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前世で食べ損ねたラーメンを求めて ~追放された俺は『ラーメンWalker』で異世界を無双する~  作者: マトンさん


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第七十一話 製麺機とリウムの涙

 帰りの馬車は行きよりもずっと穏やかだった。


 吹雪もなく雪は街道の脇に静かに積もっているだけだ。

 窓の外を流れる白い景色をミソラは飽きもせず眺めている。

「ラメルお兄ちゃん。火をぼわーってする人、また見られる?」

「王都にまた行ったらな」

「ほんと?やくそくだよ!」

「はいはい。約束だ」

 ミソラは嬉しそうに笑うと再び窓の外へ顔を向けた。

 隣の席ではショーとユウが王都の串焼きと武具屋の話で盛り上がっている。

 シオは膝の上で帰りがけにセナさんから預かった手紙の束を整理していた。

 俺はといえば小さな帳面を広げていた。

「ラメルさん。それは何ですか?」

「買い物の記録だ。王都を出る前に市場で仕入れたものを書き留めてる」

「ああ……あの買い物ですね」

 シオの目がすっと細くなった。


 ミヤンの北門が見えてきたのは二日目の夕暮れだった。

 見慣れた城壁。見慣れた煙突の煙。

 そして門の前には見慣れた髭面が立っていた。

「おう兄ちゃん!帰ってきたか!」

「ダルクさん!もしかして待っててくれたんですか?」

「ばっか野郎!たまたまだ!たまたま通りかかっただけだ!」

 たまたまにしては手に大きな包みを抱えている。

「……その包みは?」

「お前らが腹減らして帰ってくると思ってな。串焼きを買っておいたんだよ」

「それって完全に待ってましたよね?」

「うるせえ!細けえことは気にすんな!」

 相変わらずの人だ。

「で、どうだ。道具はできたのか?」

「はい!ちゃんと持って帰ってきました」

「持ってって……手ぶらじゃねえか」

「便利な箱がありますから」

「ああ。そうだったな……」

 ダルクさんはがりがりと頭をかいた。

「ま、詳しい話はあとだ。とりあえず店に来い。ロミさんたちが夕飯を用意して待ってるぞ。お前らが今日帰るって聞いて朝から張り切ってたからな!」

 俺たちは顔を見合わせて笑った。

 帰る場所があるというのはいいものだ。


 店の扉を開けると温かい空気と味噌の香りが俺たちを包み込んだ。

「おかえりなさい!」

 ロミさんとナトさん。そして子どもたちが総出で出迎えてくれた。

「ラメルさん!ショー!ユウ!よく帰ってきたねえ!」

「母ちゃん!ただいま!」

「お父さん!お母さん!ただいま!」

 ユウも両親の姿を見つけて嬉しそうに駆け寄った。

「ミソラちゃんも元気そうでよかった!」

「ただいまー!おみやげあるよ!」

 ミソラが背負い袋をがさごそと漁り始める。

 中から出てきたのは王都で買った小さな木彫りの鳥だった。

 ボルとアイ。リルとミルとポロの五人分。

「わあ!とり!」

「かわいい!」

 子どもたちが歓声を上げる。

「これね!おうとのおじちゃんが作ってたの!」

「ありがとうミソラちゃん!」

「えへへ!」

 ミソラは照れくさそうに笑った。


 俺は店内を見回した。

 夕食時で客席はほぼ満席。

 冒険者も街の人もおいしそうにどんぶりへ向かっている。

 厨房からは威勢のいい掛け声が聞こえ、湯切りの音が響いていた。

 俺たちがいない間もこの店はちゃんと動いていたのだ。

 その熱気にふっと肩の力が抜けた。

 ああ。帰ってきたんだな。

「リウムさんは?」

「工房にいるよ。明日の朝にでも顔を出してやっておくれ。あの人ったら製麺機の話を聞いてからずっとそわそわしてるんだから!」

 ロミさんがくすくす笑った。

「仕事中も『ローラーがどうの』『刃の幅がどうの』って独り言ばっかりでねえ」

