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魔剣士の戦い方

「おーい、フリッツ先生も飲んでるかー!」


「もう十分飲んだよ」


「何でぇ、もうちょっと付き合ってくれてもいいじゃねぇか!」


 ベロベロに酔っぱらったタイガを適当にあしらいつつ、宴会場となった村長の家から出る。そろそろ気温が高くなってくる時期だが、さすがに夜はまだ涼しい。


 風にあたりながら酔いを少し覚ましていると、村長の家からエレノアが出てくるのが見えた。向こうもこちらに気付いたのか、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「フリッツ、ここにいたのか」


 普段は軽鎧を身に着けていることが多いエレノアだが、今はペスタの布で作られた服を纏っている。ペスタにいた時はサーニャも良く身に着けていたので、おそらく彼女から借りたのかもしれない。それくらい二人は仲良くなっていた。


「な、なんだ……こっちをジロジロと見て。そんなに似合わないか?」


「え、いやそんなことないよ! よく似合っている」


「そ、そうか……。故郷にいた頃はこういう服を着る機会も多かったが、バルディゴの客将になってからはずっと鎧だったからな。たまにはこういうのもいいだろう」


 ふふ、と笑みを浮かべながら軽やかなステップでくるりと一回転するエレノア。その仕草はとても様になっており、育ちの良さが窺えた。


「じゃあマリアガーデンに着けば、もっとオシャレなエレノアを見れるってこと?」


「なっ! そ、そんなことより……お前何か悩んでいないか?」


 俺の返答が予想外のものだったのか、少し焦ったような表情でエレノアが話題を変えてきた。というか、やっぱり傍から見ていてもバレてたんだなぁ……。


「まあうん、戦い方についてちょっとね」


 情けないけど、バレているなら洗いざらい薄情して相談にのってもらうことにしよう。戦闘時の立ち回りなら、エレノアから学べることは多いはずだ。


「ふむ、立ち回りについてか……。今おこなっている稽古は剣術の基礎だけだし、立ち回りとなると話は違ってくるか。すまない、そちらも考えてやるべきだった」


「いや、そっちは十分に助かってるよ! ただ、それだけじゃ足りな気がしてさ」


「そうか。しかしそうなってくると、今お前に教えているバルディゴ流は少し相性が悪い気がするな」


「相性?」


「あぁ。バルディゴ流はどちらかというと、技よりも力で攻める剣術だ。それも一つの戦い方だが、立ち回りに関してはあまり考えられていないんだ」


 そういうことか。


 まあ俺自身も元が魔法使いだから力も強い訳じゃないし、重たい装備をつけて戦うような体格でもない。相性が悪いというのは、確かにその通りかもしれない。


「なら仕方ないか。エレノアが教えてくれるバルディゴ流の剣術だけでも充分に為になってるから、そこから自分なりに立ち回りを考えてみるよ」


「まあ、そう結論を急ぐな。バルディゴ流は相性が悪いかもしれないが、私はもう一つだけお前に教えられる剣術があるんだ」


 諦めかけた俺にエレノアがそう言って待ったをかけた。


 もう一つの教えられる剣術? それって――。


「もしかして、前に見せてくれたマリアガーデンの剣術?」


「覚えていたか。そう、バルディゴ流とは真逆の力でなく速さで戦う剣術だ。マリアガーデンは女性が多い国だからな。大剣ではなく細剣を用い、出来るだけ素早い攻撃を何度も繰り出す剣術だ。魔法使いのお主には、こちらの方が合っているだろう」


 話を聞いた感じだと、確かにそっちの方が自分に合っている気がする。


 ただバルディゴにはそれなりに長い期間いたから、もう体がある程度バルディゴ流の型にはまってしまってるんだよなぁ。いきなり覚える流派を変えたら、果たして自分の体は上手く対応していけるだろうか。


 いや、それでもエレノアだってそれは同じだ。そうとう厳しい鍛錬を積んだのだと思うが、今の彼女は見事に真逆とも言える二つの流派を使いこなしている。俺もそれくらい自分を追い込んで、戦う術を身に付ける覚悟が必要なんだと思う。


「うん。エレノア、次の訓練からはマリアガーデン流を教えてくれないか?」


「もちろんだ。それにな、マリアガーデンに着けば私よりもさらに教えるのに適した人物がいる。私に剣を教えてくれた師匠でもあるのだがな」


「へぇ、やっぱりエレノアにも師匠みたいな人がいたんだ」


「あぁ。今戦ったとしても、手も足も出ないと思うがな」


 それほどの実力者なのか。


 エレノアがここまでいう程の人物なら、きっと歴戦の猛者なんだろう。


「俺も早くその人に会ってみたいなぁ。まあ、稽古をつけてくれるかまだ分からないけど……」


「なに、私からも口添えするさ。それに基本的には優しいお方だ。まあ訓練は厳しいものになるかもしれないが……」


「それこそ、望むところだよ」


 先行きが不透明だった鍛錬方法に、新たな光明が見えたのだ。今はそれだけで十分な成果だと言えるだろう。後は実際に行ってみたからのお楽しみだ。


 その後、俺たちは村長の家へと戻り夜が明けるまでの楽しい時を過ごした。そして翌日の昼、第二の故郷とも言えるペスタを出発しマリアガーデンへと出発した。

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