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冴えないおっさん、AIと異世界で国を作る〜魔法社会を科学でひっくり返す〜  作者: れいじ
第3章 アルゴ進化への道

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第3章 アルゴ進化への道 第20話 静かなる崩し

第20話です。


ヴァルディアへ戻り、状況が少しずつ整理されていきます。

そしてここから、ただの探索ではなく、

目的を持った動きが始まります。


物語の流れが少し変わる回になりますので、

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

ヴァルディア外縁の拠点。


ようやく戻った静けさがあった。


吹雪の死地を抜けてきたばかりの空気が、まだ残っている。


疲労は深い。


だが、止まってはいられない。


クロウが小さく息を吐く。


「……やっと落ち着いたな」


リオンは壁にもたれながら笑う。


「ほんとだよ。あのドラゴンども、もう勘弁してほしいぜ」


軽口だった。


だが、その奥には確かな疲れがある。


カイゼルもセリナも何も言わない。


それぞれが、戻ってきた実感と、これからのことを同時に抱えていた。


そのときだった。


空気が、静かに変わる。


誰かが来た。


音はしない。


だが、気配だけで分かる。


ノクスだった。


修一が視線を向ける。


「……久しぶりだな」


ノクス

「ああ」


短い返事。


そのまま無駄なく本題に入る。


「ルーヴェンハイムの状況だ」


その一言で、場の空気が引き締まる。


リオンも壁から背を離す。


クロウの目も細くなる。


ノクスは静かに続けた。


「都市では抗議デモが起きている」


「カプセルの高額取引」


「医療の不正」


一拍。


「そして――コロシアムの件も広まりつつある」


重い沈黙が落ちる。


確実に効いている。


だが、まだ足りない。


クロウが低く言う。


「……完全に火がついたな」


ノクス

「だが」


一拍。


「ルーヴェンハイムは何も語らない」


「黙秘を貫いている」


カイゼルが問う。


「……医療はどうなってるの?」


ノクスはすぐに答えた。


「完全には止まっていない」


「都市外縁の医療拠点――アスクレア」


その言葉に、修一の目がわずかに動く。


そこは、自分が残してきた場所。


助けを求めた人間たち。


雇った補助員。


ぎりぎりで繋いだ流れ。


ノクスは続ける。


「ヴァルディア様の指示だ」


「ヴァルター・ローレンが守ってくれている」


その瞬間、カイゼルの目が揺れた。


ほんの一瞬。


だが確かに。


父の名。


しかも、自分たちの側を守っているという事実。


何かを言いかけて、やめる。


結局、何も言わない。


ノクス

「私も時折様子を見ている」


「崩壊はしていない」


「だが長くはもたない」


修一は静かにうなずく。


当然だ。


拠点一つで、都市全体の歪みを受け止め続けられるはずがない。


ノクスの声がさらに低くなる。


「本題だ」


空気が変わる。


重さが増す。


「ルーヴェンハイムの力」


「闇魔法――洗脳」


リオンが眉をひそめる。


「……洗脳?」


ノクス

「対象は一人」


「だが、その一人を支配すれば」


「組織全体を動かせる」


クロウ

「……厄介だな」


ノクスは続ける。


「裏金」


「人脈」


「地位」


「すべてはそこから築かれた」


一拍。


「当時の大賢者を支配した」


空気が凍る。


セリナが小さく息をのむ。


カイゼルも目を見開く。


修一は静かに言った。


「……それで今の地位か」


ノクス

「ああ」


そして、名を告げる。


「その男の名は――グラディウス」


その名が落ちた瞬間、場の空気がさらに重くなる。


ノクス

「ノースガルドでも最強クラスの魔道士」


「だが今は、ルーヴェンハイムの支配下にある」


クロウが低く言う。


「……それをどうにかしない限り」


修一

「ルーヴェンハイムには届かない」


ノクスはうなずく。


「さらに問題がある」


「上級魔道士が約三十人」


リオン

「……三十かよ」


さすがに顔が引きつる。


