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突然の夜逃げ騒動で…

その夜…


ずいぶん深い眠りに入っていた午前3時ごろ…



「星子さん…星子さん…」



私を起こす声がした。


もう何なのよ!?

実は三緑が生まれてからというものの…

自分で三緑の世話ができる時はどうにか三緑のお世話をしていただけに、正直、寝ている時に起こされるのはきつい…


もう誰なの?こんな時に起こすのは?


起こしに来たのは小野坂さんだった…


「うわっ…」


こんな夜中に男性から起こされるのはさすがに怖いものはある。


「しっ!」



「どうされたんですか?」



まぁこんな夜だから。静かにしろというのは判る…

でもこんな真夜中に起こすって何?


「急遽、今から帰ることになりました。」



「え?」



どういうこと?


「帰りの挨拶はすでに旦那様が皆さんが床に入ってすぐに済ませましたので、このまま黙って出て行っても大丈夫だそうです。」


イヤそういう問題じゃないでしょ?


「他のみなさんもすでに支度をし始めてます。さぁ急いで。」


気が付いたら、隣で眠っていた三緑はすでにいなくて、ユキやリキも純子たちもすでに起きて帰り支度をしていた。


「三緑は?」


「旦那様たち匠くんと一緒です。先に帰られました。上村さんと朝美と早苗さんが一緒ですので、屋敷に帰るまではなんとかなりますよ」


とはいえ…


「いったい何があったんですか?」


こればかりは聞かずにはいられなかった。


「あとで判ります。さぁ急いで。」


これではまるで夜逃げだ。


私的には、曜子から逃げるための予行練習にはなっているから、ある意味ありがたい。しかし、なんでいきなりこうなったのかがよくわからなかった。


それも桜花院という立派な過ぎる名字で明らかに名門家の立派なお屋敷から、こんな夜逃げみたいなことをするのだから…。



目的は何?



そして、ただ一人だけはまだ寝ている…



「あの、まだ一人…。」



「あ、七緒さんはナキ様の実母なので、初七日まで、ここで過ごしていただく予定なので、あの方は置いていきます。」


ナキさん前は召使であるが、最終的には大金持ちの奥様になった身であるので、様とつけられてもおかしくはない。聞き慣れない呼び方で違和感はあったが、そのナキは召使以前に、良家?の血を引くお嬢様でもあるのだ。



そして驚いたことに、この時間まで残っていた者は思っていたより、少なかった。


聞いた話によれば、

アキやフキ、シキの実母などの出家組は式の終了後、すぐに寺に戻られたらしい。

サキさんとかシキさんとか佐久間親子など、月城家からすでに出て行った人たちは夕方に夕飯を食した後、すぐに帰っていったらしい。

そして、私たちが眠ろうとした10時30分ごろに、今度は月城さんと上村さんと朝美さんとメイドの早苗さんと三緑と匠のおチビちゃん二人が、一足お先に帰っていったらしい。

あと相原君もすでにいなかった。旦那様たちの運転手を急遽務めたのは相原君だったらしいので。


行きはチャーターバスで大勢で来たものの…帰りはこんなにがら空きになっているなんて…


ほんと驚きでしかない。



「ホント、ここまで残されてしまわれたここにいる方には申し訳ありませんが、今夜は車内で眠っていただきます。」


まぁ人数は少なくなってきているので、二席分を一人で余裕で使えるようにはなっている。

だからすぐ横には誰もいないのでその分はゆったりはできるであろう。


「この度は不憫な思いをさせてしまった分、その代わりではありますが、ここにいる使用人の方々は明日明後日の二日間は無償有給です。ゆっくり休んでください。」


召使の無償有給なんて、かなり珍しい。


そして私の席の向かい側の隣の席は希実だった。


こんな夜中にたたき起こされているというのにかなりあっけらかんとしている。


「ん?」


そして呆気なくその様子を見ていたことに気が付かれてしまったので。


「こんな夜中にたたき起こされて驚いたでしょ?」



と聞いてみたら



「あぁまかせろ。夜逃げなら何度もやってるから慣れてるよ。」



とのことだった。

そういえばそうでした。


この子、火口家に来るまでは引っ越しの繰り返しで、住居にあまり安定していなかったことだった。

まだ子どもだから、きつかったかなと思ったが、それなら大丈夫か…



ただ私たちはこの時点で、何か違和感があることには気が付いたが、それが何かということは…朝方、月城家について、またかなり時間がたってから気が付くのであった。



そして朝…

まずリキがいなかった…


確かリキは一緒にバスには乗ってきたはずだ。


何があったんだろう?


