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冴えないおっさん、AIと異世界で国を作る〜魔法社会を科学でひっくり返す〜  作者: れいじ
第6章 新生国家ジャポン編

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第6章 新生国家ジャポン編 第5話「港の値段」

第6章 第5話です。


ゼファード港で目にした、あまりにも理不尽な現実。

怒りに任せて壊すのは簡単です。


ですが修一が目指すのは、一時の勝利ではなく未来を変えること。


今回は、国家ジャポンとして初めて本格的な交渉に挑む回です。

ゼファード港の中央通りを進む一行の前後には、いつの間にか人だかりができていた。


異国の服装をした旅人。


白銀の機械獣。


気品に満ちたエルフの女性。


そして、奴隷商人に真っ向から声をかけた男。


珍しさと不穏さが入り混じり、街中の視線が集まっていた。


港の奥にある豪奢な建物へ案内される。


赤い絨毯。


金の装飾。


無駄に大きな像。


壁には高価そうな絵画や武具が飾られている。


修一は周囲を見回し、小さく呟いた。


「分かりやすいな」


クロウが鼻で笑う。


「成金ってのは大体こうだ」


広間の奥。


大きな椅子に腰を沈めていた男が、両腕を広げた。


ゼファード港の奴隷商会頭、バルガス。


腹は大きく張り出し、指には金の指輪がいくつも光っている。


「ようこそ旅人さんよぉ!」


「港で騒ぎを起こしたって聞いたが、面白ぇじゃねえか!」


修一たちは席に着かない。


立ったまま、相手を見据える。


バルガスは気にした様子もなく笑った。


「で?」


「奴隷が欲しいのか?」


「労働力か? 女か? 若いのも揃ってるぜ」


空気が冷えた。


修一の目が細くなる。


「違う」


低い声だった。


「話がしたいのは、それじゃない」


バルガスは眉を上げる。


「ほう?」


修一は一歩前へ出た。


「この港に、転移魔法陣を描かせてくれ」


広間が静まり返った。


護衛たちも、使用人も、意味が分からず顔を見合わせている。


だが、バルガスだけは違った。


目の色が変わった。


「……転移魔法、だと?」


修一は頷く。


「この港と、他大陸の街を一瞬で繋ぐ」


「人も物も、即日で動く」


「珍しい鉱石も、食料も、技術も、情報もだ」


バルガスの指先がぴくりと動く。


商人の顔になっていた。


「そんなもんが本当にあるなら……」


「この港は世界一になるな」


クロウが小さく笑う。


「話が早ぇだろ」


バルガスは身を乗り出した。


「条件は?」


修一は迷わず言った。


「奴隷売買をやめろ」


その瞬間、広間の空気が変わった。


護衛たちがざわつく。


バルガスは数秒黙り込み、それから腹を揺らして笑い出した。


「はっはっは!」


「そりゃまた綺麗事だ!」


「この港は何で回ってると思ってる?」


「荷運び、建築、船の修理、鉱石運搬……」


「安い労働力があるからだ」


「人を雇えば金がかかる」


「飯も住処も必要になる」


「そんな甘い話で街は回らねえ」


修一は冷静だった。


「回るさ」


「やり方を変えればな」


バルガスが笑みを止める。


修一は続けた。


「道具を変える」


「運搬方法を変える」


「保存技術を入れる」


「水の管理を変える」


「人を使い潰す前提だから、街が停滞してるんだ」


クロウが横で感心したように言う。


「今日はやたら喋るな」


「ジャポンの代表だからな」


修一はそう返した。


エルメディアが静かに口を開く。


「この男の話は机上の空論ではありません」


「私は実際に見てきました」


「魔法に頼らず、人の知恵だけで街を変える姿を」


バルガスがエルメディアを見る。


その耳。


その存在感。


ただ者ではないとようやく理解したらしい。


「……あんた、何者だ」


「セラディウスの大賢者です」


広間がどよめいた。


バルガスの顔色がわずかに変わる。


「大賢者……だと」


クロウが肩をすくめる。


「今さら気づいたか」


だが、その時。


奥の扉が乱暴に開いた。


筋骨隆々の大男が数人の荒くれ者を連れて入ってくる。


顔には古傷。


腰には斧。


目つきは獣のようだった。


「旦那!」


「こんな胡散臭ぇ連中、話聞く必要ありやせん!」


「港の決まり乱されちゃ困る!」


クロウが小さく舌打ちする。


「バルガスの用心棒頭、ゴルドか」


男は修一を睨みつけた。


「奴隷やめろだぁ?」


「夢見てんじゃねえ!」


斧を抜く。


その瞬間だった。


白い影が走る。


アルゴ。


低い姿勢のまま床を滑るように加速し、男の足元へ体当たりした。


巨体が宙に浮く。


そのまま数メートル吹き飛び、壁に激突した。


「がっ……!」


護衛たちが凍りつく。


アルゴは静かに立ち、赤い光を灯した。


『敵対行動を確認』


『制圧可能』


さらに広間全体を包むように、エルメディアの魔力が広がった。


空気が重くなる。


誰一人、動けない。


バルガスの額に汗が浮いた。


修一は静かに言った。


「力で脅しに来たのはそっちだ」


「こっちは交渉に来てる」


長い沈黙が流れる。


やがてバルガスは椅子に深く座り直し、低く笑った。


「……面白ぇ」


「本気なのは分かった」


「なら、一ヶ月やる」


広間がざわつく。


バルガスは続けた。


「転移魔法陣は興味がある 好きに描けばいい」


「じゃあ使わせてもらうよ」


「その上で、一ヶ月で証明しろ」


「奴隷なしでも、この港が回るってことをな」


クロウが笑った。


「ずいぶん譲ったな」


「馬鹿言え」


バルガスは目を細める。


「儲かる匂いがするだけだ」


修一は即答した。


「いいだろう」


「その代わり、この一ヶ月、新たな奴隷の売買は禁止だ」


バルガスは少し考え、鼻を鳴らした。


「……乗った」


修一はようやく息を吐いた。


戦いではない。


だが、これも勝負だった。


港の外では、夕日が海を赤く染めている。


西の大陸グランウエスト。


新生国家ジャポンの最初の外交は――


世界を変える、一ヶ月の勝負へと動き出した。

力ではなく、仕組みで変える。


修一らしい戦い方が見えた回でした。

敵を倒すだけでは、また同じことが繰り返される。


だからこそ、ゼファード港そのものを変える必要がある。


与えられた期限は一ヶ月。

短いようで長く、長いようで短い時間です。


次回、ジャポン式改革が西の港町で始まります。

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