それぞれの一族たちの秘密
これで二回目だ。
結婚できる最年少16歳の結婚式を見るのは。
すっごい疲れたー。
確かに何もしなくても食事と寝床を用意されるここ数日は確かに楽ではあるが、そんな奇妙なイベントに参加させられたとなると疲労感は半端ない。
運がいいのか悪いのかわからないが、ユキとキキはあの時の花嫁は、あの時部屋を訪ねてきた令嬢だということは気づいていない様子だった。
この二人こそ、自分らが何もしなくても食事と寝床に困らない今の環境は快適でしかないだろう。現に月城家にいる時よりも生き生きしてる。
「私さー、結婚式なんて初めて見たー。」
「うんうん、すっごいきれいだったよねー。」
ホントずっとこうだ。
おそらくだが、この子たちは花嫁さんの衣装にしか目がいっていないのであろう。
いくら、見学席が約3階ぐらいの高さからとはいえ、もっとしっかり見ろよと思えた。
この子たちはホント無邪気にそんなことを話しているが、自分たちの結婚式はどうなるかなんて、今の振興では想像もつかないであろう。まさか、自分たちの夫に選ばれる男がかなり年の離れたおっさんになる可能性がでかいということに絶対に判ってないであろう。
かなり運よく、キキのお相手が数日前に一緒にダンスしていた洋生くんだったら、キキはめちゃくちゃラッキーではある。が、あの時の様子からして、その線はかなり薄そうだ。
でユキの方とは言うと。
少なくとも高校を卒業するまでは結婚は免除されそうだが、ユキのあの容姿。
それを売りにこれまた、とんでもないほど高い取引をすでにどこかの家としていそうではある。
考えただけでおぞましい。
私があと一年と少ししか、私はこの子たちとは一緒にいられない。
とりあえず、ユキのことだけは高校生にすることで、結婚を延長することはできたが、ユキが卒業するまで一緒にはいられない。
私も私でたまには三緑に会いに来ることはあるだろうが、
それだけでは彼女たちを守ることはできない。
あとリキは…?
滅茶苦茶にはなってしまったけど、それにリキの場合は意地でも大学まで行くとか言ってはいるけど、それでも月城から二十歳までに結婚させられるのであろうか?
もう、リキもユキもキキも全員はっきり言って、他人でしかないけど、若い女の子たちが自分の意志でもないのに結婚させられてしまう異常な家庭をみているとこのまま放っておくのはホント心苦しい。
そんな時だった。
コンコン
ドアをたたく音がした。
「失礼するよ」
部屋に訪ねて来たのはあの水谷幸助だった。
「あ、こんにちわ。どうされました?」
「こんにちわー」
他の三人も一応、幸助に挨拶。
「ちょっと君と話したいことがあってね。」
「え?」
私?
「あ、それと君たちにはこれ。」
白い布が被ったかわいらしいかごをテーブルの上に置いた。
「おいしいお菓子だよ。みんなで遠慮なく召し上がれ。」
白い布を取ると、かわいらしく焼きあがったクッキーやカップケーキがいっぱいつまっていた。
「わぁおいしそう。ありがとうございます。」
「おじさま。ありがとう。」
ユキとキキは、もうすっかりお菓子に魅了されていた。
私はといえば…
そのまま幸助に外に連れ出されていた。
またその時も二央はあまりいい顔しなかったが、二央も二央でここでの自分の立ち居振る舞いも十分に察しているゆえに仕方なく妹たちとお留守番であった。
「なんか二央くんもだけど、あの子たち二人ともホントに謙虚でよくできた子たちだね。」
場所を移して最初に何を話すかと思ったがこれだった。
私が育てたわけではなかったが…
「ありがとうございます。」
なんか、ほめてくれた感じだったのでそう言っておいた。
「ところで君は月城家とはどういう関係なんだね?」
そういえば、本当にあの時のダンスは咄嗟なことだったので、何も言ってはなかった。
「あの、あの時あなたはあくまで月城の娘と名乗れと言ってましたが、あなたには話しても大丈夫なのでしょうか?」
「あ、すまない。言い忘れてたね。でもまぁ私にはどちらにしても見破られてるよね?」
そりゃそうでした。
「心配しないで。誰にも言わないよ。むしろ、君にはこの世界に染まらないでほしいからこそ聞いているんだ。」
そればかりはホントらしい。
「私も紹介が遅れました。月城家では家庭教師として雇われています琴金星子と申します。以後お見知りおきを。」
「なるほど、君は二央くんたちの家庭教師だったわけだね。
まぁうちも含めだが、どこの家も各家で仕えている愛人や使用人等から代表で何人か参加させているから、そういう参加者も不思議ではないが…
月城くんの家はいろいろと参加者の扱いでかなり格差の扱いが歪すぎていて、毎回ヒヤヒヤしててね。」
確かにそれはある
「君は二央くんの家庭教師で二央くんから、見はられていたのは判ったけど、あの一緒に来ていたしのぶ君っていう娘はどういう立場なのかね?」
