キンキンキラキラ王子様計画
私はまた問題児を抱えることになってしまった。
希実君…この子本当に何もできない…
小学5年生でありながら、すでに低学年で学ぶはずの九九ですら、判ってなかった…
いったいどこをどうしたら、こうなるのだか…
「ああ、俺さまともに学校行ってなかったんだよな。」
「え?それって不登校とか?」」
「何と言ったらいいのか判らんけど、小学生になってからでも転校も4回はしたからなー。」
転校4回か…それはきついな…
「言うまでもなく引っ越し期間は学校や住んでいたし、引継ぎの学校で、勉強の進み具合がかみ合っていなかったり、転校生だから、どうしても学校になじめないときなんて当たり前のようにあったから、その不登校とかいう期間も当たり前のようにあったな。」
「で?学校には、適当にいっていただけだったの?」
「まぁそんなところ。はっきり言って、学校行っても机に座っていただけで、なんかすごく意味ない時間過ごしてたなとは思っていた。」
ああ、勉強ができない子の理由って、そういう理由もあるのか…と考えさせられてしまう案件だった。あのユキだって、家にいる時はさんざんこき使わされて、勉強している暇なんてほとんどないから、学校の勉強に追いついていけなかったとはまた訳が違う。
これ、本当に一年生からやり直す必要がありそうである。
私もであるが、この子のマナー講師の上原さんもすごく手を焼いていた。
希実には作法常識モラルといったものは、一切なかったのだから…
本人曰く、
「母さん。いつも忙しくて、朝も夜も日曜日も家にいなかったし、ほとんどしゃべったことがない。」
それゆえに、ここに来たばかりの時にも、他人を平気で「ブス」呼ばわりしていたのは頷ける。
「あのね。聞きにくいことなんだけど、何でも聞いてもいいかな?」
「別にいいけど」
「お父さんはその…」
ほんとそれだ。
母子家庭と聞いていたから、
「元からいない。」
「え?」
「どうも結婚もしてなかったらしい。」
未婚の母だったのか…
そして、驚くことに希実の母は、まだ27歳らしい。
「まぁ4歳まで、じいちゃんがいたけど、そこからいない。」
つまり、亡くなられたと、
20代の母に40代の祖父とまで聞いてしまった…
「あと、親戚とか、頼れる人はいなかったの?」
「ああ一応、じいちゃんの妹が一人いるらしいけど、ずっと仕事で海外回っているらしいから、一回もあったことがない。」
ほとんど、野放しの放置児童だったわけだ。
というか、火口家と縁があったのは何代目前か判らないけど、こんな不安定な家庭状況の子を火口家もよく見つけ出したものだ。それでも一応DNA関係をしてもらった結果、希実も希実の母も見事に火口家の遺伝子と一致したのだからすごい。
それもいろいろ聞いてみた結果、希実の名字「側」はなんと、当時の火口家の当主の正妻が勝手につけたらしい。どうもそのお妾さんには名字が特になかったらしいからだそうだ。それもつけ方もいい加減で、当時の当主の側室だから「側」と名付けたそうだ。
この話は火口家でも側家でも今でも語り継がれているぐらいいいかげんで有名なエピソードらしい。その話も見事に一致したということで、今回希実が見つかったようなものだったらしい。
まぁいろいろ事情は分かったものの…
「あの、上原さん…。私たちこの子を後一年後には…」
「まぁ平たく言えば、王子様に変えないといけないわけで…」
この野生児を?この放置児を?この浮浪児を?
考えただけで…
ぬぉーーーーーーーーーーーーっ!!
と叫びたくもなる。
がそこは一応抑えている。
上村さんのしつけやマナーも大変だろうが…
私に課せられた任務がまた…
「あの…この…私立桃蘭学園って…」
来年、希実に受験させる第一志望がそこらしいが…
「火口家がある地元では有名なセレブ学校よ。「一に家柄、二に財力…」とか言われる有名なところだけど…」
え?じゃあ、二央が行ってるボンボン高校と似たようなタイプな学校ってこと?
なら、火口家なら余裕じゃないの。
「最近は試験の方も厳しいらしいから、どうかしらね。」
ウソ…まじですか?
小5の最後で九九もろくにできないとなるとそれは絶望的だ。
「第二志望が…星咲中等部で…」
「ああそこもかなり賢いところらしいわよ。」
この人地元じゃないのに、この辺りではない学校のことまで何でそこまで知っているんだろう?
「ああ私、あの七つの一族が各自愛用している学校のことは全部把握してるから、何でも聞いてちょうだい。
ただ、この一族女の子は公立中どまりなことが多々ある家庭が多いけどね。」
何なんだ?
結局、優遇されるのは男子のみってか?
最近はなんとか、そういう意味で安定はしてきたと思ったら、やっぱりそこを改善する気はゼロか…
取柄といえば、顔だけな浮浪児をこの一年で王子みたいにしろというのが無謀すぎる…
私はここ数年、こればっかりだ。はっきりいって家庭教師の仕事しかしていない気がする…
そして、私には…
「パパーーー」
三緑もいる…
あれ?三緑はどこから…?
