんど味の無いパンと水だけで腹を満たして、アレク武器店に向かった。
給料もらえたら…せめて卵ぐらいのもんは買いたいな。
タンパク質を摂取しないとどうも力が出ない気がする。
長期的な健康のことも考えると、あまり食費を削り続けるのは望ましくない。
そんなことを考えながら店の前に着くと、じいさんが扉の前で品出しをしている。
「おはようございます」
「おお…サコンだったね、今日からよろしく」
「よろしくお願いします。俺、何すればいいですか?」
「そうだなぁ…今日はまぁ、のんびり見学でもかまわんぞ」
…なんだか拍子抜けだな。
一応バリバリ働こうと思ってやってきたんだが。
「はぁ…今は何をやってるんですか?手伝いますよ」
「おおそうか、一応売れ筋の短剣を店の前に並べようと思ってな」
見れば、それなりに切れ味の良さそうな短剣が木箱に入って並べられている。
刃渡りは30センチは無さそうで、いわゆるダガーと呼ばれる諸刃のタイプだろう。
質実剛健な作りで、余計な装飾などはほとんど無い。
悪くない品のようだが、あまり売れないのかあちこちに薄っすらとホコリが積もっていた。
1本50ファジール…5,000円ってところか。
「これを並べればいいんですね、俺やっとくんで」
「おお、じゃあ任せるよ。ワシは店の奥で釣り銭を数えてくるでな」
あ、そういやじいさんの名前聞いていない…まぁ後でいいか。
俺は短剣の並べられた木箱を店の前にきちんと並べることにした。
短剣…誰が買うんだろう。
これでモンスターと戦ったりするには心もとなさそうだ。
とすると、女性や子どもの護身用だろうか。
「うーん、女性がこのホコリだらけの短剣を買うかな…」
特にやることもないので、今日はこの短剣を頑張って売ってみることにする。
そう心に決めた瞬間、次々と頭のなかにアイデアが浮かんできた。
まるで自分の脳味噌じゃないみたいな感覚…これって「スキル」の発動なんだろうか?
何だか少しだけワクワクする。
「まずは短剣をしっかり磨いて…と」
店の奥に戻り、じいさんからボロ布を借り受けてきた。
あ、名前は店と同じで「アレク」というんだそうだ。
20本ほど並べられた短剣を、1つ1つ丁寧に誇りを吹き払い、磨き上げていく。
セットで付いてくる革の鞘も、しっかりと布でこすると本来の光沢を取り戻した。
数十分後、ピカピカの短剣が日光に煌めき、ツヤのある革の鞘と相まってそこそこ上質な感じを醸し出すことに成功した。
そのうちの1本で、これまた店から借り受けてきたリンゴをちょっと剥いてみる。
「うん、悪くない」
するすると滑らかに刃が滑り、林檎の皮が綺麗にむけていく。
やはり品は悪くないようだ。
これで5,000円ぐらいなら、まぁ売り方によっては十分売れる気がする。
とはいえ、治安の良い首都で短剣の出番などそうあるはずもない。
とすれば、戦闘用として売るよりは、日常でも使えるアピールをしてみよう。
「これをサンプルにして…と」
アレクじいさんから許可はもらったので、短剣の1本をサンプルとして自由に触れる用に置いておく。
近くにリンゴも置いておき、見よう見まねの異世界の文字で「試し切りできます」というPOP的なものを作る。
「さて…後はお客さんをつかまえないとな」