「ははっ。そんなに楽しみにしてくれてたんですね」

「楽しみすぎて今夜も眠れないんじゃないかね!」

 ……それはちょっと心配だな。


 翌朝。

 まだ薄暗いうちに俺は製麺工房の扉を叩いた。

「……入れ」

 中ではリウムさんが作業台の前に立っていた。

 手にはすでに粉の袋を抱えている。

「……早いですね」

「……眠れなかった」

 リウムさんは短く答えた。

 その目の下にはうっすらと隈がある。

 俺たちが王都へ行っている間も工房を守ってくれていたのだ。

 麺を打ち、店へ運び、鍵つきの部屋で麺の素を調合する。

 それをいつも通りにこなしながら俺が持ち帰るものをずっと気にしていたのだろう。

「リウムさん。約束のものを持ってきました」

「……ああ」

 リウムさんは抱えていた粉袋をそっと作業台へ置いた。

 俺はラーメンボックスを開き製麺機を取り出した。

 作業場の中央に鈍く光る鉄と樫の機械がどすんと据えられる。

「…………」

 リウムさんはゆっくりと機械に歩み寄った。

 何も言わずローラーを見る。

 歯車を見る。

 ネジに触れる。

 ハンドルをそっと握る。

 しばらく時間が止まったようだった。

「……これが」

「はい。製麺機です」

「……見事な仕事だ」

 低く呟いた声がわずかに震えていた。

「ドルガンさんという親方が作ってくれました。頑固だけど腕は確かな人です」

「……ドルガン。名前は聞いたことがある」

「ご存じなんですか?」

「……王都でも指折りの鍛冶職人だと聞く。なるほど。この仕上がりなら納得だ」

 リウムさんは歯車に指を添えハンドルをゆっくり回した。


 ごとり、ごとり。


 二本のローラーが滑らかに回る。

 きしむ音も引っかかりもない。

「……回してもいいのか」

「もちろんです。リウムさんには一番に使ってもらいたかったんですから」

 リウムさんはほんの少しだけ口元を緩めた。

 それはこれまで見たどんな笑顔よりも職人らしい笑みだった。


 まず機械を据える場所を決めた。

 工房の北側。

 窓から光が入る位置に頑丈な台を組む。

 ボルドさんが描いてくれた設置図を参考にリウムさんが職人たちへ指示を出した。

「……もう少し右だ。そうだ。そこで止めろ」

「はい!」

 工房で働く若者たちが動く。

 台の上に製麺機を載せ、水を張った皿で傾きを確かめる。

 最後に台へしっかり固定するとリウムさんはもう一度ハンドルを回した。

 ごとり、ごとり。

「……よし」

 満足そうに頷いた。

「では最初にもう一度捨て生地を通しましょう。まだ完全に汚れが取り切れてませんから」

「……分かった」

 小麦粉と水だけの捨て生地を俺とリウムさんで練る。

 本物の中華麺と違ってかん水は使わない。

 機械の汚れを取るための生地なので食べるつもりはないのだ。

 ローラーへ通して麺帯にする。

 二枚を重ねて複合圧延。間隔を少しずつ狭めて厚みを整える。

 最後に切刃で切る。

 均一な太さの麺がするすると出てきた。

「……これを捨てるのか」

「はい。最初の分は食べません。機械に残った油や汚れを取るためです」

「……もったいないが必要なことか」

 リウムさんは捨て生地の麺を見つめたままぽつりと言った。

「……だが均一だ。驚くほど」

「手打ちとの違いが分かりますか?」

「……手でやれば太さがわずかにずれる。どれだけ気をつけても疲れれば乱れる。だがこれは……」

 リウムさんは切り出された一本を指先でつまんだ。

「……どれも同じ太さだ。俺が頑張って揃えようとしてきたものが、こんなにも簡単に……」

「リウムさんが作る生地があってこその機械ですよ」

「…………」

 リウムさんは黙って麺を見つめていた。

「……俺の仕事は」

 そこで言葉を切った。

 その目がわずかに揺れている。

「……これがあれば誰でも麺を切れる。なら俺が今までやってきた仕事は……どうなるんだ?」

