第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第30話 境界
第30話です。
一度拠点を整え、
今後の方針を考える回となります。
そして、これまで触れてこなかった
修一の過去についても語られます。
物語が大きく動き出すきっかけとなる話ですので、
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
森の奥。
簡易的な拠点。
木々に囲まれた静かな空間。
修一が周囲を見渡す。
「……ここなら大丈夫だな」
アルゴ
「周囲警戒 問題なし」
セリナがその場に腰を下ろす。
「少し、落ち着けそうですね」
カイゼルも静かに座る。
ノクスだけは少し離れて立っている。
沈黙。
短い静寂。
戦いの余韻が、まだ残っている。
修一が口を開く。
「……まずは整理するぞ」
全員の視線が集まる。
「ルーヴェンハイムには、しばらく近づかねえ」
アルゴ
「妥当」
セリナ
「はい」
カイゼルも頷く。
修一は腕を組む。
「……思ったより、情報が取れなかったな」
セリナ
「はい……」
カイゼル
「内部はかなり厳重でした」
修一は少し考える。
「……こうなると」
短く息を吐く。
「俺の部屋にあるもんが欲しいな」
セリナ
「……部屋?」
修一
「元の世界のな」
沈黙。
空気が止まる。
セリナ
「……え?」
カイゼル
「元の……世界?」
ノクスもわずかに目を向ける。
修一はあっさり言う。
「俺、この世界の人間じゃねえんだよ」
完全な静止。
セリナ
「……えええ!?」
思わず声が出る。
カイゼルも言葉を失う。
「……そんな……」
「異世界……から?」
修一
「まあ、そんなとこだ」
軽く言う。
セリナは慌てる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「そんなこと、ありえるんですか!?」
アルゴ
「事実確認 済」
セリナ
「え、知ってたんですか!?」
アルゴ
「肯定」
セリナ
「なんで言ってくれないんですか!」
アルゴ
「質問されていない」
修一
「まあまあ落ち着け」
カイゼルはまだ混乱している。
だが、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「……それで」
「部屋にあるもの、とは?」
修一の表情が変わる。
少しだけ真面目になる。
「俺の世界にはな」
「魔法はない」
「代わりに、別の技術がある」
セリナ
「技術……?」
修一
「医療も、機械も、全部だ」
短く続ける。
「ここで足りねえもんが、揃ってる」
沈黙。
カイゼルの目が変わる。
「……それがあれば」
修一
「もっと助けられる」
その言葉は重い。
ノクスが口を開く。
「……なんだ」
修一はノクスを見る。
「お前さ」
少し間を置く。
「俺を元の世界に戻せるんじゃねえか?」
沈黙。
セリナ
「え……!?」
ノクス
「……何を言っている」
修一
「なんとなくだ」
「でも、お前の力」
「“無効化”だろ」
一歩近づく。
「だったら――」
「境界も消せるんじゃねえか?」
沈黙。
ノクスは答えない。
だが、目がわずかに細くなる。
アルゴ
「理論的可能性 存在」
ノクスはゆっくり口を開く。
「……理論上は可能だ」
空気が変わる。
セリナ
「……え……」
ノクスは続ける。
「だが」
「時空の無効化になる」
「失敗すれば消える」
「もしくは狭間に取り残される」
沈黙。
セリナの顔が青ざめる。
「そんなの……」
だが。
修一は動じない。
「それでもできるんだな」
ノクスは答えない。
沈黙。
修一は小さく笑う。
「……なら十分だ」
その目は、
どこか遠くを見ている。
この世界。
そして、元の世界。
二つの境界。
越える手段はある。
だが――
代償もある。
それでも。
修一は迷わない。
「使うかどうかは」
小さくつぶやく。
「そのとき決める」
新しい可能性。
新しい危険。
その両方を、
手に入れた。
読んでいただきありがとうございます!
今回は新たな拠点での作戦整理とともに、
修一が異世界から来た存在であることが明らかになりました。
また、「元の世界に戻る」という新たな選択肢が提示され、
物語の方向性が大きく広がった回でもあります。
ここからはその可能性に向けての準備や、
それぞれの思惑が動いていくことになります。
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