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魔力タンクと蔑まれた魔法使い、魔力で強くなる魔剣を拾う  作者: マコト
シエラ/ノークリッド編

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分かたれし者

「ティル、あの使者の人がどうかしたの?」


「もしかしたら……いえ、本人に直接聞くのが早いわね」


「あっ、ちょっとティル!」


 何やら思うところがあったのだろうが、俺の制止も聞かずティルはユーリと呼ばれる使者の少女に歩み寄っていった。それを見てすぐさま護衛の男性が反応するが、ユーリさんに手で止められ剣に伸ばしかけた手を戻した。


「ふぅ……」


 何事も起こらずに済んだが、心臓に悪い。


 俺やエレノアも反応は出来ていたが、会談の場で騒ぎを起こすのはさすがにまずい。それにせっかくの機会を台無しにする訳にはいかないのだから。


 しかし、そんなこっちの心情もどこ吹く風といった感じにティルは歩みを進める。

そして何事も無かったかのようにユーリさんの前にたどり着くと、とんでもないことを言い放ったのだ。


「アナタ、神樹の精霊ね」


「……え?」


 神樹の……精霊? 精霊というと、おとぎ話の中に出てくるような、あの?


「はい。では貴女様がティルヴィング様ですね?」


 そしてユーリさんの方も、ごく自然に肯定の意を示した。というか、ティルのことを知っている? どういうことだ、二人はお互いを知っていたのか?


「ごめんティル、いまいち話が見えてこないんだけど……。神樹の精霊ってどういうこと? あとユーリさんも、ティルのことを知っている感じだし」


 魔剣ティルヴィングの存在自体はエレノアも最初から知っていたし、ユーリさんが名前を認識していたとしてもおかしくはない。


 しかし使者として訪れた場所に偶然居合わせた、見るからに人間の少女をティルヴィングだと見抜くことが出来るとは思わない。


「はいはい、アンタにも分かるように説明してあげるから。それに、どうやらこの子はアタシに会いに来たみたいだしね」


 そう言ってティルはユーリさんを一瞥する。ユーリさんはそれに小さく頷くと、未だ驚きの最中にある俺たちを余所に静かに椅子へと座った。


 こうして俺たちはノークリッドがこの状況で使者を送った、本当の思惑を聞かされることになるのだった。



「まず最初に確認したいんだけど、ノークリッドの女王セリカってのは『あの子』のことなのね?」


「はい、さようでございます。少し前、女王セリカはこの大陸にティルヴィング様の気配を感じ取られました。そして貴女様ならまずシエラに向かうだろうとのことでしたので、私がお迎えに参った次第でございます」


「なるほどね」


 さっそくティルとユーリさんが意味深な会話を繰り広げているが、とりあえず今はただ黙って様子を見守ることにする。


「つまりノークリッドが閉鎖的な国なのは、アタシのせいってことね」


「いえ、国を作ったのはセリカの判断です。貴女様に責はございません」


「それもあの子なりにアタシの言い付けを守ろうとしたからでしょう? なら、それはアタシが負うべき責任よ」


「ですが……」


「それよりアナタ――ユーリはいつ生まれたのかしら? 少なくとも、マリク達と旅した三百年前はいなかったと思うけど」


「国を興した際、セリカが神樹の管理をしている間に政治を行う者が必要でした。それで女王の名代として巫女である私が生み出されたのです」


「そういうことね。納得したわ」


 どうやらティルの中では、一通り事情は飲み込めたようだ。もうそろそろ話に入っても良さそうだろうか?


「じゃあフリッツも聞きたそうな顔をしてるし、そろそろ説明しようかしらね」


 まさに気持ちを読んだかのように、ティルがそう言い放つ。


 わざわざ俺を名指ししなくても……。そう思いつつも顔を引き締めると、それを待っていたかのようにティルが説明を始めた。


「まずはノークリッドの女王セリカについて。彼女はかつて神樹が魔素に汚染された時、本体である樹から切り離され生まれた存在よ。分かり易い言葉で言うと精霊ね」


 ユーリさんだけでなく、女王であるセリカさんも精霊なのか。魔素に汚染された時に生まれたってことだから、神樹自身の防衛本能みたいなものが働いたのだろうか。


「そして前にも言った通り、アタシは神樹の存在を歴史から抹消するように言った。神樹を守ってきた部族と、神樹自身から生み出されたばかりのセリカに」


 ということは、つまり。


「ノークリッドが閉鎖的な理由って……」


「神樹の存在を外に漏らさない為でしょうね。国を興したのも、神樹のある場所を領土として外からの侵入を防ぐ為でしょう。だからアタシのせいだってことよ」


 そういうことだったのか。


「でもティルがそう言ったからこそ、今まで神樹のことは外に漏れなかった訳でしょ? ならやっぱり必要だったんだよ」


「その通りです、ティルヴィング様。貴女様が気に病むことでは決してありません」


 俺の言葉にユーリさんも直ぐさま同意してくれる。心なしか、その言葉は先ほどまでよりも実感がこもったもののように感じられた。


「……まあ、一つの意見として心に留めておくわ」


 やがて渋々いった感じで、俺たちの言葉を受け入れるティル。本人的には納得してないだろうが、俺はティルの行動に間違いがあったと思わない。ダンタリオンが余計なことをしなければ、今も神樹の存在は明るみになることはなかっただろう。


 セリカさんとユーリさんの生い立ちが分かったことで、ようやく大まかな流れが見えてきた。もう少しティルの話を聞けば、次にやるべきことも見えてくるだろう。

読んでいただきありがとうございます!


少しでも「面白いかも」「続きが気になるかも」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】から評価して下さると嬉しいです。


少しでも皆さんに面白いと思って貰える物語を作ることが出来ればと思います。応援宜しくお願い致します。

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[一言] 忸怩たる思いでしょうが。
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