第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第36話 理由
第36話です。
前話で見えた出来事の裏にある「理由」が、
少しずつ明らかになります。
物語の核心に近づく回となっていますので、
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
拠点。
簡易作業スペース。
先ほどまで映っていた映像は、すでに消えている。
残ったのは静寂だけだった。
誰もすぐには口を開かない。
空気が重い。
セリナが小さくつぶやく。
「……あれが……」
言葉を探すように続ける。
「この街のやり方……」
その声は震えていた。
カイゼルは拳を握ったまま動かない。
何も言わない。
だが、その震えだけが止まらない。
怒りか。
悔しさか。
どちらでもある。
修一は腕を組んでいた。
目を閉じる。
少しだけ考える。
そして、ゆっくり口を開く。
「……あれ、ただの金稼ぎじゃねえな」
セリナが顔を上げる。
「え……?」
修一は視線を落としたまま続ける。
「もっと別の目的がある」
沈黙。
カイゼルが問いかける。
「……じゃあ、何のために……」
そのとき。
ノクスが低く言う。
「……マスター選定」
全員の視線が集まる。
セリナ
「マスター……?」
ノクスは壁にもたれたまま、淡々と説明する。
「ノースガルドの頂点だ」
「三人の大賢者から選ばれる」
その言葉に、場の空気がわずかに変わる。
カイゼル
「……そんな存在が……」
ノクス
「形式上は“選定”だ」
「だが現実は違う」
一拍置く。
「影響力がものを言う」
修一が小さく笑う。
「……なるほどな」
アルゴが割り込む。
「資金流動 分析結果あり」
空中に簡易的なデータが浮かぶ。
「短期間での資金集中 確認」
「外部への供与、または取引の可能性」
修一は視線を上げる。
「つまり――」
一拍。
「金で選ばれようとしてる」
その一言で、全てが繋がる。
セリナの顔が青ざめる。
「そんな……」
「人の命を……」
カイゼルが低く続ける。
「……利用して……」
ノクスは何も言わない。
否定もしない。
それが答えだった。
修一は静かに言う。
「全部つながったな」
「カプセルも」
「競売も」
「数を絞ってる理由も」
一つずつ確認するように。
そして。
「全部、金だ」
沈黙。
その言葉が重く落ちる。
セリナの目が揺れる。
「じゃあ……」
「助かる人は……」
修一は迷わず答える。
「金があるやつだけだ」
残酷な現実。
だが、嘘はない。
カイゼルは歯を食いしばる。
「……ふざけるな……」
低く。
押し殺した声。
それでも、確かな怒り。
ノクスが静かに言う。
「それが、この街の現実だ」
冷たい言葉。
だが否定できない。
修一は前を向く。
迷いはない。
「だったら壊すだけだ」
セリナが息をのむ。
「……壊す……?」
修一
「仕組みごとな」
短く。
一拍置く。
「止めるだけじゃ足りねえ」
「同じことが繰り返される」
その言葉に、空気が変わる。
カイゼルが顔を上げる。
目に宿るのは決意。
「……じゃあ……」
修一は言い切る。
「根こそぎだ」
静かに。
だが、はっきりと。
「全部ひっくり返す」
沈黙。
誰も反対しない。
セリナも。
カイゼルも。
そして――
ノクスも。
ノクスは目を閉じる。
ほんの一瞬。
わずかな迷い。
だが、すぐに消える。
何も言わない。
それが答えだった。
修一は全員を見渡す。
「やるぞ」
その一言で。
戦いの意味が変わる。
ただの奪還ではない。
ただの救出でもない。
この街の“仕組み”そのものを、
壊す戦いが始まる。
読んでいただきありがとうございます!
今回は競売という仕組みの裏にある目的や、
ルーヴェンハイムの狙いが見えてくる回でした。
単なる金儲けではなく、
マスター選定という大きな目的のために、
人の命が利用されている構図がはっきりしてきたと思います。
そして修一たちの中で、
「止める」だけでなく「壊す」という決意に変わったことも重要なポイントです。
ここからはいよいよ行動に移る段階になります。
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