ノクス

「多くは金で集められた者たち」


「ヴァルディアからも二人引き抜かれている」


クロウが冷静に結論を出す。


「正面からやれば終わりだな」


誰も否定しない。


数で負けている。


質でも、少なくとも現時点では勝ち切れない。


しかも相手は、ただ強いだけではない。


支配し、抱き込み、利用する。


そういう敵だ。


そのとき。


修一が静かに口を開いた。


「……逆だ」


視線が集まる。


修一は前を見る。


考えは、すでにまとまっていた。


「そいつらを、こっちに引き込む」


リオン

「は?」


クロウは黙ったまま聞いている。


修一は続ける。


「金で動くなら、流れで動く」


「崩れる側にはつかない」


静かな声。


だが確信がある。


クロウの口元がわずかに動く。


「……悪くない」


ノクスも否定しない。


「可能性はある」


修一

「全部じゃなくていい」


「半分でいい」


「それで戦力は崩れる」


一歩、前に出る。


「残るはグラディウスだけだ」


沈黙。


その図は、確かに見える。


真正面から潰すのではない。


内部から揺らす。


ルーヴェンハイムが築いてきた力の形を、逆に利用する。


アルゴの声が響く。


『戦力分析更新』


『勝率上昇』


修一は続ける。


「だが、その前に」


一拍。


「アルゴを強くする」


全員の視線がアルゴへ向く。


白銀の機体は静かに立っていた。


修一

「グラディウスを相手にするなら、今のままじゃ足りない」


アルゴ

『進化の必要性を認識』


一拍。


『最適化プランを再構築します』


静かに。


だが確実に。


その言葉で、空気が変わる。


これは戦いではない。


戦うための準備だ。


積み上げる段階。


崩す順番を決める段階。


セリナが小さく言う。


「……内部から崩して、その後に本体」


修一

「ああ」


「順番を間違えたら終わる」


カイゼルもゆっくりとうなずく。


「……先に周りを剥がすのね」


「そうだ」


リオンが笑う。


「なんか、らしくなってきたな」


クロウが腕を組む。


「まずは信用を揺らす」


「次に金の流れを止める」


「最後に戦力を奪う」


修一

「その先で、グラディウスを切る」


ノクスは壁にもたれたまま、静かに言う。


「ルーヴェンハイムは表向きは強い」


「だが中は、すでに揺れている」


「押すなら今だ」


修一は小さく笑った。


「……やることは決まったな」


誰も反対しない。


もう迷う段階ではない。


ヴァルディア外縁の小さな拠点で、静かに流れが変わる。


力押しではない。


奇襲でもない。


削る。


剥がす。


奪う。


そして最後に、中心を落とす。


修一はアルゴを見た。


ドラゴンの角。


エーテルコア。


集めてきた素材。


全部が繋がる。


「まずは進化だ」


アルゴ

『了解』


『新規構造案を複数提示します』


光が浮かぶ。


設計の輪郭。


強化案。


変形案。


戦闘補助。


機動強化。


新しい可能性が、そこに並ぶ。


リオンがその光景を見て口笛を吹く。


「毎回思うけど、これ見てるとワクワクするな」


クロウも目を細める。


「……素材は十分ある」


セリナが静かに言う。


「じゃあ、次は作る番ですね」


修一はうなずく。


「そうだ」


短く。


だが強い声で。


「順番に崩す」


「まずは内部」


一拍。


「それから――本体だ」


誰も言葉を挟まない。


その場の全員が、その先を見ていた。


ルーヴェンハイム。


グラディウス。


洗脳された力。


買われた魔道士たち。


それら全部を越えるために。


今、自分たちがやるべきことは一つしかない。


運命が、また静かに動き出していた。


第20話を読んでいただきありがとうございます。


今回は情報整理と今後の方針が見えてくる回でした。

ルーヴェンハイムの状況、そしてその裏にある力も少しずつ明らかになってきました。


そして何より、アルゴの進化が今後の鍵になってきます。


次回からは、その準備と新たな動きに入っていきますので、

引き続き楽しんでいただければ嬉しいです

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