「リキ様は、朝早くに外出されました。」


小野坂さんもそう言っていた。


「それって…いつ?」


「ここについて、片付けだけをして早々と出ていかれました。」



それにしてもリキちゃんも、すでに様付で呼ばれている…

小野坂さんも


「リキ様は特別です。何分大学まで行くのですから、そうなると完全にこの家のお嬢様です。」


まぁそうですね。


そもそもリキちゃんは公立どころか、こんな環境で国立高校にまで合格できるほどのキレ者だ。それも首席で卒業したというすごい子だ。認めざる得ないであろう。


でここで、小野坂さんに聞いてみる。


「あの、月城さんはリキちゃんのことはどう扱うつもりでいますか?

やっぱり、他の娘同様に学生でも10代のうちにどこかにお嫁に出すのですか?」


「多分、それはないかと。」


「ではあの子は…」


「おそらく、ずっと手は付けないでしょうね。」


確か、月城の娘は10代で嫁に行かないと一生独身となるとのことだが…それがそうならホント極端な家庭である。


「まぁあと残されたのはユキ様ですね…」


「え?」


ユキにまで様をつけるのか?


「まぁあの子も一応…高校生に昇進されたということで、月城家の掟通りで行けば、準お嬢様ではあります。」


準お嬢様…。ホント微妙な扱いである…。


「リキ様はどうであれ、ユキ様はどうなるか?私にも判りません。」



本当だ。それは私にもわからないことだ。

何せ私も、二央の家庭教師のお役目が来年度で終わるため、一年後にはここを出ていく。

ついでに預かった希実の家庭教師にしても、来年度の一年でお役目が終わる。

それでも私がここを出た後、最低でもあと一年はユキはまだ高校生でいる。そうなると私はユキの行く末までもここでは見送ることはできない。



私がいないあと、あの子一人でどう動けるか判らない。

それにあの子はリキとは違って、大学まで入れるような学力はないのが致命的だ。

とにかくあの子もサキさんみたいな行動力がないと月城の思う壺だ。


とはいえ私にはこれ以上、ユキに何もできることがない…。


一応、学年最下位から、公立高校合格まで導いたという、いまのところ一番思い入れがあるのはユキだ。

そして、あと一年もすれば、ろくに学校も行かなかった野生児希実をお坊ちゃん中学にまで合格させてしまったら、さらに思い入れナンバー1は希実へと変わってしまいそうで…


いろいろ考えてしまう…


そんな中だった…



「そういえばさ、今年の追放審議会のことだけどさー」



召使の間でその話題をされていることに聞いづいた。

追放審議会って、毎年召使の中で要らないと思う者に、職員が各自一票ずつ投票して票数が多かった者をリストラするという、非道な行いである。



「なんか、すごいことになったそうよ。」


「というか、ここまで出ていく人ややめていく人が多い中での追放審議会でしょ?それでも今年はあると聞いて、ホントびっくりしたわよ。」


「普通、やめていく人が多いなら、ないはずなのにねー」


「で?誰になったの?」


「それがねー。もう決まってるらしくてさー。」


と言いかけた時に…



「君たち、手を休めないこと。ただでさえ、今日お休みの子が多いのだから、今日明日は君たちだけで頑張ってもらわないといけないのだからね。」



と小野坂さんがその会話を無理やり終了させてしまったでも聞く事ができなかった。


多分だが、私にはまだ聞かせたくなかったことがあるのだろう。



そういえば、私にも投票用紙が渡されたのだが、いつの間にかなくなっていた。

確かに引き出しの中にしまっておいたのだが、どうしても書かないといけないのか?とずっと悩んでいるうちに日がたってしまって、最後まで決まらなくても無投票でも出そうと思って再度、引き出しを開けたら、投票用紙はすでになかったのだ。


したがって、ないものはないので出せれなかったのだった。


そんな中でいったい誰が決まったのだろう?


