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魔力タンクと蔑まれた魔法使い、魔力で強くなる魔剣を拾う  作者: マコト
シエラ/ノークリッド編

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昔日の思い出

「し、失礼致しました……」


 しばらくして泣き止んだユーリさんは、よほど恥ずかしかったのか手で顔を抑えて真っ赤になっていた。こうして見ると、最初の印象からガラッと雰囲気が変わった。


 すごく大人びた人だと思っていたけど、どうやらこっちが本来の姿らしい。


「ふふ、生まれたばかりの頃のセリカを思い出すわね」


 そんなユーリさんの様子を見て、微笑ましそうにティルがそうこぼす。


「姉さ……女王セリカをですか?」


 いまセリカさんのことを姉と言いかけたんだろうか? 精霊に血縁関係があるのかは分からないが、先に生まれたなら確かに姉という立場になるのかもしれない。


「あの子は特別な存在ではあったけど、それ故に孤独だった。だから感情の出し方があまり上手くなかったのよ。でも不思議とアタシによく話しかけてくれたわね」


 懐かしそうに当時の思い出話を語るティル。ユーリさんは興味深そうに話を聞きながら、ときどき驚いたり、嬉しそうに目を輝かせたりしていた。


「そうでしたか。女王セリカにもそんな時代があったのですね」


「セリカのこと、普段通りに呼んだらどう? 今は使者って訳じゃないでしょう」


「……はい」


 ティルに指摘され、僅かな躊躇いはあったもののユーリさんは頷いた。


「今の姉様(ねえさま)は誰からも愛され、国民からの信頼もとても厚いです。それに普段は忙しく話せる機会は少ないですが、僅かな時間を見つけては私に会いに来てくれる優しい方なのです。だから、そのような時代があったのは意外でした」


 言葉の抑揚は控えめだったが、その口ぶりからは、セリカさんへの深い敬意がはっきりと伝わってきた。──きっと、本当に大切に思っているのだろう。


 それほど強い気持ちがあるなら、さっき涙がこぼれてしまったのも無理はない。


「大丈夫、だよな」


 ユーリさんの想いを知ると、神樹の浄化は絶対に失敗できない。なんか不安になってきたし、魔法式に問題がないかもう一度見直しておくことにしよう。


「大丈夫ですよ、フリッツ様。私も先ほど確認しましたが、それは魔法式として完璧な出来です。そうですよね、ティルヴィング様?」


「えぇ。というか、なんでそんな才能を今まで隠していたのよ……」


「いや、別に隠していたわけじゃないんだけどね。人に見せる機会もなかったし、見せたとしてもバカにしかされなかったからさ。まあ、役に立たなかったんだよ」


 魔力タンクと呼ばれていた頃は、ひたすら目立たないように生きてたからなぁ。友達と呼べるのも幼馴染みが一人と、あとは学生時代に出会った――。 


「あ、そう言えば前に一度だけ魔法式をすごい褒められたことがあったよ。学生時代の友達なんだけど、魔法にはかなりうるさいヤツでさ。まあ褒めてくれたのは、後にも先にもそいつだけなんだけどね。もうかなり前だから、すっかり忘れてたよ」


「へぇ……ガザックの他に、アンタの才能に気付いていたニンゲンが他にもいたのね。そいつ、なかなか見どころがあるじゃない」


 俺の昔話に、珍しくティルが興味を示す。そういえば彼女と出会ってからしばらく経つけど、あんまり昔の話はしたことが無かったな。


「フリッツ様はどんな所で魔法を学ばれたのですか? これだけの魔法式を考えられる方なのですから、さぞ専門的なところで学習されたに違いないでしょうが」


 ユーリさんに期待されている気がするけど、そんな立派な過去があるわけじゃない。俺が魔法の基礎部分を学んだのは、故郷にあった普通の魔法学校だ。


 まあ普通とはいっても、入学するまでには色々あったんだけど。


「……まだ着くまで時間がありそうだし、少しだけ昔話に付き合ってくれる?」


 二人が頷くのを確認すると、今から六年ほど前を思い返しながら口を開く。


「俺の故郷は西大陸ウエストリアから北に行ったところにある、エルドリアって島国なんだ。その国の辺境にある町の、ごく平凡な一般家庭の生まれだよ」


「実は王族でした、とかは?」


「いや、王族はクロエとエレノアだけで十分でしょ」


 ティルの質問に苦笑しながら返す。まあ冗談だって分かってるし、聞いた本人も「でしょうね」とだけ言って直ぐに聞き役に戻ってしまった。


「これでも昔は勇者になりたくて、剣ばっかり振ってたんだ。だけど適正は魔法使いだって聞いて、すごく落ち込んだよ。しかも何故か魔法が使えないしさ」


「それでもティルヴィング様に見出されたということは、相当な努力をされたということですよね? それも常人には計り知れないような」


 ユーリさんが期待するような視線をむけてくれるが、そんなことはない。


「実はティルと出会う前は、努力はあまり……。あまり言い訳にしたくはないんですけど、やっぱり魔法が使えないことでどうしても頑張る気になれなくて」


「そ、そうだったんですか……」


「がっかりさせてすみません……。でも俺が落ち込んでいるのを見かねて、両親が貯金をほとんど使って地元の魔法学校に入学させてくれたんです。地方の学校とはいえ学費は安くないのに、本当に頭が上がりませんよ」


 思えばあれが人生の転機だったのかもしれない。あの時、あの場所がなければ、今の自分はきっとなかっただろう――そう強く思えるほどに。

読んでいただきありがとうございます!


少しでも「面白いかも」「続きが気になるかも」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】から評価して下さると嬉しいです。


少しでも皆さんに面白いと思って貰える物語を作ることが出来ればと思います。応援宜しくお願い致します。

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[一言] そういう過去が。
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