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エピローグ

「フレンとノアの婚約を祝して、乾杯!」


 すっかりフレンの親友となった五人が、青い空に向かってグラスを掲げた。

 中身は全員、ぶどうジュースである。


 夏は過ぎ去り、日の光を凝縮したような黄金の木の葉が、フレンとノアに降り注いでいる。

 時刻は昼過ぎ、公爵家の庭園には、ジャンブルを始めとした茶菓子が並んでいた。


 ごく内輪だけの婚約式に参列しているのは、五人の友人と、元黒鷲の騎士団長だけだ。


 ちなみに、フリッツは今のところ、王太子の座を剝奪されてはいない。代わりに謹慎中で、教育係たちにびしばし躾けられているらしい。


「騎士団長さん。お忙しいなか来てくださって、ありがとうございます」


「なに。お嬢ちゃんとノア殿は、俺の恩人だからな。騎士たちも、喜んで送り出してくれたよ」


 不祥事を起こした白鷺騎士団と黒鷲騎士団は一度解体され、黒鷲の団長が再編した。

 新しい騎士団の名は、新緑騎士団。


 白鷺と黒鷲のように、身分に差をつけるのではなく、騎士たちが一丸となって、王宮と王都を守る組織だ。騎士団の長はもちろん、元黒鷲騎士団長たる彼である。


「騎士団の名前が新緑って、趣味がいいよな」


「今までの悪習を断ち切って、再生する意思を感じるっす」


「団長がつけたんだよね? 緑が好きなの?」


 アンガス、リオン、テオがそれぞれ話す。

 団長は、きまり悪そうに短く刈った頭を掻いた。


「いや、その……。新しい騎士団には、俺を助けてくれた少女の色を取り入れようと思ってだな……」


 マリガは早速、その意味を察したようだ。


「つまり新緑って、フレンの瞳の色を表しているのね?」


「王家と民を守る騎士団の名前の由来が、女の子の瞳の色だなんて。きゅんきゅんするのです!」


 賑やかな来賓たちを、フレンとノアは数歩離れた場所から見守っていた。


「――フレン」


 ふいに、深い声でノアが語りかけてくる。

 はしゃいでいた五人と、恥ずかしそうに苦笑していた団長が、ぴたりと会話をやめた。


「ノアったら、そんなに真剣な顔をして、どうしたの?」


「もしも私が、あなたを悲しませることがあったら、そのときはざまあしてくれますか」


「あら。ノアも悪いことをするの?」


 フレンが尋ねると、ノアはぶんぶんとかぶりを振る。


「決して、そのようなことはしません。でも……。もしも、あなたを傷つけることがあったらと思うと、不安で……。そのときは、私を殺してくれても構いません!」


「死んじゃったら、ざまあできないじゃない!」


 思わず、つっこんだフレンである。

 フリッツのときからそうだが、ノアの考えるざまあは、どうにも内容が重すぎるのだ。

 フレンは、ふっと笑んだ。


「ノアに、ざまあはしないわ。けんかをしたっていいじゃないの。お互い、間違えることがあったら、一緒にやり直しましょう?」


「……はい。フレンとなら、何度でも」


 ノアと視線を交わし、微笑み合う。


「結局、ざまあってなんだったんだ……?」


 アンガスたちの不思議そうな声を聞きながら、フレンとノアは身を寄せ合った。


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