おそらく、私の投票用紙は何者かが盗んでいったのかもしれないが、それにしても私抜きでそんなことが勝手に決まってしまったのは納得できない。



そして…



こんな時だというのに月城さんはかなり忙しかったとのことで、年度末までまともに家には帰ってきてなかった。

それもその時期はリキもまた同じくだった。


リキは春休みをいいことに帰ってきたのは3月30日の朝だった。


さすがの上原さんもしびれを切らしていて。



「いったいどこに行かれていたのですか?」


「別にもういいでしょ?もう大学生なんだから、放っておいてよ!」


まぁそうだが


「いくら大学生でも入学準備というものはある程度はあります。

それなりにその予定があるので、せめてその予定が終わるまでは行動は慎んでほしかったです。」


「それはすみませんでした。」


「判ればよろしい」


「でもそれでも、一応は今日、学校の健康診断と身体測定がある日だから、一応は帰ってきたんで、それは許してよー。」


「はいはい」



まぁリキはリキなりに自分の予定には気を使ってはいるらしい。

そういうところは几帳面だ。



そして…リキはその時、出先でとんでもないことしでかしていたのだった。

その結果はもう少したってからくるのであった…。




さらに驚いたことに…その日にまたとんでもないことを耳にした。



「今回の追放審議会で、追い出されたものを発表する!」



とその日の夕食で月城の口から出たことは…




「高原トキに決まった!」




「え?確か、学生や義務教育中の召使は非対象者では?」


と疑問に思ったが、


「まぁいろいろ疑問に思うかもしれないが、誰がどう考えてもトキは全く勢力にならないのは確かであり、あれの日ごろの態度も目に余るものある。

それに何と言っても今回の投票結果で、違法とはいえここまで顕著に表れたのは黙って見過ごしておくわけにもいかなかった。

したがって、苦渋の決断で彼女を追放することにした。」



ってそういえば、その追放される本人であるトキはこの場にはいない。


てことはまた…



「ああトキくんのことだが、さすがに子供を何も保証がないまま追い出すのは難しいので、桜花院家でお世話になることになった。」



「は?」


ってことはまさか…



「さすがによその家なら、お役目はきっちり果たしてくれるかと思ってね。」



この話を聞いた後の召使たちの顔を見ると、さも私たちが投票しましたという顔だった。


「あと、突然の発表ばかりだが、佐久間ララ君と佐久間キキ君は聞いての通りキキ君の卒業式と共にここを出ましたことと。


下山エリナ君は…」



そういえば…エリナもここ数か月見かけていない…


「1月で学校を退学させたよ。私が紹介した高級サロンクラブに就職したという報告とする。」


ってエリナって今年で高校卒業じゃなかったっけ?


卒業間近で退学って⁉



おまけに高級サロンクラブって?


「何も案ずることはない。彼女はそこでもう大活躍しているらしいからねー。あれでかなり稼いでいるとのことだ。」


なんなんだこいつは?



「そして、今年ニューフェイスとして新しくはいるメイドを紹介するよ。」


「桃子です」


「小梅です」


「さくらです」


紹介されたメイドたちはまたかなり若かった…

それも全員春の花の名前…


「うち小梅君はまだ中学生だ。

桃子君とさくら君は今年中学を卒業したばかりの15歳。うちに正式に就職してきた。

この年だけど、家庭の事情で働きながら、河立中に通うことになる。

よろしく頼むよ。」


これ…ほんと大丈夫なのか?と疑問がわきまくりのメンツだった。



「あともう一人。メイドとして高卒の子が明後日からくることになっている。

峰崎ふじ子くんだ。来た時はよろしく頼むよ。」


ってこれ、明らかに某アニメのヒロインの名前っぽくて、偽名っぽいけど大丈夫なのだろうか?


ここ近年、月城さんは愛人の数を次々と削っている。月城の愛人は私が思っていた以上によく判らない基準だ。

マリアはまぁ判らないわけでもないぐらいの美人だ。カオリは月城をパトロンにしている売り出し中の歌手だ。エリナが一番よく分からなかった。取柄といえば若いっていうだけだったし、さして美人ではなかった。というかあのギャルメイクを落としたエリナははっきり言ってブスな類だった。あれで、外では学校カーストの頂点でふんぞり返っていて、住処であった月城の館でもでかい顔をしていたのだから、気立てだっていいわけではない。ホント信じらない存在だった


今となってはエリナの後釜として美穂を愛人枠に置いているが、あくまで美穂は表向き希実付きの召使だ。そして今、美穂はほぼ月城の愛人となったので、美穂ではなくミホとカタカナでここでは記されるようになっていた。なんかよくわからないが、A級クラスの愛人はカタカナに記されることになるらしい。(ちなみにララさんの場合は本名だったのでそのままだったらしいけど)