「しのぶさんは、うちのメイドですね。」
今回しのぶへの扱いはほとんど放置状態で、しのぶもかなり困っていた。
「なるほどだから、あそこまで雑だったわけか。」
「でもあの子、来年度からは月城家のメイドから、ボディガードに転身する予定なんですよね。」
「へぇあの子がねー。」
「はい、一応あの子、空手大会少女の部で一度優勝している身ですので、月城さんからはホントの意味で実力を買われてますよ。」
「そうか…ならそこまで放置してても問題なかったわけだな…。確かにあの場であの子に引っかかってた男は3人ぐらいいたな…。」
嘘ー、しのぶに言い寄ってた男があの場で3人もいたのか…
「なるほどねーじゃああの子はホントにおもしろすぎる意味でハニートラップだったわけだったか…
私も今回初めであの場に来た、君としのぶ君のことを心配しながら見張っていたのだけど、そういうことならね…。」
そうだ!
こうなったら私からも聞いてみよう。
「あの…」
「なんだね?」
とはいえ、何か聞きにくい…
「もうこの際何でも聞いてもいい…とまではいかないが…答えられる範囲でなら答えるよ。」
「まずあのパーティですが、何の集まりなんですか?」
「あああれか…まぁある意味身内同士のクリスマスパーティを兼ねた忘年会みたいなものだよ。」
「つまり、親戚同士での集いなのですか?」
「んーかといって親戚ってわけでもないよ。各家、元々ほとんど血はつながってないからね。」
「どういうことですか?」
「んーまぁ過去にあの集いの一族のどこかの家とどこかの家でつながりがあったとは聞いたことはあったけど、もう7代以上も先の話だったらしいので、かなり血は薄いからほぼ関係はないのだけどね。」
すごい続いてるのね。この家系…
「実はここ近年で、その身内同士でできた子が…
火口二央…
君の教え子くんだよ。」
「えーーーーーっ」
二央にそんな秘密があったとは…
てことは二央は、大金持ちのサラブレットでもあるわけか?
だから、養育費だってその火口家からたんまりもらっていたわけで、月城家でもあんなにも優遇されていたわけか。なんかいろいろ謎は解けた。
だから香奈江はあの時、あんなこと言っていたのか?
「彼は私たちの中では一番濃い血が流れている。
だからこそ、私たちの間では誰も彼に手を出すことは許されない存在なんだよ。」
「あのそれって…彼はこの先、子孫を残してはいけないとかそういうタブーがあるのですか?」
それってやばくないか?
もしあるとするなら、私までもが罪人ではないか?
ホントそこが疑問だ。
「いや。あくまで私たち一族同士でのタブーだから、全く持っての赤の他人との間にできた子なら、全く問題ないよ。」
一応ホッとした。
「ただ問題は火口家は残っているのが二央しかいないから、あの子との間にできた子は、絶対的に火口家に取られていく運命にあるけどね。」
って…
火口家どころかすでに月城家に取られてるんですが…
なーんてことは、こんな重々しい話の中で言えるわけがなかった。
「あのある意味どうでもいいことかもしれませんが…」
「なんだね?」
「火口家はもう、二央様しか残っていないとのことですが、その火口家からもあの集いに参加されていた方はおられるのでしょうか?」
「ああ、確かにあの子の母親の一乃さんは一人娘ですでに亡くなられてはいるけど、あの子の曾祖母と祖母が実はあの会場にいたよ。
まだ曾祖母である主様は、曾祖母ではあるけど、かなり若くてご健在でね。毎年ご婦人二人と召使一人とボディガードくん何人かで、参加されてるよ。まぁ火口家は毎年全員すぐに帰るけどね。」
なるほど…
「あの、二央のお母さまはどのようなお方だったのでしょうか?」
「ん?」
あ、しまった。思わず幸助の前で二央を呼び捨てに読んでしまった。
多分そこが違和感なのだろうな…
「あ、いえ。二央くんも早くにお母様をなくされてよく覚えていないとのことなので、もしご存じでしたら教えていただけないでしょうか?」
「ああそうなのね。
んー。
実は私もあまりよくわからないのだけど、かなり体の弱い方だったらしいよ。」
「ああだから…」
「そう。
それで、月城家の付近の病院にその病の名医がその当時いたとのことで、一乃さんは月城家に預けられることになってね。」
「まさか…」
「そうそこで、月城くんが一乃さんのことをいたく気に入ってしまってね…。」
「じゃあ、それが原因で…」
「一乃さんは月城の子を身ごもってしまって、生まれたのが二央くんだったわけだよ。
いうまでもなく、一乃さんは元々身体が弱かったので、ほとんど自分の命と引き換えに産後わずか七日後に亡くなられたよ。
ホントは病気を治すつもりで預かった身だというのに…本当にかわいそうだったよ…」
それって、月城が無茶なことをさせて、二央のお母さんを殺したようなものじゃないか!?
