名を背負う
間が空いてしまい申し訳ございません。
就活の結果アニメや映像関係の脚本をフリーで受けることになったのですが、契約するに当たって小説投稿サイト等での掲載がどういう扱いになるのかという確認に少し時間がかかってしまいました。
結果としてアニメ、映像、動画等でなければOKということになりましたので、今後もお付き合い頂ければ幸いです。
「本当のサーニャ・ハウメルさん……わたしの命を守ってくれた人」
師匠の言葉を受け、噛みしめるようにそう呟くサーニャ。出自が分かったとはいえ、十代の女の子が受け止めるにはあまりにも辛い事実だろう。
そんな彼女にどう声をかけるのが正解なんだろうか? そう思っていると、サーニャは決意したような表情で口を開いた。
「ガザック様、お願いがあります。わたしに、これからもサーニャ・ハウメルの名前を使わせては頂けないでしょうか?」
「これからも、彼女の名前を? ……なるほど、背負われようと言うのですな。彼女の名を」
師匠は少し驚きを見せたが、直ぐに彼女の想いを読み取ったようだ。
「はい、わたしにはセーラという本当の名前があって、わたしの本当のお母さんがつけてくれた大切な名前であることもわかっています。それでも……」
手を組み瞳を閉じて、何かに祈るような彼女の姿は、正しく聖女のように見えた。
「無かったことにはしたくないのです。わたしを命がけで守ってくれた人の、その名前を……」
それは切なる願い。切なる祈り。
サーニャは俺が思っている以上に強かった。過酷な現実を逃げることなく受け止め、それを背負う決断をしたのだ。そんな彼女に言うべきかはもしれなけど、それでも仲間としてこれだけは言わずにいられなかった。
「サーニャ、もし一人で抱えるのが辛くなったら、遠慮せずいつでも頼って欲しい。俺に出来ることなんてほとんどないかもだけど、仲間なんだからさ」
「……ありがとうございます。でも、わたしはいつもフリッツさんには頼りっぱなしですよ」
そう笑って答えるサーニャは、もういつも通りの彼女だった。
「ほっほっほ。あの勝手気ままなフリッツが人に気を遣うということを覚えたか。お前も少しは成長しておるようじゃの」
「ちょっ! 師匠、昔の話はやめてくれよ!」
「まあ冗談は置いておくとして……」
くっ、重い話になりそうなところですかさず冗談を挟むとはさすが師匠。でも、この様子だとサーニャの願いも叶いそうだ。
「サーニャ様。貴女様がそう望むのなら、彼女の名前を継いでやっては頂けませんでしょうか? セレスティナ様も、きっとお許し下さるはずです」
「……はい! 有難うございます、ガザック様!」
そう言ってサーニャは頭を下げた。
ひとまず、この件はこれで解決かな。そう思っていたのだが、師匠が続けてこんなことを言い出した。
「そうそう、名前に関してですがワシのことはガザックとお呼び下さい。聖地に使えるものとして、聖女様のご息女に『様』付けで呼ばれると恐れ多いです故」
「えぇ! そ、それは……」
これにはサーニャも困ったようで、答えに窮してしまった。
まあ普通の少女として育った彼女が、いきなり世界的な要人から呼び捨てにしてくれと頼まれたら当然とも言えるだろう。ここは少し助け船を出しておこう。
「師匠。サーニャは普通の村で育ったから、いきなり呼び捨ては……」
「そうかのう? なら、ガザックおじいちゃんでも良いですぞ?」
「えぇ!? えぇと、そのぅ……」
はぁ、この爺さんは……。まあでも、これも師匠なりの気遣いなのだろう。ただサーニャが困っていることには変わりないので、ここは早めに終わらせるとしよう。
「サーニャ、『ガザックさん』とかでどうかな?」
「あっ、はい。それなら……」
「だってさ。師匠もそれで良いよな?」
「むぅ……せっかくのおじいちゃんチャンスが」
なんだよ、おじいちゃんチャンスって。
「良・い・よ・な!?」
「冗談じゃよ、そう怒るなフリッツ。それではサーニャ様、以後そのように」
「はい。あ、あとわたしのことも様付けではなくサーニャと呼んで頂けませんか?」
「そ、それはですな……」
形勢逆転、今度は師匠が困る番だ。ここは面白いから少し見守っておこう。
「で、ではサーニャ殿でどうですかな? これ以上は聖地に使える者としては難しいのですじゃ」
「無理は言えませんしね。分かりました、それでお願いします!」
ちっ、さすが師匠。サーニャの優しさを理解した上で困ったように妥協案を出すとは、相変わらずの策士か。
「何か言いたそうじゃのぅ、フリッツ」
「別にー」
師匠を困らせることは出来なかったが、とりあえず一件落着。ここからはいよいよ話の本題、聖地の現状だ。
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