 その声には喜びだけではない何かが混じっていた。

 やはり不安だったのだ。

 そ機械が簡単に再現してしまう。

 職人として複雑な気持ちになるのも無理はない。

 俺は工房の職人たちにも聞こえるようにはっきりと言った。

「リウムさんの仕事はむしろ増えます」

「……増える?」

「麺の素の調合。生地の水分の見極め。季節ごとの配合の調整。茹で加減の確認。そして新しい麺の開発です」

 リウムさんは黙って聞いている。

「機械は決まったことを決まった通りにやるのは得意です。でも小麦粉の状態を見て水を加減したり、その日の湿気に合わせて生地を調整したりするのは人間の仕事です」

「…………」

「それに機械が作れるのはリウムさんが仕込んだ生地の麺だけです。生地が悪ければどれだけ正確に切ってもおいしい麺にはなりません」

 俺は製麺機に手を置いた。

「この機械はリウムさんの仕事を奪うためのものじゃありません。リウムさんがもっとおいしい麺を作るための道具なんです」

 リウムさんの目が大きく開かれた。

「手打ちに費やしていた時間を新しい麺の研究に使ってください。細麺も太麺も。今まで作れなかった麺だって作れるようになるはずです」

 俺は笑って続けた。

「ドルガンさんが刃に命をかけたようにリウムさんは麺に命をかけてください」

 しばらく工房が静まり返った。

 やがてリウムさんは深く息を吐いた。

「…………分かった」

 そして俺の目をまっすぐに見た。

「……俺はまだ麺を作っていていいんだな」

「当たり前じゃないですか! むしろこれからが本番ですよ!」

 リウムさんは俯いた。

「…………ありがとう」

 その声は少しだけ震えていた。


 本番は昼前だった。

 工房の作業場には仲間たちが集まっていた。

 シオ。ショー。ユウ。ミソラ。

 ロミさんとナトさん。

 工房の若い職人たち。

 それからいつの間にか入り込んでいたダルクさんまで。

「ダルクさん。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」

「何を言う!俺は麺のファンだ!立派な関係者だろうが!」

「理屈になってません!」

「理屈より腹だ!」

「……それも理屈になってませんよ?」

 シオが呆れたようにため息をついた。


 するとロミさんがダルクさんの肩をぽんと叩いた。

「はいはい。ダルクさんはこっちです。試食用のラーメンができたら呼んであげますから」

「おっ!試食できるのか!だったら話は早え!」

 ダルクさんは嬉しそうに踵を返した。

「兄ちゃん!うまい麺ができたら真っ先に呼んでくれよ!」

「分かりましたから!大人しく待っててくださいね!」

「おう!任せとけ!」

 そう言ってダルクさんはロミさんに連れられて工房を出ていった。

 ……まったく。ラーメンのことになると本当に子供みたいな人だ。


 ようやく、工房が静かになったところでリウムさんが木灰かん水を使った生地を持ってきた。

 今日の最初の麺は極太だ。

 マシマシラーメンに使う力強い麺である。

「……行くぞ」

 リウムさんは太麺用の切刃ユニットを装着した。

 カチリと留め具が鳴る。

 位置決めの溝にぴたりと収まった。

「……本当に一発で合う」

「ドルガンさんの自慢です」

 まずは生地を二枚の麺帯に伸ばす。

 それを重ねてローラーに通し一枚に圧着する。

 何度か通して厚みを整えたら最後は切り刃だ。

 リウムさんがハンドルを回す。

 するすると黄色い極太麺が下へ伸びてきた。

「……見事だ」

 ナトさんが目を丸くした。

「お父さん……すごいです!」

 ユウが小声で呟く。

「……俺は回してるだけだ」

「でもお父さんが作った生地ですよね?」

「……ああ」

「だったらお父さんの麺です!」

 リウムさんの手が一瞬止まった。

 それから何も言わずに再びハンドルを回し始めた。