アイツやっぱり最低だ!
「まぁ一乃さんのあの美しさには誰も欲求を押えられないだろうから、仕方がないことかもだけどね。
だから火口家の女性は基本、外とは一切交流を持たないのだよ。
あまりにもきれいすぎて、異性から目を付けられやすくて、外に出れば簡単に襲われてしまうことなど、当たり前のようにあった一族だからねー。」
「交流を持たないって?それって今の社会では通用しないのでは?」
「ああ、もちろん学校には行ってるよ。男児はそこそこ自由な暮らししてるけど、女児は初等部の時から、超お嬢様学校にボディガード何人かつけてね。
ホントまるで皇族のお姫様扱いだよ。
住処もほとんど秘密の隠れ家みたいなところにあって、よほど縁がある人でもない限り近づくこともできない不思議な場所にあるらしいよ。
あの月城くんですら、一回も火口家の屋敷に入ったことはないらしいよ。
まぁあの主も一族も使用人たちも美形しかいない、というか、火口家の関係者はみんな美形しか見たことがないほどだ。あの火口家にお近づきになれるチャンスは、月城にとって一乃さんを預かったとき以外ありえないから、無理もない話でもあるんだよね。」
「それって?つまりは使用人まで顔で選んでいるわけですか?
「んー火口家曰く、そういうわけではないのだが、不思議なことに火口家の屋敷には、ある程度は顔立ちがいい人しかたどり着けないらしい。
火口家の婿入り嫁入り、使用人として雇われる第一次試験が火口家にたどり着くことができることという、奇妙な試験だしな…。」
なんだそれ?
「多分、君の一族の中でその屋敷に行けるとしたら、二央くんと上の妹さんぐらいなものだよ。」
「ユキのことですか?」
二央はまぁ完全に身内だからわかるけど、何でユキが?
「ああ、あの子ユキちゃんていうのか。
あの子は一乃さん付きの召使の子だよ。」
「え?」
「そして月城家の子供はたいていの子が主には似ず、母親似になるのがお約束だからね。」
でも三緑はなぜか二央に似てるけど…。
「月城くんね。一乃さんが亡くなった後に今度は火口家の召使にまで手を付けてね。
あの当時月城くんは、一時期私たちの間ではかなり破門寸前だったようなものだったよ。
あの美男美女の名門火口家の関係者3人に手を付けたのだから…」
「3人って…?」
「一乃さんとユキちゃんのおかあさんと、あと一人は一乃さんの家庭教師。
いずれもかなりレベルの高い美人さんたちよ。」
うわ…ホントめちゃくちゃだ。
これでまた、私はとんでもない秘密を知ってしまった。
ということは、以前月城が言っていた預言書とやらのことだが、二央には月城家と火口家の二つの予言書があるということになるわけか。だから、二央は18までは秘密なわけか。
「あの、このことはなんか二央本人は知らないようなのですが…」
「ああ、確か彼が18歳になるまでは明かしてはいけないと我々身内では言われてるね。」
「じゃあ、二央のお母さまに関しても…」
「なるべく、その日までは黙っていてもらいたい。
というか、もしそれを言ってしまったら、多分消される思って。」
やっぱりな…ほんと隠し事が多い家だ…
事情はどうであれ、二央がここではかなりの有名な存在であることは理解はできた。
「あの…その件についてわかりましたが…」
「まだなんかあるかね?」
もう、ありまくりだ。
「あの…あなたたち一族の結婚についてなのですが…」
「ああ、あれは確かに誰もが疑問だろうね。
あれはホントに勝手な話でしかないが、ほとんどはそこの家の主が勝手に決める。」
「特に意味もなしにですか?」
「意味があるかどうかは判らないが、ほとんどが政略結婚だね。
息子の方は判らないが、お嬢さんの方はだいたいそこの家の主が決めた相手とある日突然結婚させられるパターンが多いね。」