「おいおい、俺はパパじゃないってーの!」
ん?
「パパ、パパー」
まずい…三緑ったら、希実君に絡んでいる…
あの不良小学生に絡んだら、何されるか…
「なんだー。お前かわいいじゃないかー。よしよし」
え?
意外にもかわいがってくれている。
どうやら希実は、この年で父性本能は強いらしい。
一般常識何も知らないから、まさかと思って心配していたが、希実は小さい子には優しいらしい。
正直、二央よりもあやしかたはうまいかもしれない。
「きゃっきゃっ」
「お前、誰の子だ?」
と聞いた途端、
「マーマー」
三緑は私を見つけたらしい。
「ん?」
希実も振り向いて目が合ってしまった。
「へぇ~先生子持ちだったんだー。」
「なーに?なんか問題ある?」
「いや、特にないけどさ」
そんなことより、三緑が簡単になついてしまうあんたの方が問題はある。
三緑にも本能で判るのだろうか?
希実が自分の登園の親戚であるということが。
「なんかすごいかわいい子だよな。こいつは絶対父親似だよなー。」
確かに父親似であるが、なんて失礼な。
三緑を他人に見せると、まずだ一声が「すっごいかわいいー」で、私が母親だと知ると「お父さん似ねー」と絶対言われるのが、毎回モヤっとするのが本音だ。
つまり私はこの子よりかわいくないのかーーー!?
と問いかけたくもなるが、悔しいけど顔の良さでは二央には勝てないのは現実だ。
それを受け入れ入る。
それに三緑は誰が何と言おうがかわいい。それは私も自慢に思うぐらいなので、一応納得はしている。
「んーでもこの顔、どこかで見た気がするんだけど…」
まずい。
希実君にこの子が火口家の血を引いてるとバレたら、どうなることやら。
「ママー」
「なぁに?」
三緑は希実を指さして、
「だーれー?」
最近は三緑もここまで喋れるようになってきた。
「んー、のぞみお兄さんよ。なかよくしようねー。」
「うん」
やっぱり小さい子はかわいい。
妹曜子が生まれてからというものの、小さい子が苦手になっていたが、もとはといえば私も子供は好きということを思い出しつつあった。
希実も根は悪い子ではなさそうだ。
ものすごくホッとしたが、問題はこの希実にどうやって勉強をやる気にさせるかである。
一応、学校では机に座っていたとはいえ、本当にただ単に座っていただけらしい。ずっと窓の外を見てよそ見ばかりしていたり、ひどい時なんか机に足をあげて座っていたこともよくあったらしく、本当に授業は何も聞いてなかったらしい。
希実は今も、キキやトキと同じ学校に籍だけは入れているものの、3学期ももう終わるという、かなり中途半端な時期だし、本人に勉強する気が全くないので、まだ一回も学校には顔出していない。というか、この先一年私が見るので、ずっと学校には通わせる予定はないらしい。
まぁどちらにしても、希実には一年生からの勉強をやり直させないとだめだということが判ったので、行かせる予定すらない。
「あのさ」
「なに?」
「あの子、月城さんのうちの子じゃないのか?」
「あの子?あの子って…」
「墓参りに来てたあの子。」
あーーーーーーー
そういえば…
キキちゃんは、月城家の代表のことして、あの場にデビューしていたんでした。
それはキキちゃん本人にも聞かされていないことでした。
これっていざ、話が食い違ってきたらまずいことになる…。
これも口止めしておかないといけないのか?
なんて説明すれば…
「あの子が月城家のお嬢様だと思ったら、いきなり現れた時に召使やってるじゃん。あれ、まじでびっくりした。」
そうだろうな…
まぁ一応、キキちゃんは月城の実の娘だけど、表では孤児で引き取られて、申し訳程度にメイドとしてお手伝いしているだけというせっていだからなー。
事情を説明するのも難しい。
「…まぁ事情はよく判らないけど、各家にいる11歳の子と言うのが条件だから、いいんじゃないの?」
「あーそうかー。なら問題ないかー。」
希実が天然で出来の悪い子で助かったと失礼ながら、ここではそう思えた。
まぁなるべくキキちゃんと希実はなるべく関わらせないように気を付けないといけないな。
そうそのキキも
12歳になった。
問題はその12歳の誕生日に起こった…
「だめっ!」
「何よっ!こんなのあんたにはもったいないわっ!」
キキとトキの喧嘩だ。
どうもキキが学校で友達がくれた誕生日プレゼントをトキが横取りしようとしていたのだった。
「いい!!?こんな立派な者、奴隷のあんたが持っていても意味がないわけ!」
「私、奴隷じゃない!」
「奴隷じゃないのー。ここでこき使われてるだけのー。」
「あなただって、今は同じ召使じゃないのー!!」
最近になってようやく、キキもここまえいい返せれるようになったが、ホントトキの方は相変わらずイヤな性格してる。
それを希実と三緑と三人でいる時に目にしてしまった。
「なんだあれは?」
希実からすると機器とトキのトラブルを目にするのは初めてだ。