 耳の先がほんのり赤くなっている。


 茹で試しはすぐに行った。

 新しく打たれた麺を大鍋に放り込む。

 湯の中でゆらゆらと泳ぎ、七分後に引き上げる。

 どんぶりにスープを注いで麺を入れる。

 山盛りの野菜と厚切りの豚をのせれば完成だ。

 マシマシラーメン。

「……食べてみる」

 リウムさんが最初の一口をすすった。

 工房中が固唾を飲んで見守る。

 ずるずる。

 もぐもぐ。

 長い沈黙。

「…………」

「リウムさん。どうですか?」

「…………同じだ」

「え?」

「……俺が手で打った麺と同じ味がする」

 リウムさんの声が揺れた。

「……いや。それ以上かもしれない。太さが揃っているから茹で上がりにばらつきがない。どの麺を噛んでも同じ歯ごたえだ」

 もう一口すすった。

 今度はゆっくりと噛みしめる。

「……うまい」

 ぽつりと呟いた。

「……本当にうまい」

 その頬を一筋の涙が伝った。

「……すまん」

「リウムさん!?」

「……悔しいのではない」

 リウムさんは袖で目をこすった。

「……嬉しいのだ。俺が作ってきた麺をこれからはもっと大勢に食べてもらえる。それが……こんなに嬉しいとは思わなかった」

 工房の若い職人たちも黙ってその姿を見つめていた。

 毎日粉まみれになって麺を打ってきた人たちだ。

 リウムさんの気持ちが誰よりも分かるのだろう。

 ユウが父親の腕にそっとしがみついた。

「お父さん。かっこいいよ!」

「……やめろ」

「本当にかっこいいよ!僕もお父さんみたいになりたいです!」

 リウムさんは驚いたように息子を見た。

 そして大きな手でユウの頭をくしゃりと撫でた。

「……そうか」

 それだけ言って再び顔を背けた。

 ナトさんは静かに目頭を押さえていた。

 俺もなんだか胸が熱くなった。

 よかった。

 本当にこの機械を作ってもらってよかった。


 そのときリウムさんの体が淡い橙色に光った。

 食事効果だ。

 俺は視界の端に浮かんだ表示を確認した。

『食事効果:リウム 全能力+10%(数時間)』

 ……やっぱり短時間の効果か。

 リウムさんは製麺に携わっているし、今回の麺も自分で仕込んだ。

 それでも仲間たちのような恒久的な上昇にはならないらしい。

 一緒に料理を作ったかどうかだけで決まるわけではないのだろう。

 ラーメンWalkerの効果にはまだ分からないことが多い。

 まあ今はそんなことよりも……。

「リウムさん!もう一杯いきますか?」

「……ああ。頼む」

 リウムさんは涙の残る顔で小さく笑った。


 その夜。

 俺たちは新居の台所に集まっていた。

「では今日の成果を報告します」

 シオが帳面を開いた。

「製麺機は無事に稼働しました。細麺・中太麺・極太麺の三種類すべて試し打ちが完了しています。茹で上がりも良好でした」

「ああ。リウムさんも納得してくれた」

「明日から工房の麺は製麺機で打ちます。リウムさんが生地を仕込み、若い職人さんたちが機械を回す形ですね」

「生産量はどのくらい増えそうだ?」

「まだ試算ですが三倍くらいは期待できそうです。これまで一日かかっていた量を半日ほどで作れる見込みです」

「三倍か……!」

 ショーが目を丸くした。

「じゃあ『くさうまラーメン』の限定三十食も増やせるんじゃないですか?」

「いや。くさうまは麺が増えても増やせないんだ」

 俺は腕を組んだ。

「あれは麺よりスープに時間がかかる。骨を丸一日以上炊いてやっと三十食分だ。麺が三倍になってもスープが追いつかない」

「そっかあ。麺だけ増やしても駄目なんですね」

 ショーが残念そうに肩を落とした。

「その代わりマシマシは麺を打つ手間が一番かかる。極太麺は生地も硬いし量も多い。ここが機械の出番だ」

「じゃあマシマシが増やせるんですか?」

「ああ。一日二十食から五十食を目指そうと思う」

「五十食!?そんなにですか!」

