第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第35話 競売
第35話です。
今回はルーヴェンハイムの内部で行われている、
ある仕組みが明らかになります。
これまで見えていなかったこの世界の歪みが、
少しずつ形として見えてくる回です。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
拠点。
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空中に映像が浮かぶ。
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アルゴ
「監視 継続中」
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修一
「動きは?」
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アルゴ
「大規模な人の移動 確認」
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映像が切り替わる。
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大きなホール。
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人が集まっている。
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病人。
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怪我人。
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付き添いの人間。
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セリナ
「……何ですか、これ……」
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カイゼル
「こんなに……人が……」
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ざわめき。
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不安。
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焦り。
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重い空気。
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そのとき。
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前に出てくる男。
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堂々とした立ち振る舞い。
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アルゴ
「対象:上級魔道士」
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男が口を開く。
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「本日の“配布”を開始する」
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背後。
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台の上に並ぶ。
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カプセル。
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だが。
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数は少ない。
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セリナ
「……あれだけ……?」
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修一
「絞ってるな」
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男は続ける。
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「数には限りがある」
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「必要な者に渡るべきだ」
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沈黙。
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そして。
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「開始する」
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一瞬の静寂。
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次の瞬間。
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「五千万!」
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「七千万だ!」
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「一億!」
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セリナ
「え……?」
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カイゼル
「……これは……」
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修一
「競売だ」
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短く言う。
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セリナ
「そんな……」
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「治療を……売ってるんですか……?」
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修一
「しかも選ばせてる」
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「自分たちの意思で買わせてる形だ」
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画面の中。
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必死に叫ぶ人たち。
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金額はどんどん上がる。
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だが。
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全員が買えるわけではない。
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叫びが、
少しずつ減っていく。
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残るのは、
一部の人間だけ。
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そして。
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決まる。
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カプセルは、
一人に渡る。
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セリナ
「……そんな……」
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カイゼル
「他の人は……」
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修一
「買えなかった時点で終わりだ」
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冷静に言う。
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沈黙。
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映像は続く。
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別の時間。
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同じホール。
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同じ光景。
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同じ流れ。
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アルゴ
「定期的に実施されていると推定」
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セリナ
「……毎日……?」
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修一
「だろうな」
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「数を絞って価値を上げる」
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「完全に商売だ」
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カイゼル
「……人の命を……」
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修一
「材料にしてる」
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短く。
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アルゴ
「隠しカメラ 正常稼働」
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「継続監視 可能」
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修一は画面を見つめる。
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そして、
ゆっくり言う。
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「分かったな」
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一拍。
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「治療じゃない」
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さらに。
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「売買だ」
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空気が凍る。
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セリナ
「……そんな……」
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カイゼルは拳を握る。
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何も言わない。
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だが、
その表情は変わっていた。
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ノクスは黙っている。
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だが、
その目はわずかに鋭くなる。
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修一は画面を消す。
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静かに言う。
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「証拠は揃った」
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一拍。
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「やることは一つだ」
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全員が見る。
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修一
「止める」
読んでいただきありがとうございます!
今回はカプセルがどのように扱われているのか、
その実態が明らかになる回でした。
治療ではなく「競売」という形で、
命に値段がつけられている現実は、
この物語の大きなテーマの一つでもあります。
ここで得た情報と証拠が、
今後の行動にどう繋がっていくのかが重要になってきます。
ここからはいよいよ動き出す段階に入りますので、
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
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