「おいやめろよ」
よりにもよって希実はその渦の中にわざわざ突っ込んでいってしまった。
「のぞみくん」
希実が来たとたんにトキは態度を変えた。
もう、なんたるブリッコ。
もう本性はバレてるいうのに、切り替えは早い。
「ききちゃんがねー。ひどいのよー。これトキのなのにー取ろうとしたのよー。」
「そうなのか?」
「ちがうわ。これは私の…」
とキキが言いかけたとたん。
「あなたたちいいかげんにやめなさいっ!」
と一喝する者が現れた。
ララさんだった。
「帰ったのなら、早く着替えて仕事手伝ってちょうだい。」
「…はい」
「…わかったわよ……。」
二人ともララさんに怒られてかなりこたえたようだ。
そして、ララさんは床に落ちているプレゼントたちに目をやり、
「これは私が預かっておきます。」
「え?そんな…」
まだあけてもないのに、プレゼントを取り上げられてしまうなんて…。
「…それ……私のなのに…。」
キキはかなりショックを受けていた。
「いい!?今は仕事に入ることだけを考えて。わかったわね?」
「…」
「はぁい」
この時キキは返事すらしなかった。
逆にトキはおふざけ半分とも思えるような返事を二やつきながらしていた。
そのあと見逃さなかったのは、トキがキキの耳元でなんかこっそりなんか言ってすぐにその場を去っていったのは見逃さなかった。まるで「ざっまぁー」と耳元でいったかのような態度だった。
「もういや……」
「おい大丈夫か?」
キキもその場から、走り去っていった。
「なんなんだ?」
「あの子ね。今日誕生日だったのよ…。」
「え?マジか…」
希実はそのあと、部屋に閉じこもってしまった。
一応、夜からも二央たちと一緒に勉強時間だったんだが、今日の授業はいきなりサボられてしまった。
授業をさぼられてしまうなんて、初めての話だ。
それも何も言わないで…
「まぁあの野生児じゃな…」
と二央にまで言われてしまっていた。
「どうするの?」
と二人から問われているが…
「もうあれは、今なんか言っても無理だと思う。」
「だよなー」
「何せ二央。あんたよりてやいてるのに。」
「えー俺ってそんなにも手を焼いたか?」
「というか、あんた私にめちゃくちゃなことしておいて、自覚ないわけ?」
と言われて二央は一瞬だまったが、
「まぁいいじゃんかよー。俺のことはw」
って笑ってる場合じゃないわよ。
「でも、あの後食事も食べないでずっと閉じこもっているし、心配だわー。」
いったい何をしているのだろう?
あまりにも気になったので、勉強は中断して三人で見に行くことにした。
そしたら、ちょうど希実が部屋から出てきたのをみた。
あちらは私たちには気が付いていなかったらしく、どこかへ向かっていった。
どこに行くのだろう?
と思ったら、途中で小野坂さんがいて彼は何かをしゃべていた。
いつの間にかお礼を言うことを覚えたのか、希実は小野坂さんに一瞥をしてそのまま、走って行ってしまった。
私たちもそれを追いかける。
というか、今日授業をさぼったことは許さない!
少なくともその理由がはっきりわかるまで突き止めてやる。
と必死だった。
いきついた先は…
私たちの社員寮に向かう途中の渡り廊下だった。
そこにいたのはキキだった。
二人はすでに何か喋っていた。
「こんなので悪いけどさ…」
「え?」
どこから、出てきたのか?どこで手に入れてきたのか謎だが、希実はキキにかわいらしいブーケを渡していた。
「これって…?」
「おまえ、今日誕生日だったんだろ?」
「うん」
「おめでとう」
「…ありがとう……うれしい…」
なんかすごいものを見てしまった。
そして、うしろから
「キキさんモテモテですね。旦那様もキキさんには一番手を焼きそうです。」
ぬっとあらわれたのは小野坂さん。
「うわっ」
思わず声をあげてしまった。
さすがに二人とも私たちがこっそり見ていたことには気が付いてしまった。
「なんだよー!!?お前らーーー!!こっそり見てるんじゃねぇよーーーっ!!」
と希実から突っ込まれてしまった。
それへの突っ込みで
「やるねーおまえー。その歳でプロポーズかよー。」
「違うわーーー!!あくまで誕生日プレゼントだーーーっ!!」
そしてまた更なる突っ込みが…
「私、そんな素敵なプレゼントもらったことがなーーーーいっ!!」
とユキの一言。
「ユキ、そればっか…」
ホント毎度ユキはそれを言っている。
ユキも結構モテてるのにね…
どうもユキの周りには、うまいこと気が回せる男子はいないらしい。
あとで希実から聞いた話。
あのブーケは希実が作ったペーパーフラワーらしい。
他は特に何もできないけど、折り紙とか、紙を使った創作物とかは母親から唯一教えてもらったことらしい。のちに私たちも希実から、教えてもらうことになった。ホントに希実は指先は器用だった。
こんなに仲良くなったキキと希実だが、離れてしまうという運命がすぐそこにせまっているのであった。




