学友
魔法学校に入学したものの、魔法が使えない俺は周囲から浮いた存在だった。得意不得意はあっても使えるのは当たり前の環境だから、当然といえばそうなんだけど。
「入学したばかりの頃は、本当に肩身が狭かったよ」
「途中で辞めようとは思わなかったのですか?」
「両親が頑張って入学費用を出してくれたからね。それに一緒に入学した幼馴染みのイルマって女の子がいて、彼女がフォローしてくれたから何とか続けられたんだ」
幼馴染みの女の子に助けてもらったなんて少し恥ずかしいけど、ユーリさんがあまりに心配そうに聞いてくるので素直にそう白状する。
「へぇ……幼馴染みの女の子。フリッツも意外と隅に置けないじゃない」
「ティルが想像しているようなものじゃないと思うよ?」
ティルに釘を刺しつつ、もう長く会っていない幼馴染みの姿を思い出す。
「同い年とは思えないくらいしっかりした子でね。勉強を教えるのも上手くて、卒業したら先生になるって言ってたけど……元気にしてるかなぁ」
「それが、アンタの魔法式を褒めてくれた子?」
「いや、それは別だね。褒めてくれたのは同級生だったローランっていう男子なんだけど、これがまたすごい優秀なヤツでさ。最初はすごい目の敵にされてたんだよね。俺自身も優秀なヤツにはコンプレックス持ってたし、お互い苦手だったんだろうね」
「でも、褒めてくれたんでしょ?」
「まあ本人的には、褒めたつもりはないんだろうけど」
「どういうこと?」
俺の言葉にティルは意味が分からないといった感じで首をかしげる。
「クラスメイトが俺の悪口を言ってるのを、たまたま聞いちゃってさ。魔法も使えないのに学校に来るな、って。でもそこへローランが現れて、こう言ったんだ」
――僕はあれほどの魔法式を作れる奴が、やる気を出さないのがムカつくよ。
「ってね」
「それ、褒められてないでしょ?」
「俺も話していて、もしかしたらそうかなって思ったところだよ……」
なんか好意的解釈をして、自分の精神状態を保ちたかっただけに思えてきたぞ。
「その後ローランさんとの仲はどうなったんですか?」
だけどユーリさんは俺を気遣ってか、話の続きを促してくれる。
「劇的な変化はなかったですけど、苦手意識はなくなりましたね。むしろはっきり言ってくれたのが嬉しくて、俺の方から積極的に話しかけるようになりましたよ」
「それ、ローランってヤツからしたら鬱陶しいだけじゃない?」
「そうだったと思うよ。どうやったら魔法を使えるようになるか、何度も聞きに行ったりしたし。でもローランは魔法の制御より構築の方が上手かったから、『今ある魔法を制御するより新しい魔法でも作った方が早い』って言われたっけか」
「へぇ。フリッツの才能を見抜いたのといい、新しい魔法を作る提案といい、アンタの言う通りかなり優秀みたいね。そのローランとかいうのは、今どうしてるの?」
「卒業後は国の魔法師団に入るって言ってたから、多分そこの所属じゃないかな?」
「魔法師団?」
「エルドリアの軍隊だよ。魔法国家だから軍隊の主力も、戦士や騎士じゃなく魔法使いなんだ」
「私は姉様の代わりに何度か世界会議に出席しておりますが、エルドリア国の護衛は人間にしてはかなり高い魔力を持っていたかと思います」
そういえば以前、エレノアが『ノークリッドは代表でなく代理人が会議に出ている』って言ってたな。つまり、ユーリさんがその代理人だったのか。彼女から見ても高い魔力ってことは、やっぱりエルドリアの軍は魔法面でかなり優秀なんだろう。
「一国の軍隊に飼わせたままにしておくには、少しもったいないわね」
「飼わせるって……」
ティルの言葉に苦笑しつつ、俺も少しもったいないと感じていた。あのまま成長していたら、きっと世界でも活躍できる人物になっていただろう。だけど――
「真面目なヤツだからさ、本人が国の為に戦う道を選んだのなら応援したいなって思うよ。それはそれとして、借りは返しておきたいと思ってるけど」
「借り?」
「実は俺が師匠の弟子になれたのって、ローランのおかげなんだ」
そう言うとティルは一瞬ぽかんとした後、ため息をついて頭を抱えた。
「……それは確かに大きな借りね。どうしてそうなったのか分からないけど」
「師匠って俺が通っていた魔法学校の関係者らしくてさ、卒業式の日に来てたんだ。それをローランが捕まえて、無理やり頼んでくれたんだ」
「で、アンタはせっかく弟子になれたのに数年後に冒険者になったと」
「う……」
それについては本当に反省してる。あのまま師匠のもとで修行を続けていれば、今頃もっとまともに魔力を制御できていたかもしれないしね。
ローランがこのことを知ったら、間違いなく激怒するだろう。
「でもアンタが冒険者になったおかげでアタシと会えたわけだし、これ以上は何も言わないでおくわ。それに、そろそろノークリッドに入るみたいだしね」
「え?」
ティルの言葉に反応して外を見ると、いつの間にか国境の関所が遠くに見えていた。どうやら、昔話に浸っている時間は終わりらしい。
ローランにまた会えたとき、胸を張って謝れるようにしよう。そのためにも——このイーストリア大陸の問題を、早く終わらせなければ。
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