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冴えないおっさん、AIと異世界で国を作る〜魔法社会を科学でひっくり返す〜  作者: れいじ
第6章 新生国家ジャポン編

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第6章 新生国家ジャポン編 第19話「色を見る少女」

第6章 第19話です。


今回は少し時間が進み、ジャポンの日常と発展を中心に描いています。


戦いだけではなく、

助けた人たちがどう生きていくのか。


そして修一たちが、どんな国を作ろうとしているのか。

その空気を感じてもらえたら嬉しいです。

ジャポンへ戻ってから、一か月ほどが経っていた。


朝。


アルカディアの街には、今日も人の声が響いている。


木材を運ぶ者。


畑を耕す者。


鍛冶場から聞こえる金属音。


市場では、グランウエストから来た商人とノースガルド出身の男が言い争っていた。


その横を、子どもたちが笑いながら走り抜けていく。


少し前まで何もなかった土地とは思えなかった。


修一は高台から街を見下ろし、小さく息を吐く。


「……増えたな」


隣でクロウが笑った。


「まだ村レベルだろ」


「それでも三百人だ」


修一が言う。


あれから何度も転移魔法陣を使った。


エルメディアにも協力してもらい、アルゴとクロウが各地を回った。


ノースガルド。


サウスガルド。


グランウエスト。


身分も種族も関係なく、“ジャポンへ行きたい”という者たちを受け入れてきた。


元奴隷。


職人。


商人。


魔法が使えず迫害されていた者。


逆に、魔法は使えるが今の世界に疑問を持っていた者。


理由は様々だった。


だが共通していることがある。


みんな、“ここなら生き直せるかもしれない”と思って来ていた。


アルゴが静かに告げる。


『現在人口、三百十二名』


修一が苦笑する。


「ちゃんと数えてるんだな」


『重要データです』


クロウが鼻で笑った。


「役所かお前は」


街の中心部には、少しずつ建物も増えていた。


住居。


工房。


倉庫。


そして学校。


まだ簡易的なものだ。


木造で、大きくもない。


だが、毎日子どもたちの声が響いている。


修一はそこへ視線を向けた。


「ルミナ、大変そうだな」


「そりゃそうだ」


クロウが肩をすくめる。


「子ども増えすぎた」


修一は笑った。


確かにそうだった。


ノルとノエルも、今では毎日そこへ通っている。


教室。


ルミナが黒板へ文字を書いていた。


「はい、ここ読む」


「えーっと……」


子どもたちが必死に声を出す。


その後ろ。


ノルは真剣な顔で文字を書いていた。


かなり不器用だ。


だが、以前より遥かに上達している。


隣では、ノエルも一生懸命文字を書いていた。


銀混じりの黒髪。


まだ痩せてはいるが、顔色はかなり良くなっている。


ノルがちらりと妹を見る。


「ノエル、そこ違う」


「むぅ……」


ノエルが頬を膨らませた。


その様子に、教室の空気が少し和む。


ルミナはそれを見ながら、静かに目を細めていた。


そして授業後。


ルミナは修一を呼び止めた。


「ちょっといい?」


外へ出る。


風が吹く。


ルミナは腕を組んだ。


「ノエルのことなんだけど」


修一の表情が少し変わる。


「何かわかったのか?」


「たぶん、闇魔法持ち」


修一は静かに聞く。


ルミナは続けた。


「しかも普通じゃない」


「ノルには魔力がない」


「でもノエルにはある」


「腹違いって話、本当っぽい」


修一は頷いた。


「本人もそう言ってた」


ルミナは小さく息を吐く。


「問題は能力」


「まだはっきり分からない」


「でも、あの子……人を見ると何か見えてる」


修一が眉をひそめた。


「見えてる?」


「色と文字らしい」


修一は少し考え込む。


「文字?」


「そう」


「ただ、ノエルはまだ文字が読めない」


ルミナは苦笑した。


「だから本人も理解できてない」


その時だった。


後ろから小さな足音。


ノエルだった。


「ルミナ先生」


「どうしたの?」


ノエルは少し迷うように修一を見た。


そして、小さく言った。


「……修一さん、白い」


修一が目を瞬かせる。


「白い?」


ノエルは頷く。


「でも……黒もある」


空気が少し止まった。


ルミナが静かに聞く。


「黒って?」


ノエルは困ったように首を傾げる。


「わかんない」


「でも、いっぱいある」


アルゴが静かに反応した。


『特殊認識能力の可能性』


修一はノエルを見る。


ノエル自身も、まだ理解していない。


だが確実に、何かを見ている。


ルミナが優しく言った。


「だから今は勉強」


「文字が読めれば、見えてるものも分かるかもしれない」


ノエルは小さく頷いた。


「うん」


その時。


遠くからノルの声が響いた。


「ノエルー!」


ノエルの顔がぱっと明るくなる。


「お兄ちゃん!」


走っていく。


ノルは妹を抱き上げた。


少し前まで、絶望しかなかった兄妹。


だが今は違う。


笑っている。


修一はその姿を見つめ、小さく息を吐いた。


「……変わったな」


クロウが後ろから現れる。


「まだ始まったばっかだ」


修一は街を見る。


人口三百。


国としては小さい。


だが、確かに人が集まり始めていた。


そして、もう一つ。


修一は医療学校の建物を見る。


あれからセラディウスとカイゼルにも学校を作った。


簡易的なものだ。


だが、意味は大きい。


アルゴのAIを元に、教科書と医療マニュアルも作った。


この世界では、知識は一部の者だけが持っていた。


だからこそ広げる。


魔法がなくても、人を救えるように。


セラディウスでは、賢者セリオス・ハイレインが中心になって進めている。


カイゼルでは、セリナとアルベルト夫妻が動いていた。


まだ始まったばかり。


だが少しずつ、変わっている。


アルゴが静かに言う。


『AI医療小型機、量産進行中』


修一は笑った。


「忙しいな」


『非常に』


クロウが肩をすくめる。


「国作りなんてそんなもんだ」


夕陽が街を照らす。


煙突から煙が上がる。


笑い声。


話し声。


子どもたちの声。


修一は静かにその景色を見つめた。


ここはまだ小さい。


未完成だ。


だが確かに、“生き直せる場所”になり始めていた。

ついにジャポンの人口が三百人を超えました。


まだまだ小さな国ですが、少しずつ街らしさも出てきています。

市場、学校、医療。


今までは“生き延びる”ことが中心でしたが、ここからは“どう生きるか”も重要になっていきます。


そしてノエル。


彼女の能力は、まだ本人にも分かっていません。

ですが、「色」と「文字」が見えるという力は、今後かなり重要な意味を持っていきます。


少しずつですが、世界の裏側も見え始めるかもしれません。

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