第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第29話 揺れるもの
第29話です。
救出を終え、
一度落ち着く回となります。
それぞれの想いが少しずつ見えてきますが、
同時に新たな不安も残る形になります。
静かな回ですが、
今後に繋がる大事な話になっていますので、
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
夜。
⸻
ルーヴェンハイムの外。
⸻
森の奥。
⸻
火は使わない。
⸻
静かな闇の中で、
四人は息を整えていた。
⸻
しばらく誰も話さない。
⸻
ただ、
呼吸の音だけが響く。
⸻
修一
「……無事か」
⸻
セリナ
「……はい」
⸻
アルゴ
「損傷 軽微」
⸻
修一はカイゼルを見る。
⸻
「お前は」
⸻
カイゼル
「……大丈夫です」
⸻
少し間。
⸻
「助けていただいて……ありがとうございます」
⸻
修一
「礼はいい」
⸻
「取り返しただけだ」
⸻
短く。
⸻
だが、それで十分だった。
⸻
沈黙。
⸻
セリナが少しだけ笑う。
⸻
「……本当に、戻ってこれましたね」
⸻
カイゼルは小さくうなずく。
⸻
その目は、
もう迷っていない。
⸻
だが。
⸻
ノクスだけが、
少し離れた場所にいた。
⸻
背を向けている。
⸻
修一がちらりと見る。
⸻
何も言わない。
⸻
セリナが気づく。
⸻
「……ノクス?」
⸻
ノクスは振り向かない。
⸻
「……なんだ」
⸻
セリナ
「その……」
⸻
少し迷う。
⸻
「どうして、助けてくれたんですか?」
⸻
沈黙。
⸻
風が揺れる。
⸻
ノクスはゆっくり言う。
⸻
「……気まぐれだ」
⸻
短く。
⸻
それだけ。
⸻
セリナは少し首をかしげる。
⸻
「でも……」
⸻
アルゴ
「発言に矛盾あり」
⸻
ノクス
「……うるさい」
⸻
少し間。
⸻
そして、
小さくつぶやく。
⸻
「……見ていられなかっただけだ」
⸻
沈黙。
⸻
セリナの表情が少しやわらぐ。
⸻
だが。
⸻
ノクスは続ける。
⸻
「……俺は」
⸻
少しだけ言葉が止まる。
⸻
「……裏切れない」
⸻
空気が変わる。
⸻
セリナ
「え……?」
⸻
ノクスは振り向かない。
⸻
「……そういう魔法を、かけられている」
⸻
静かに。
⸻
感情を押し殺した声。
⸻
沈黙。
⸻
セリナの表情が曇る。
⸻
「……そんな」
⸻
ノクス
「問題ない」
⸻
即答。
⸻
「俺は俺でやる」
⸻
それ以上は言わない。
⸻
修一は少しだけ笑う。
⸻
「ならいい」
⸻
それだけ。
⸻
深くは聞かない。
⸻
ノクスはわずかに目を見開く。
⸻
だが何も言わない。
⸻
沈黙。
⸻
カイゼルが小さくつぶやく。
⸻
「……父は」
⸻
修一
「強かったな」
⸻
カイゼル
「……はい」
⸻
少し間。
⸻
「でも」
⸻
顔を上げる。
⸻
「負けません」
⸻
その目に、
迷いはない。
⸻
修一はうなずく。
⸻
「そうか」
⸻
短く。
⸻
それでいい。
⸻
アルゴ
「今後の行動 提案」
⸻
修一
「言ってみろ」
⸻
アルゴ
「ルーヴェンハイム内部情報 不足」
⸻
「再侵入 非推奨」
⸻
「外部拠点 確保 推奨」
⸻
修一は少し考える。
⸻
「……だな」
⸻
セリナ
「一度、整えましょう」
⸻
ノクスは黙ったまま。
⸻
だが、
耳は向いている。
⸻
修一は立ち上がる。
⸻
「場所を変えるぞ」
⸻
「次は準備してからだ」
⸻
全員がうなずく。
⸻
夜の森。
⸻
静かに動き出す。
⸻
その中で。
⸻
ノクスは一度だけ、
ルーヴェンハイムの方を振り返る。
⸻
何も言わない。
⸻
だがその目には、
わずかな迷いがあった。
読んでいただきありがとうございます!
今回は救出後の余韻と、
それぞれの内面に少し触れる回となりました。
特にノクスについては、
まだ全てが明かされたわけではありませんが、
これからの展開に関わってくる部分になります。
そして、カイゼルの決意も改めて描かれました。
ここからは一度体制を整えつつ、
次の行動へと進んでいきます。
面白いと思っていただけたら、
ブックマークや評価をしていただけると励みになります!




