王都からの来訪者
ちょっと納得がいかない部分があるので、後で編集するかもしれません……。申し訳ないです。
「兄ちゃんたち、ノークリッドに行くの?」
と、それまで静かに俺たちの会話を聞いていたルカが口を開いた。
「今起こってる問題を解決するには、そうする必要があるんだけど……」
ベッドに横になりながら、こちらの話に耳を傾けていたステファンさんに目をやる。状態はひとまず安定したが、まだ完全に治癒したとは言えない状態だ。
それに、他の人たちはまだ目覚めてすらいない。
今この町を離れてしまったら、眠ったままの人たちを看病できるのはルカだけになってしまう。こんな小さい子供に、そこまで責任を負わせる訳にはいかない。
「みんなが回復するまでは、もう少しこの町にいるつもりだよ」
俺がそう答えると、ルカは安心したようにほっと息を吐きだした。口には出さなかったけど、やはり内心は不安だったのかもしれない。
「しかし、食料はどうするフリッツ? 船から持ってきたものはあるが、町全体を賄うとなるとそこまで余裕はないぞ」
「そうだね……」
エレノアの言う通り、船から持ってきた分だともって数日だろう。
「浄化魔法の範囲内だから、今この町にある食料なら食べても問題ないわよ。土壌も回復してるだろうから、新しく生産する分にも問題ないわ」
俺が困っているのを察してくれたのか、ティルがそう補足してくれる。
「そっか。別に人だけを浄化した訳じゃないもんね」
だが、そうだとしても長期間は難しいだろう。新たに生産するにも時間がかかるし、問題の原因を解決しないと結局はジリ貧になってしまう。
「まいったな」
解決するべきことが多すぎて、何を優先すべきなのか分からなくなってきた。せめて時間か人、どちらか一方でも余裕があれば――そう考えていた時だった。
「……ん?」
ふと、エレノアが何かに気付いたように首をひねった。
「どうしたの?」
「今、馬の走る音が聞こえた」
「え?」
言われて耳を澄ませると、数秒待ってからようやくそれらしい音が聞こえてきた。
「どうやらこっちに向かってきてるようだな」
俺には何の音かすら判別できないが、エレノアは距離や方角まで分かっているようだった。でも、今このタイミングで村を訪れる人なんているだろうか?
もしかしたら馬ではなく、四足歩行の魔物である可能性だってあるかもしれない。
「ちょっと様子を見てくるよ。ティル、一緒に来てくれる?」
「えぇ」
あまり考えたくはないが、もしこちらに敵対するような存在ならここで迎え撃つ訳にはいかない。出来るだけ拓けた、周囲に被害の及ばない場所に移動しないと。
「待てフリッツ、私も一緒に行こう。足音は一つではなかったし、万が一に備えて盾役が必要だろう?」
俺とティルが外に向かうとすると、エレノアがすぐさまそう申し出てくれた。
「盾役って……。でもありがとうエレノア、頼りにしてるよ」
相手がバルディゴの洞窟で戦ったような魔獣なら、確かにエレノアがいないと厳しい戦いになってしまう。一人で様子を見に行こうとしたのは、少し早計だったな。
「では、お二人が出かけている間はわたくしがしっかり皆さんを守ります!」
そしてクロエがそう言ってくれることで、安心して様子を見に行くことが出来る。
「いつも留守番ばかりでごめんね」
「いえ、大丈夫です! 人々を守る――それがわたくしが目指す勇者の姿なので!」
真っ直ぐな彼女の答えを聞いて、俺は改めて気を引き締め直す。大丈夫、出来ることからやっていこう。そうしていけばきっと、いい結果につながるはずだから。
※
ステファンさんの家を出ると、周囲の様子を伺いながら足を進める。
途中で馬の足音は聞こえなくなってしまったが、エレノアがおおよその位置を割り出してくれたので困る事はなかった。そして――。
「フリッツ、あれを見ろ」
「あれは……」
町の入り口付近で、鎧を身に付けた男たちが集まって話しているのを発見した。
「兵士かな? 鎧に紋章が付いているけど……」
「あれはシエラの国章だ。おそらくシエラの正規兵だとは思うが」
「なら出て行っても問題なさそう?」
「念のためシエラ兵を装った野盗である可能性も考慮しておこう」
「了解」
エレノアの注意を受け、警戒はそのままに男たちの方へと歩き出す。すると向こうもこちらの存在に気付いたようで、俺たちを見ると驚いた表情を浮かべた。
こちらから何か話しかけた方が良いだろうか? そう思っていると、数人いた男たちの内の一人がこちらに駆け寄ってきた。
「キミたち、この町の者か!?」
恐らくリーダーと思われる男性が、俺たちの前までくるとそう話しかけてきた。どうやら野盗ということではなさそうだ。
エレノアに視線で確認を取ると頷いてくれたので、こちらも応じることにする。
「いえ、俺たちは北大陸からやってきました」
「北大陸? 今は外からの入国は禁止されているはずだが」
「えっと、それはですね……」
訝しむ兵士の人に、俺はこれまでの経緯を簡単に説明した。
「大魔導士の後継者に聖女の血を引く者……? それに疫病問題の解決をする為にこの大陸まで来たって、それは本気で言っているのか?」
説明を聞いた途端、兵士の人の視線が疑わし気なものになる。まあ自分で説明しておいてなんだけど、こんな話そう簡単に信用されないよなぁ。
だけど、こういう時の為に対策は用意してきている。
「今回の件を依頼してくれたマリアガーデンの女王、エリュシカ様から親書を預かってきています。それを見て頂ければ……」
「マリアガーデンの……? わかった、少し確認させてもらおう」
女王様の親書を差し出しすと、兵士の人はそれを受け取り直ぐさま裏面を確認した。すると、そこに押されたマリアガーデンの紋章に気付き目を見開いた。
「これは確かにマリアガーデン王家の紋章……では本当に大魔導士の?」
兵士の人はしばらく悩んだ様子を見せていたが、ややあって口を開いた。
「一つ確認させて欲しい。さきほど疫病問題を解決する為この大陸に来たと言っていたが、この町の住人に何か治療効果を行っただろうか?」
「はい。町の人たちは魔素を含んだ食物を口にしたことで中毒症状になっていたので、浄化魔法を使って治療しました。これ以上悪化することはないと思います」
「やはりそうか! 前にこの町に来たときよりも住民の症状が改善していたからもしやと思ったが……。では、もしかしたら他の患者や我が王も……」
俺の答えを聞くなり、兵士の人は何やら呟きながら考え込んでしまった。
「あ、あの……」
「あぁ、すまない。だがまさか治療法があったとは……もう少し詳しく話を聞かせてもらえるだろうか?」
「分かりました。ここから少し歩いたところに、昏睡状態から回復した人の家があります。治療を行った子もそこにいるので、来てもらえますか?」
「承知した。こちらとしても回復した住民や治療を行った者から直接話を聞けるのは、願ってもないことだ」
こうして俺たちは兵士の代表であるその人と、ステファンさんの家まで戻り詳しい事情を説明することになった。