まぁ私たち身内目線、いい年しても独身娘は一生独身コースをたどるらしいけどね。
「私も突然でびっくりだったよ。まぁ私の場合は契約結婚だったんだけどね。
あの当時、離婚したばかりで養育費が必要で、香奈江の母親と結婚する代わりにその養育費を払うという契約だけで結婚した。
それも奇妙な話で、実の子供がいるなら、子をなせる身体だとか言われ、まさにそれなら好条件と言われて、16歳になったばかりの少女と結婚しろとまで言われたのだから…。
ある意味最低な奴だよ。私も…。」
ああ、ここまでは水谷家の方針通りだ。
他の家はよく判らないが、水谷家はなぜか正婿との間に子供をなせたことがないらしく、どうしてもそういう結婚の形になると。
「私も香奈江の母があまりにも不憫すぎ思ったよ。
あ、ここからの話は聞かなかったことにしてほしいんだけどね。
実は私、香奈江の母とはほぼ夫婦関係を持たなかったんだよね。」
「え?」
この人やっぱりなんか違うと思ったら、
「実はあの時、香奈江の母には思い人がいてね。
香奈江の母と結婚式を挙げた夜、こっそりその彼を庭まで呼んでおいて、入れ替わったのだよ。」
「それって!?」
「うん、初めての夜ぐらいは、好きな人と過ごさせてあげたくてね。
水谷家の跡継ぎは16歳になった夜に自分の操をささげないといけないという決まりがあったから、それならと思って初夜権を彼に譲った。」
まぁ初めて会った時から、イヤな感じが一切しなかったと思ったら、この人はかなり粋なことができる殊勝な人である。
「でも結局…お義母様にはバレてしまって、お叱りは受けましたわ…」
「でもバレてしまったんだったら別に隠す必要は…。」
「まぁこういう家だからね。表向きだけでもそういうことにしておかないといけないので、そこはさっしてもらいたい。」
うわ…
そういう美談ですら、隠しておけだなんて、かなり酷な話である。
「じゃあ、ユキやキキ。あの子たちの結婚も…」
「放っておいたら、月城の言いなりだろうな…。
特にあのユキという娘は火口の関係者ゆえにかなり高値で売れる存在だ。
あの子今いくつだ?」
「15歳…来月で16歳…」
「なんだって‼!!?」
「香奈江ちゃんと同じ学年ですね。」
「それやばいぞ…。あの子まさか学校行ってないとかじゃないよな!?」
「なんとか今高校生です。」
「ああ。それならまだ時間はある…。うちは掟があるから学生でも無理だけど、月城の家では学校に通っている限りは嫁には出さないからな。」
まぁそれを回避するためにあの子には無理やりにでも高校に行かせたのだ。
「でも、油断はできない。あの子の高校卒業した夜に決行される可能性は大いにある。」
ああそこは考えてなかった…。
「やっぱり、あの子にも現実教えた方がいいですかね?」
「現実って?」
「ここの一族たちの異常な結婚制度についてです。実は私も月城家に来てすぐぐらいにあの子のすぐ上の姉が一人16歳でいきなり嫁がされされました。それも相手は61歳で45歳の歳の差結婚で、私はホントにただただ驚くばかりで。」
「月城…やっぱりあいつ最低だな…。俺も香奈江のことすら守れない最低な親だがな…」
そして…
そこへとんでもないことが起きた…
「幸助君ーーー。君なんであのパーティのあと残らなかったのーーーー?」
変なオヤジが現れた。
「申し訳ないが、私はあのような品のないものには興味がなくてね。」
「そまたまたーーそんなもったいないこと言わないでくださいよー。
いやぁーーーあのあとのショーはマジで最高だったよーーーー。」
すごいテンションが高い変なオヤジだ。
「なんだっけ?今回の目玉は「キンキンちゃん」って子。
もうあのニコニコしながらのあのス〇リップ劇場は最高でしたわーーー。」
「!!!?」
その言葉を聞いて私は凍った。




