第3章 アルゴ進化への道 第20話 静かなる崩し
第20話です。
ヴァルディアへ戻り、状況が少しずつ整理されていきます。
そしてここから、ただの探索ではなく、
目的を持った動きが始まります。
物語の流れが少し変わる回になりますので、
ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
ヴァルディア外縁の拠点。
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ようやく戻った静けさ。
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吹雪の死地を抜けたばかりの空気が、まだ残っている。
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クロウ
「……やっと落ち着いたな」
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リオン
「ほんとだよ。あのドラゴンども、もう勘弁してほしいぜ」
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軽口。
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だが、その奥には確かな疲労。
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その時。
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静かに、空気が変わる。
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ノクスが姿を現す。
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修一
「……久しぶりだな」
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ノクス
「ああ」
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短い返事。
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だが、すぐに本題へ入る。
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「ルーヴェンハイムの状況だ」
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全員の表情が引き締まる。
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ノクス
「都市では抗議デモが起きている」
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「カプセルの高額取引」
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「医療の不正」
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「そして――」
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「コロシアムの件も広まりつつある」
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空気が重くなる。
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クロウ
「……完全に火がついたな」
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ノクス
「だが」
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「ルーヴェンハイムは何も語らない」
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「黙秘を貫いている」
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カイゼル
「……医療はどうなってるの?」
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ノクス
「完全には止まっていない」
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「都市外縁の医療拠点――アスクレア」
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修一の表情が、わずかに変わる。
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そこは――
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自分が残してきた場所。
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雇った人たち。
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助けを求めていた人たち。
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ノクスは続ける。
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「ヴァルディア様の指示だ」
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「ヴァルター・ローレンが守ってくれている」
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一瞬。
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カイゼルの目が揺れる。
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だが。
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何も言わない。
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ノクス
「私も時折様子を見ている」
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「崩壊はしていない」
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「だが長くはもたない」
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沈黙。
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そして。
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ノクスの声が低くなる。
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「本題だ」
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空気が変わる。
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「ルーヴェンハイムの力」
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「闇魔法――洗脳」
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リオン
「……洗脳?」
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ノクス
「対象は一人」
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「だがその一人を支配すれば」
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「組織全体を動かせる」
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クロウ
「……厄介だな」
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ノクスは続ける。
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「裏金」
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「人脈」
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「地位」
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「すべてはそこから築かれた」
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そして。
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「当時の大賢者を支配した」
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空気が凍る。
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修一
「……それで今の地位か」
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ノクス
「ああ」
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「その男の名は――グラディウス」
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重い名前。
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ノクス
「ノースガルドでも最強クラスの魔道士」
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「だが今は」
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「ルーヴェンハイムの支配下にある」
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クロウ
「……それをどうにかしない限り」
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修一
「ルーヴェンハイムには届かない」
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ノクスはうなずく。
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そして。
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「さらに問題がある」
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「上級魔道士が約三十人」
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リオン
「……三十かよ」
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ノクス
「多くは金で集められた者たち」
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「ヴァルディアからも二人引き抜かれている」
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クロウ
「正面からやれば終わりだな」
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その時。
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修一が静かに口を開く。
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「……逆だ」
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視線が集まる。
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「そいつらを、こっちに引き込む」
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リオン
「は?」
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修一
「金で動くなら」
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「流れで動く」
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「崩れる側にはつかない」
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クロウの口元がわずかに動く。
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「……悪くない」
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ノクス
「可能性はある」
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修一
「全部じゃなくていい」
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「半分でいい」
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「それで戦力は崩れる」
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一歩踏み出す。
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「残るはグラディウスだけだ」
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沈黙。
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アルゴ
『戦力分析更新』
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『勝率上昇』
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修一は続ける。
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「だが、その前に」
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一拍。
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「アルゴを強くする」
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全員の視線が向く。
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「グラディウスを相手にするなら」
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「今のままじゃ足りない」
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アルゴ
『進化の必要性を認識』
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静かに。
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『最適化プランを再構築します』
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空気が変わる。
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戦いではない。
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“準備”の戦い。
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修一
「……順番に崩す」
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「まずは内部」
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「それから――本体だ」
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運命が、動き出す。
第20話を読んでいただきありがとうございます。
今回は情報整理と今後の方針が見えてくる回でした。
ルーヴェンハイムの状況、そしてその裏にある力も少しずつ明らかになってきました。
そして何より、アルゴの進化が今後の鍵になってきます。
次回からは、その準備と新たな動きに入っていきますので、
引き続き楽しんでいただければ嬉しいです