 ユウが驚いたように声を上げた。

「そのぶんもやしも増産だ。暗室の桶を増やして毎日どんどん育てる」

「暗室の桶も倍以上に増やさないといけませんね」

 シオが微笑んだ。

「でも、味噌と醤油と海鮮はもっとたくさん作れそうですね」

「ああ。スープの仕込みも調整しながら少しずつ増やしていこう」

 俺は帳面に新しい項目を書き加えた。

「そして新しい麺にも挑戦できる」

「新しい麺?」

 ショーが首をかしげた。

「ドルガンさんが言ってただろ。平打ち麺や縮れ麺を作る仕組みも考えてやるって」

「あっ!そうでしたね!」

「麺の形が変わると味も変わるんですか?」

 ユウが興味深そうに聞いてきた。

「ああ。スープの絡み方も食感も変わる。平打ち麺ならつるっとした喉越しを楽しめるし、縮れ麺ならスープをよく持ち上げてくれるんだ」

「へえ!同じ材料なのに面白いですね!」

 ユウの目が輝いた。

「まだまだ作りたいラーメンは山ほどあるからな」

 そう言って笑うとシオも嬉しそうに頷いた。

 そのとき。

「ラメルお兄ちゃん……」

 ミソラが眠そうな目をこすりながら声をかけてきた。

「ん?どうした?」

「しおらーめん、いつつくるの?」

「……塩ラーメン?」

 思わず聞き返した。

「うん。ラメルお兄ちゃん、しおらーめんのこと考えてるでしょ?」

「……ミソラ。俺そんなこと言ったか?」

「ううん。でもわかるの」

 ミソラはふわあとあくびをした。


 台所の空気が少しだけ静まる。

 塩ラーメン。

 前世であと三人というところで食べ損ねたあの一杯。

 あの日。

 行列の先にあった限定塩ラーメンを食べることなく俺の人生は終わった。

 そしてこの世界に生まれ変わった。

 醤油も味噌も豚骨もカレーも担々麺もマシマシも。

 たくさんの一杯を作ってきた。

 それでも俺の心の底にはいつもあの塩ラーメンが静かに残っている。

「……ミソラには隠し事ができないな」

 俺は小さく笑った。

「そうだな。そろそろ本気で考えてみよう」

「ほんとう?」

「ああ。製麺機も手に入った。ごま油も酒もある。あとは……」


 俺は雑誌の記憶を辿った。

 ラーメンWalkerのまだ開けないページ。

 そこには塩ラーメンの特集が眠っているはずだ。

 今の俺に読めるのはほんの一部だけだ。

 それでもいつか必ずあのページを開いてみせる。

 そして今度こそ……。

「ラメルおにいちゃん?」

「ああ。何でもない」

 俺はミソラの頭を優しく撫でた。

「楽しみにしててくれ。とびきりうまい塩ラーメンを作ってやるからな」

「うん!たのしみ!」

 ミソラは満面の笑みを浮かべた。

 窓の外には冬の星がきらきらと瞬いている。

 ミヤンの街は静かに夜の帳を下ろしていた。

 工房では今頃リウムさんが完成した製麺機を眺めているかもしれない。

 あの人のことだ。寝る前にもう一度ハンドルを回して確かめていそうだな。

 俺は小さく笑って台所の灯りを消した。

 製麺機が動き出した。

 これまで職人たちが手作業で打ってきた麺を、これからは機械が支えてくれる。

 そして職人たちはもっとおいしい麺を作るために腕を磨いていく。


 銀の耳の食卓のラーメンがまた一歩先へ進んだ。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

今回は王都から帰還し、ついに製麺機がミヤンの工房で動き始めました!

機械によって自分の仕事がなくなるのではないかと不安を抱いたリウム。しかしラメルの言葉と完成した麺の味が職人としての新しい可能性を教えてくれました。

そしてミソラの一言から再び浮かび上がった塩ラーメン。

前世で食べ損ねたあの一杯にラメルはいつ辿り着けるのでしょうか。

次回もお楽しみに!

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