二央曰く、もうそろそろもう一人の愛人がきそうだとはいっていたが、どうなることやら…



そして…



後に知った話…



「気が付いてしまったかね…」


「確か帰りのバスにトキちゃんはいなかった…」


「さすがに気づくよね…」


「あの子を置いてくるつもりで、夜逃げしたわけですか?」


「そうだね…」


「いくら何でも、ひどすぎませんか?」


「仕方ないんだよ…」


仕方ないって…


「桜花院には借りがありすぎてな…」


「借りって…」


「まぁ金持ちには金持ちなりの事情があるんだよ。」


「それにしてもあの子まだ小学生ですよ?」


「ああだから、あくまで婚約だ。5年後にはあいつも桜花院の正妻で安泰だ。」


なんておぞましい…


「あいつもあいつで贅沢した暮らしがしたかったんなら、アイツが望んだままの我儘な暮らしができるからそれでいいではないかー。」


確かにトキは常にわがまま放題だった。


「それになんといっても桜花院だ。学校だけはいいところに通わせてもらえるんだ。少なくともここにいるよりかは、トキにとってもいい暮らしができるではないか。」


確かに聞いた話によれば、あのナキにしても自分の娘と同じお嬢様学校に通わせてもらっていた。


でも…



「ではトキちゃん本人は、自分が桜花院の嫁になることは知ってるのですか?」


「まぁさすがにずっと一緒に住んでいれば、気が付くんじゃないか?」


またいいかげんな…


「どちらにしても、私はこの間言った通り、あの子には私の娘をやめてもらったんだよ。」


その結果が、桜花院の婚約者というわけかい!?


「最低なことをしているとは十分承知だ。」


自覚してるのかよっ!!?


「でもその最低なことをするのもまた、私の趣味でもある。」


こいつマジで救いようもないクズだな…

私、こんな奴に手を出されないでホントよかったとつくづく思えてきた…。



こんな人と関わって今一番不安なのは、我が子三緑のことだ。



私が三緑を育てられないのは仕方ないが、ということは三緑はこの最低男の手の中にあるということで、三緑はこの先どうなるかは何も保証はないということだ。

聞いた話によれば、リキやサキや二央の親はそこそこ財力があったがゆえに、学校が行けるといういい身分でいられた成功者だが、他の子たちは金など一切払ってないほとんど奴隷扱いだ。まぁユキの親も死ぬまでに少なくとも高校を出るお金ぐらいは残してはくれていたらしいので、ご褒美程度にギリギリ学校に行けれている状態らしい。


そうなると、私もこの先、三緑のために学力方向ではお金を支払い続けないとまずいとさえ思えてきた。



「ちなみにね。トキの母親もトキのことを見捨てたのは確かだ。

だから、私がトキをどこに売ろうが絶対にとがめられることはまずない。」


そこまで言い切れる何かがあるのか?


「トキの母親、何らか犯罪犯して自分の彼氏と海外に逃亡したから、多分二度と帰ってこないよ。」


そういうわけか…


ホント恐ろしくてたまらない…



「あの…あと高級サロンクラブって…その…」


「ああ。金持ちの間だけでの高級娼婦みたいなものだよ。」


やっぱり…


「前みたいに金持ちだけを相手にストリップ劇場みたいなもようしものをしたりでね。

結構大変な仕事なんだよね。」


「まさか、エリナさん前のクリスマス会で?」


「うん、もう去年から見習の飛び入り参加として、ステージで踊ってたよー」


うわ…。


「まぁ元々エリナ君はアイドル志望でね。ダンスはかなり達者な子だったなー。」


あの顔でアイドル志望って…?まぁあの顔でアイドルになるいうのが無謀すぎるけど…


「おまけにあの子、身体の方が普通の女にはないほどすごくてね。もう私一人のモノだけにしておくのがもったいなく思えてきて…」


なるほど…あまりかわいくない割にはそれなりの理由があるわけですかい!?


「それに正直飽きてきたしなー」


ホント、ここまでのクズ男みたことがない…


私の初めての男ですら、女癖は悪いが女の方から、己を見限るまでは見捨てなない男いうのに…



「まさか…うちの妹もついでに売ったとか…?」



と一応、念のため聞いてみた。


「さすがに自分の管轄外の素人な子を勝手に売ったりはしないよ。」


「じゃあエリナさんは売ったのですか?」



「そうだな…」



って他人の子まで売るんか!?

ことごとく最低だ。



「まぁ適材適所だよ。あいつ学校では威張り腐っていて、正直学校中のほとんどの生徒が迷惑がっていたらしいからね。学校卒業間近で強制退学にしてやったよ。」


そっちのが、全校生徒から「ざっまー」と思われるというオチという寸法ですかい!?


なんか、ホントこわいおじさんだ。


それでもあの7つ族の家にしては比較的まともな家いうのが信じられない…


今年度で月城の館を出て行った人にしても来た人にしても、とてもじゃないけど、まともな事情な人は誰一人としていなさげだ。


同じまともじゃないにしても、キキとトキの事情の差はかなりあると思う。


小野坂さんの言っていた通り、月城家に残った娘は実質上ユキのみとなった。


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