第2章 冴えないオッサン、魔法至上の世界へ 第4話 アルベルト
第4話です。
ついにカイゼルのお兄さん、アルベルトが登場します。
少しクセのある人物ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして物語は、いよいよヴァルディアの内部へと進みます。
ヴァルディアの門が見えてきた。
高くそびえる城壁は、圧倒的な存在感を放っている。石は滑らかに整えられ、継ぎ目すら美しい。明らかに高度な技術で築かれたものだった。
そして、その前にある“見えない壁”。
結界。
目には映らないが、空気の密度が違う。そこに何かがあると、肌でわかる。
カイゼルは足を止めた。
「ここで別れます」
振り返らずに言う。
修一は短く答える。
「了解」
余計な言葉はない。
だが、それで十分だった。
「すぐに戻ります」
「無理するなよ」
カイゼルは小さくうなずき、そのまま門へと向かう。
兵士が立つ門。
だが、彼女を止めることはない。
カイゼルはそのまま結界へ手を伸ばす。
触れた瞬間。
彼女の身体が淡く光った。
次の瞬間には、何事もなかったかのように通過する。
拒まれない。
認められている。
修一はそれを黙って見送った。
「さて……」
門の外。
人の流れの中に立つ。
時間を潰すしかない。
行き交う人々は、それぞれの目的を持って動いている。視線を向ける者もいれば、まったく興味を示さない者もいる。
その中で、アルゴはやはり目立っていた。
何人かが足を止める。
「……それ、魔道具か?」
修一は適当に答える。
「まあ、そんなもんだ」
アルゴは正確に訂正する。
「AIユニット アルゴ」
「……あい、なんだって?」
理解されない。
修一は苦笑する。
「珍しいタイプってことで」
人々は納得したような、していないような顔で去っていく。
アルゴが分析する。
「観測:認識不能」
修一は肩をすくめる。
「だろうな」
しばらくして。
門の内側がざわついた。
足音が近づく。
複数。
そして。
「カイゼル!!」
勢いよく現れた男。
銀の髪。
整った顔立ち。
切れ長の目。
その立ち姿には一切の無駄がなく、自然と周囲の空気を引き締める。
一目でわかる。
この男は強い。
だが。
「無事か!?ケガは!?ちゃんと食べてたか!?寝てたか!?」
一気に距離を詰める。
完全に家族の顔だった。
修一は思わずつぶやく。
「……すごいな」
カイゼルが少し困ったように言う。
「お兄さん、落ち着いてください」
男はハッとした。
一瞬で表情を整える。
「……すまない」
そして、落ち着いた声で言う。
「アルベルトだ」
視線が修一へ向く。
鋭い。
一瞬で値踏みされているのがわかる。
「君が……同行者か」
修一は簡潔に答える。
「神谷修一」
アルベルトの視線がアルゴに移る。
「……それは魔道具か?」
「否定。AIユニット」
わずかな沈黙。
アルベルトの眉が、ほんのわずかに動く。
「……面白い」
再び修一を見る。
「妙なものを連れているな」
修一は軽く笑う。
「まあな」
アルベルトが一歩近づく。
「魔力は?」
「ほぼゼロ」
その言葉で、空気が変わる。
わずかに張り詰める。
「……なぜカイゼルと一緒にいる」
カイゼルが口を開く。
「お兄さん、その方は――」
「待て」
アルベルトが制する。
「本人から聞く」
視線は外さない。
修一は肩をすくめる。
「流れだな」
そして、少しだけ間を置く。
「それと、助けられた」
カイゼルが驚いたように見る。
アルベルトは何も言わず、修一を見つめ続ける。
やがて。
小さく息を吐いた。
「……なるほど」
そしてカイゼルを見る。
「無事なら、それでいい」
その一瞬だけ。
表情が柔らかくなる。
「本当に……よかった」
カイゼルは小さくうなずく。
「……はい」
短い静寂。
アルベルトは再び修一に向き直る。
「事情は理解した」
「だが、このままでは中には入れない」
修一はあっさり答える。
「だろうな」
アルベルトは言う。
「私が許可を出す」
カイゼルが驚く。
「本当ですか?」
「一時的なものだ」
門の兵士に合図する。
「仮紋章を付与しろ」
「了解」
兵士が修一に手をかざす。
淡い光が包む。
身体の奥に、何かが刻まれる感覚。
一瞬の違和感。
だがすぐに消える。
「これで通れる」
修一は自分の手を見る。
見た目には何も変わらない。
「不思議なもんだな」
アルベルトは短く言う。
「特例だ」
「問題は起こすな」
修一は軽く答える。
「気をつける」
アルベルトはじっと見つめる。
「……妙な男だな」
修一は笑う。
「よく言われる」
カイゼルがすぐに否定する。
「言われません」
「そうか?」
少しだけ空気が緩む。
アルベルトが言う。
「行くぞ」
三人は門へ向かう。
結界に触れる。
修一の身体が淡く光る。
だが今度は弾かれない。
そのまま通過する。
都市の中へ。
整った街並み。
洗練された建築。
そして濃密な魔法の気配。
外とは明らかに違う世界。
修一はその光景を見て、小さくつぶやく。
「……本番だな」
ここからが、始まりだった。
読んでいただきありがとうございます!
アルベルトという新たなキャラクターが加わり、
少しずつ関係性も広がってきました。
外では見せない一面なども含めて、
今後のやり取りも楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして舞台はいよいよ都市の内部へ。
ここからこの世界の本質が見えてきます。
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